開発から半世紀を経て団地再生へ「宗像・日の里モデル」とは(後)
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2020年07月11日 07:00

開発から半世紀を経て団地再生へ「宗像・日の里モデル」とは(後)

新興住宅地 再生モデルとなるか

JR東郷駅の目の前にある​​​​​「日の里一丁目団地」

 宗像市の西部に位置する日の里地区は、エリアの北側をJR鹿児島本線とJR東郷駅、南側を国道3号に挟まれた住宅地。1丁目から9丁目まで整った街区で構成されており、丘陵部に位置するため場所によっては、やや起状がある。

 ほぼ全域が1965年から始まった日本住宅公団(現・UR都市機構)の土地区画整理事業で開発されたもので、その面積は217.6haと、当時としては九州最大規模だった。71年に団地が完成。宗像市が福岡市と北九州市の中間に位置することや、日の里地区が駅に至近の新しい住宅地だったことで、多くの人が短期間のうちに移り住み、一躍まちは活気にあふれていた。

 だが、そんな日の里地区も、開発から数十年の年数が経つにつれて、建物の老朽化や空き家の増加、さらには同時期に移り住んだ住民が多かったことで、急速な高齢化や人口減少といった問題も浮上するようになっていった。そこでUR都市機構は、老朽化した日の里地区に活気を取り戻すとともに、高齢化した住民が住み慣れた地域で最期まで住み続けられる環境を実現するために、地域医療福祉拠点の形成を目指した取り組みを、地方公共団体などと連携して総合的に推進。

日の里団地

 2015年度から「日の里団地」(1,257戸)、19年度から「日の里一丁目団地」(352戸)で、地域医療福祉の拠点形成に向けた取り組みを進めてきた。たとえば日の里団地内の16戸では、「健康寿命サポート住宅」と銘打った改修を実施。高齢者が安全に住み続けられるように、移動にともなう転倒の防止などに配慮した改修を行った。そのほかに、子育て世帯に向けた「子育てサポート住宅」への改修や、生活支援アドバイザーの配置などを実施。さらに、団地内の空き地を利用した生きがいづくりの場の創出と、コミュニティ形成に寄与する場所としての農業施設「日の里ファーム」の試験的な実施や、JR東郷駅前の空き店舗を活用して新たなヒト・モノを集める場づくりを行う拠点施設「CoCokaraひのさと」の開設など、さまざまな取り組みを複合的に実施している。

空き店舗を活用した「CoCokaraひのさと」

 今回進められるハイブリッド型団地再生「宗像・日の里モデル」は、これまでの取り組みからステージがワンランク上がった、より具体的かつ試金石的な取り組みだといえよう。

 以前のように大都市一極集中から、地方への人口の分散化が進むことが予想されるアフターコロナの世界では、時代の流れのなかで取り残されつつあった郊外型住宅地に、再び注目が集まってくる可能性も十分に考えられる。「宗像・日の里モデル」が団地再生のモデルケースとして、市域全体、そして全国各地にまで広がっていくか、今後の動向が注目される。


大分大学 理工学部創生工学科建築学コース
准教授 柴田 建 氏

 私はこれまで専門家として、そして自身も日の里出身者として、日の里でのさまざまな再生プロジェクトに関わってきましたが、中古住宅のリノベーションなどでいくら単体の住宅をかっこ良くしても、「街の暮らしが楽しくなければ、誰も住みたいと思わない」という考えで、エリアをどうするかということを重視しています。エリアをどう魅力的に“リブランディング”していくか、です。

 宗像・日の里地区のようないわゆる“ニュータウン”は、帰って寝るだけの場所という均質な機能を有したベッドタウンに、世代や収入などが似た均質な家族が暮らすという、いわば均質なフォーマットで膨大な家族が暮らすことを目的とした住宅地でした。

 そして、これらの特徴が現在、そのまま危機につながっています。入居世代の高齢化によるオールドタウン化に加え、近隣の商店街が消えたことによる買い物難民化、さらには空き家・空き地の増加による環境悪化がさらなる低人気へとつながっていくという悪循環で、開発当初の強みであった均質さが、弱さへと反転しているかたちです。それを、どうやって再度反転させていくか――。

 ニュータウンの一番の魅力は、何でもない同じようなハコが大量に並んでいて、それを比較的安く使えるということにあると思います。それも住まいとしてだけでなく、地域の人の活動の場として使えるのであれば、その活用の幅や可能性はどんどんと広がっていくでしょう。まずは、ベッドタウンで寝るだけだった場所にシェアの概念を入れていくことで、それぞれの家族がただ暮らすのではなく、趣味を楽しんだり、仲間と集ったり、さらにはシェアオフィスなどの仕事場としても活用するなど、もっとアクティブな住宅地へと変えていく。

 奇しくも、新型コロナの影響によるテレワークなどで家にこもりがちになると、皆が家の周りの環境に敏感になっていきます。アフターコロナの世界では、そういう魅力的な住環境を有した郊外型住宅地にも今一度スポットライトが当たっていくでしょうし、日の里はそういう場所になり得るだけのポテンシャルを秘めているように思います。


東邦レオ(株)
Green×Town事業部長 吉田 啓助 氏

 当社では日の里以外でも、地域のコミュニティ拠点の運営を行っているのですが、こういうプロジェクトを進めていくうえでは、いかにして地域に対して主体的に関わってくれる方を増やせるかが、すごく重要なポイントになります。そういう意味では、この住民交流拠点「さとづくり48」は、細部までの具体的な企画を最初からつくりすぎてしまうと、なかなか主体者が増えなくなりますので、半分くらいのスペースを意図的に空けています。

 今後、実際にブリュワリーとかDIY工房などを動かしていくなかで、人が集まってきてくれたり、面白いアイデアを出してくれたりすることを期待して、そのときのための余白をあえて残しているかたちです。また、ここは地域のなかでの拠点でありつつも、その一方で玄関口というか“縁側”のように、外からの交流をつなげる役割も担っています。

 一方で、新築の戸建エリアでは、境界をあいまいにしながら、皆さんの関わり方のなかでどんどんと変化していく、拡張性というかカスタマイズの余地を残した住宅エリアをつくっていこうと考えています。ハウスメーカーさんと話しているのは、「家を買う」というよりも「暮らしを買ってほしい」というもので、利便性だけではない、郊外ならではの暮らしの楽しみなどをここで感じて、来てほしいと思っています。

 これからのアフターコロナの時代では、大都市一極集中で過密な暮らしの在り方から、少しずつ地方への分散化が進んでいくのではないでしょうか。そして今後は、人と自然とが良い意味で適度に混ざり合っている日の里のような郊外型住宅地の魅力が、再認識されてくるのではないかというのが、肌感覚としてあります。我々も関わる事業者として、主体的な住民の方々を巻き込みながら、より魅力的なコミュニティ形成に取り組んでいきたいと思っています。


(了)

【坂田 憲治】

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