変貌しつつある大阪港~IRという“バクチ”で儲かるのは誰か?(前)
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2020年07月13日 07:00

変貌しつつある大阪港~IRという“バクチ”で儲かるのは誰か?(前)

IRのツールは観光立国と地方創生

 IR(統合型リゾート)推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が国会で成立したのは、2016年12月。17年7月には、IR実施法(特定複合観光施設区域整備法)も成立した。IR推進法は、IRに関する基本法であり、IR実施法はIR推進法第5条に基づく実施法といえる。日本政府では、IR誘致を「観光立国」と「地方創生」のためのツールとして位置づけている。

 実施法によるIR(特定複合観光施設)の定義や主な規定内容は、表1の通り。

【表1】

■IRの定義「カジノ施設と(1)国際会議場施設、(2)展示施設等、(3)我が国の伝統、文化、芸術等を生かした公演等による観光の魅力増進施設、(4)送客機能施設、(5)宿泊施設から構成される一群の施設((6)その他観光客の来訪・滞在の促進に寄与する施設を含む)であって、⺠間事業者により一体として設置・運営されるものとする」
■ 基本方針の作成、区域整備計画の認定(有効期限10年間)、カジノ事業者の毎年度の評価は、国土交通大臣が行う
■ 区域整備計画の上限は全国3カ所(認定日から7年間)
■ カジノ管理委員会によるIR事業者の免許の有効期限は3年(更新可)
■ カジノ事業者に業務方法書、利用約款、依存防止規定、犯罪収益移転防止規定の作成を義務付け(免許申請時にカジノ管理委員会が審査)
■ 入場回数を連続7日間で3回、連続28日間で10回に制限(マイナンバーカードなどによる本人確認を義務付け)
■ 日本人(日本在住者)の入場料・自治体入場料は1回(24時間)各3,000円(合計6,000円)
■ カジノ事業者からの国庫納付金は粗利益の15%+カジノ管理委員会経費負担額
■ 自治体納付金は粗利益の15%

 IRをめぐっては、大阪府市のほか、横浜市、長崎県、和歌山県の4自治体が正式に名乗りを上げている。このほか、福岡市や北九州市など、地元経済団体が勝手連的に誘致に向けた動きを見せている都市もある。

負の遺産「夢洲」府市、IRで再生狙う

 大阪府市は全国の自治体に先駆けて、人工島・夢洲へのIRの誘致を進めている。その狙いは、1兆円以上と試算される経済波及効果だ。その源泉はカジノ。関係者には「IRは全体としてはリゾート施設であって、カジノが占めるのは総延床面積の3%以下。一部の機能に過ぎない」という言説があるが、これはいささかミスリードが過ぎる。MICEやエンターテインメントなどの施設は、どんなに多くの面積を占めようと、収益構造を考えれば、カジノ抜きのIRは考えられないからだ。

 大阪IRをめぐっては2010年以降、大阪府がIRに関する研究会を立ち上げた後、検討会やシンポジウムなどを重ねていた経緯がある。府市が連携し、IR誘致に本格的に動き始めたのは、IR推進法の成立がきっかけ。同時に「大阪府市IR立地準備会議」を設置して課題や対応策などに関する検討を行い、候補地として「夢洲を軸とする大阪市内ベイエリア」を盛り込んだ基本コンセプト案づくりなどを進めていた。

 府市は19年12月、「大阪IR基本構想」を策定。構想では、大阪IRのコンセプトに「世界最高水準の成長型IR」を掲げ、投資規模9,300億円、年間来場者数1,500万人、年間売上高4,800億円を想定。経済波及効果として、1兆2,400億円(建設時)、7,600億円(運営時、年間)などと景気の良い数字を並べた。
 大阪府市がIR誘致に動いた背景には、長年未利用のまま取り残されていた夢洲の存在があった。「夢洲は負の遺産、大失敗した開発事業。これを有効な資産につくり変えるためのツールとして、IRを誘致したい」という思惑があった。

 府市は19年12月、民間事業者の公募を開始。20年2月、米・ラスベガスのMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス(株)(大阪市西区)のコンソーシアムを事業者候補に選定した。今後、事業者からの提案書を審査し、9月ごろに事業者決定を行う予定だ。事業者決定がなされた後、府市は事業者と共同で、IR区域整備計画を策定。国土交通大臣に対して計画の認定申請を行うことになる。計画決定は21年8月以降の見通しだ。

MGMリゾーツ・インターナショナルは、1986年に創業。世界に27以上のカジノホテルを所有し、従業員7万8,000人以上、年間1兆円以上を売り上げる世界有数のカジノ企業。トップはジェームス・ムーレン会長&CEO。2014年に日本法人((同)日本MGMリゾーツ)を設立している。同社は19年10月、オリックスと「大阪ファースト・大阪オンリー」パートナーシップを締結。大阪への強いコミットメントをアピールした。大阪IRの事業者公募にMGM以外のカジノ企業の応募がなかったのは、MGMとの競合を避けたためとの見方もある。

(つづく)

【大石 恭正】

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