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2020年08月01日 07:00

「新型コロナ」後の世界~地方自治、観光、文化活動の行方!(3)

立教大学経済学研究科 特任教授 小室 裕一 氏 

 新型コロナはさまざまな分野に影響をおよぼした。とくに地域の経済成長の特効薬とみなされてきたツーリズム(インバウンド)への影響は大きい。日本国内に限らず、バリ島など世界の観光地ではホテルの投げ売りも始まり出した。今後の地方自治、観光、文化活動の行方はどうなっていくのであろうか。
 小室裕一 立教大学 経済学研究科 特任教授に聞いた。小室氏は元総務省自治税務局長、その後首都圏新都市鉄道(株)代表取締役専務、(一財)地域総合整備財団 監事などの重職を歴任。一方で、(公財)全日本ダンス協会(連) 常任理事、NPO法人東京シティガイドクラブ副理事長、NPO法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長など、幅広く文化活動に参画、地方公共団体の自力再生に尽力されている。

大学教育の現場では、リモートによる授業は当たり前に

 小室 大学も文化産業(博物館、美術館、映画館、劇場など)についても今東京に1極集中しています。しかし、今回は日本のほとんどの大学(世界も同様)はリモートを使ってオンライン授業を展開しています。恐らくAfter Coronaにおいては、何度か揺り戻しはあるとは思いますが、大学教育の現場では、リモートによる授業は、当たり前になってくると思います。

アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在である

 ――文化といえば、ドイツのメルケル首相は「連邦政府は芸術支援を優先順位リストの一番上に置いている」と文化を重視する姿勢を強調し、グリュッタース文化相は「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」と断言し、大幅なサポートを約束しています。先生はドイツに駐在経験がございますが、これらの発言をどのように受け止められましたか。

立教大学経済学研究科 特任教授
小室 裕一 氏

 小室 私は1989年から3年間大阪市経済局の参事として、デュッセルドルフに駐在、ドイツ国内を隅々まで見て回りました。ちょうど駐在中の90年に西ドイツと東ドイツが再統一されました。ドイツでは、都市機能が分散しており、州都にはそれぞれ高い機能が集積、文化施設も充実していました。それぞれの州都の産業は、大企業のみならず、中小企業などもとてもしっかりしておりました。とくに印象に残ったのは地方の大学の在り方です。視察に行ったある地方の大学では「ノーベル賞学者を何人も輩出しております」と言われました。

 ドイツと言いますと、どうしても精密産業など製造業が進んでいるというイメージが先行します。しかし、美術館、博物館、劇場などの充実ぶりは素晴らしく、とても文化度が高い国民であることを感じました。ドイツでは、政治家、経済人などを問わず、多くの知識人は自国のものだけでなく、フランス文化に対しても敬意を払っています。

 私は統一直前のワイマール(旧・東ドイツ)をある時訪れました。ベルリンやパリなどの大都市とは違い、わずか人口6万5000ほどの地方都市にすぎませんが、すばらしいバレエ公演に遭遇して驚きました。当時の東ドイツは芸術だけでなく、スポーツもとても進んでいました。確か、メルケル首相も旧東ドイツのご出身ですね。

 冒頭のメルケル首相やグリュッタース文化相の発言は理解できるというか、納得します。日本人の文化(江戸時代から、現在世界的に認められている漫画・アニメまで)は、ドイツと比較しても、高いものがあると思っています。しかし、そのような高い文化を活かすことができていません。さらにいえば、文化も経済の一翼を担っていることが理解できていません。After Coronaではこの点にも多くの方に関心をもっていただけたらと感じています。

 ドイツ文化の最後に「地方再生」にも関するヒントとして、移動型遊園地「キルメス(Kirmes)」をご紹介申します。日本で遊園地というと、常設されているのが当たり前ですが、ドイツではキルメスと呼ばれる移動型の仮設遊園地が定番となっています。移動型の遊園地といっても、常設のものに負けない本格的なテーマパークで、ライン河畔のデュッセルドルフが有名です。キルメスは規模が大きくなればなるほど、子どもだけではなく、大人もはしゃいでしまうほどの賑わいぶりを見せています。日本でいうディズニーランドへ行くような感覚で楽しむことができるのです。日本も人口減少が叫ばれるなかで、すべての都市が遊園地などを持つ必要はないということです。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
小室 裕一
(こむろ・ゆういち)
1974年東京大学法学部卒業後、自治省入省。79年群馬県行政管理課長、87年自治省財政局交付税課理事官、89年大阪市経済局参事としてデュッセルドルフ駐在、92年青森県総務部長、96年自治省行政局振興課長、2001年総務大臣官房審議官、05年総務省自治大学校長、総務省自治税務局長を経て、首都圏新都市鉄道(株)代表取締役専務、(一財)地域総合整備財団 監事などを歴任。現在は立教大学特任教授、明治大学ガバナンス研究科兼任講師、NPO法人 日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長、(公財)全日本ダンス協会連合会 常任理事、NPO法人東京シティガイドクラブ副理事長を務める。

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