変貌しつつある大阪港~IRという“バクチ”で儲かるのは誰か?(後)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月14日 07:00

変貌しつつある大阪港~IRという“バクチ”で儲かるのは誰か?(後)

裏と表の世界をつなぐ、カジノビジネス

 IR誘致はすでに既定路線となっているが、「ギャンブル依存症、破産者が増える」「マネーロンダリングの温床になる」「日本人の所得が外資に吸い取られる」など国民からの批判も依然根強い。
 ギャンブル依存症や破産者については、カジノ事業者に一定の抑制ノウハウがあるだろうが、ギャンブルである以上、ゼロにすることは不可能だ。セラピストなどによるケアを充実させたとしても、最終的には自己責任で終わるのがオチだろう。つまり、リスクはカジノが営業を続ける限り、いつまでも残る。

 マネーロンダリングの根絶も難しい。カジノには、「ハイローラー(1回1,000万円以上賭ける客)」のほか、1回1億円以上賭ける客「ウェール(鯨)」と称される客が存在する。そういう客のなかには、カジノで買った(負けた)ことにして、数億円をキレイな金にしてやりとりする者たちがいる。つまり、カジノには裏の世界の人間たちが、汚れた金をキレイにしてやりとりできる金融機関的な役割があるわけだ。某国が輸出した武器の送金手段として、カジノが利用されているという話もある。裏の世界と表の世界をつなぐのがカジノビジネスの本質であることは忘れてはならない。

 「日本人の所得が外資に吸い取られる」のは、その通りだ。それこそが、カジノ事業者が日本参入する理由だからだ。実施法では、外国人は入場無料なのに対し、日本人(日本在住者)は6,000円の入場料をとられる。一定の抑制にはなるが、自国民の入場を禁止する韓国などのカジノに比べると、効果は限定的だ。入場規制は、依存症や破産にも関わるポイントだが、今回、日本政府はそれをしなかった。その理由は、カジノ事業者にとって、日本人の所得を吸い取るという“ウマ味”が減るからだ。

 新型コロナウイルスの影響により、IRをめぐる政府などの動きは停滞しつつある。たとえば、国土交通大臣によるIRに関する基本方針の策定は、当初は今年1月の予定だったが、7月以降に延期された。カジノ運営に関する許認可、監督審査などを行うカジノ管理委員会(北村道夫委員長)は当初の予定通りに今年1月に発足していることを考えると、IRをめぐる足並みが乱れ始めていることがうかがえる。

 コロナ禍は、加熱していたIRの動きを一気に冷やしたといえる。今年1月、秋元司衆議院議員のIR汚職逮捕などの比ではない。たとえば、横浜IRに色気を見せていたラスベガス・サンズが今年5月になって撤退を表明したのも、コロナ禍と無関係ではない。大阪府市は今年6月、26年度を予定していたIRの開業時期を1~2年延期すると発表した。「事業者との協議が進んでいない」ことを理由に挙げているが、儲かるかどうかわからなくなったビジネスに対して、営利企業が取る態度はどこか似通っている。

 1兆円以上を目論んだ大阪IRの経済波及効果も、もはや「取らぬ狸の皮算用」に過ぎなくなっている。つまり、IRそのものが儲かるかどうかわからない“バクチ”に成り下がっているわけだ。そう考えると、我々国民は図らずも、コロナ禍によって、IRビジネスの本当の姿を垣間見つつあるのかもしれない。

(了)

【大石 恭正】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年10月31日 18:34

【続く「第一生命」不祥事】山口に続き和歌山でも顧客から詐取 5,210万円を不正取得NEW!

   生命保険大手の第一生命で、またしても女性営業社員による不正な金銭取得事件が起きた。同社は10月2日に、顧客から19億円超をだまし取った疑いで、山口県の89...

2020年10月31日 18:12

【「大阪市廃止」問題】維新の毎日新聞バッシングは無理筋な「言いがかり」 松井代表が財政局長に圧力かNEW!

  突然始まった、「維新 vs 毎日新聞」のバトル  大阪都構想(大阪市廃止)の住民投票(11月1日投開票)が賛否拮抗のまま最終盤を迎えるな...

2020年10月31日 13:00

【住民投票迫る】いよいよ明日。大阪都構想(大阪市廃止)の行方 維新は災害対策「やってる感」を演出

 政令指定都市が初めて廃止されるか否かでも注目される「大阪都構想(大阪市廃止)」の争点の1つは防災だ。「水の都・大阪」は、豪雨災害や津波被害、さらに高潮などの水害に弱...

2020年10月31日 07:00

ストラテジーブレティン(263)~コロナパンデミックの経済史的考察(7)

 コロナパンデミックは、株式資本主義の新時代を開くかもしれない。米国においては今や金融政策も株価本位といえる。QEが株価など資産価格引き上げに決定的に寄与したが、この...

2020年10月31日 07:00

【凡学一生の優しい法律学】三権分立論の嘘(1)

 日本国民の大部分が、日本は三権分立の民主主義国であると信じている。しかし、彼らは政治的制度について論理的にも事実実証的にもまったく確認することなく、「制度の建前=真...

2020年10月30日 16:36

【11/2~】「春水堂台湾フェア」で台湾を満喫~春水堂と台湾観光局がコラボ

 タピオカミルクティーなどを提供する春水堂(日本での運営会社:(株)オアシスティーラウンジ)は台湾観光局東京事務所とともに、11月2日(月)から全国の18店舗にて「台...

(株)フジ精機(熊本)/金属部品製造加工

 同社は、10月23日、熊本地裁に破産手続きの開始を申請した...

2020年10月30日 14:57

大和ライフネクストがオンラインを活用したマンション管理員研修を開始~集合型研修の見直しで業務効率と教育効果向上へ

 大和ハウスグループの大和ライフネクスト(株)は、管理員の入社時研修プログラムにオンライン講義を取り入れてリニューアルし、研修時間の短縮を図っている...

2020年10月30日 13:30

【福岡商工会議所調査】新型コロナウイルスの海外進出企業に及ぼす影響~8割の企業がマイナスの影響があるとしつつも、現地で事業を継続

 福岡商工会議所(藤永憲一会頭、以下、商工会議所)は、九州の海外進出企業385社を対象に実施した「新型コロナウイルス感染症が九州の海外進出企業に及ぼす影響に関する調査...

2020年10月30日 13:00

【新自由主義の波】タネは誰のもの? 菅首相は種苗法改定で日本の農家を殺すのか

 11月1日投開票の大阪都構想の住民投票は、維新と蜜月関係にある菅義偉首相の政権運営にも影響を与えるのは確実だ。野党のふりをしながら与党に協力する「ゆ党」こと維新は、...

pagetop