2024年04月25日( 木 )

コロナ禍、注目すべきは「年代別死亡者数」(前)

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国際ビジネスコンサルタント 浜地 道雄 氏

 筆者が石油担当商社マンとして、イランの首都テヘラン駐在時の1973年に「石油ショック」が発生。原油価格の高騰となり世界を揺るがすこととなった。日本では「トイレットペーパー」騒動(パニック)も起きた。そのパニックを彷彿させる今回の「コロナ禍」、その正体を我々は、はたして正確に認識し、正しく恐れているのか。

恐怖が恐怖を呼ぶ「不確実性」論

 今年1月28日は忘れられない。上海から旧友が来るというので、久しぶりに盃をともに、今のことばでいうなら「密に」語り合おう、ということになっていた。ところが突然彼から連絡が入り「ウイルスが蔓延し始めた。急遽本社に戻らねばならない」とのこと。かくて再会は果たせなかった。

 後に知ったところでは、昨年末に中国武漢で発生した(とされる)「新型コロナウイルス」が日本にも「上陸」、まさにその1月28日には、国内で新たに3人の感染者が確認されて計17人となった。そこから厚生労働省が新型コロナウイルス感染症警戒を各都道府県知事らに発出した。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染はその後続き、全国的なパニックに広がっていった。

シカゴ大学F.ナイト教授の
「不確実性」論

 筆者はこの間、いくつか気づいたことを記事にまとめたが、そこでの要点は主に3つ。 

 (1)統計学上、エビデンスのないものは未知のもの、推測であり、お化けの出現のように、恐怖が恐怖を呼ぶ(経済学で有名なシカゴ大学F.ナイト教授の「不確実性」論)。

 (2)それがエビデンスとして確率がわかれば対策可能なリスクとなる。そこからビジネスが発生して利潤となる。

 (3)注目すべきは、世界と比較して奇跡的に少ない日本での死亡者数だ。
 すなわち、今回のコロナ・パニックには対策が可能である。他方、感染者数、検査数では統計上有意な数字は得られてないし、そもそも死亡者数に比してことの重大性が異なる。

 そして、記事は「オーバシュート=感染爆発は起きないことを祈りつつ」と締め括ったが、案の定、感染爆発は起きなかった。ゆえに、筆者の祈る気持ちは(エビデンスに基づき)正しく恐れようという「強い主張」に変わった。

根拠不明な一斉休校措置がもたらした混乱

 まずは死亡者数の世界比較グラフを見てみよう(Dr.Frank Brose/Dr.Fukuzawa)。このグラフが語るのは、日本における、手洗い・うがい、キスやハグをしない、入浴、家に入るときは靴を脱ぐといった、いまになってみれば公衆衛生観念に基づいた習慣こそ世界の範として誇るべきものということだ。この点は5月22日、英国の高級紙The Guardianや米国の通信社Bloombergが報じている。

若年層の死亡者はほぼゼロである/©東洋経済新報社

 大混乱の世界に向けて誇るべきものは日本の文化なのだ。それにもかかわらず政府は緊急事態宣言を発令して社会を大混乱に陥れたことに対し、大きな疑問が生じる。

 まずは、2月27日に突然発表された全国一斉休校。グラフでは若年層の死亡者はほぼゼロである。なのになぜ休校にしたのか? 安倍晋三首相はこの決定を「専門家に相談せずに決めた」と発言している。
 現場の教師たちも大変で、もちろん子どもたち自身、そして保護者がいかに大変だったかは想像に難くない。今では共働き家庭がほとんどであるし、シングルマザー(ファザー)家庭ではそれに輪をかけた混乱だっただろう。

 しかも、そこが引き金となって4月の新学期を9月に変更する案まで出ている。これは数年前に論議されて「否」の結論が出ているにもかかわらず、このドサクサに紛れて蒸し返すというのはいかにも不条理、不合理である。

 教育のうち知識の暗記についてはテレ(遠隔)・ラーニングの利便性はいうまでもない。しかしこれは、たとえば一家団欒の食事時に親も子どももスマホに見入ったままで会話もないという味気ない光景の広がりを加速させることになりはしないか。人材教育や人間形成には人とのふれあいが必須であるし、異文化理解はその地にあってその風土に触れ、その地の人に学ばずしてはあり得ない。

(つづく)


<PROFILE>
浜地 道雄(はまじ・みちお)
1965年、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、ニチメン(現・双日)入社。石油部員としてテヘラン、リヤド駐在。1988年、帝国データバンクに転職。同社米国社長としてNYCに赴任、2002年ビジネスコンサルタントとして独立。現在、National Geographic/Cengage Learning kk, Project Consultant EF Education First Japan, Senior Advisor.

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