2024年03月29日( 金 )

「新型コロナ」後の世界~地方自治、観光、文化活動の行方!(4)

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立教大学経済学研究科 特任教授 小室 裕一 氏 

 新型コロナはさまざまな分野に影響をおよぼした。とくに地域の経済成長の特効薬とみなされてきたツーリズム(インバウンド)への影響は大きい。日本国内に限らず、バリ島など世界の観光地ではホテルの投げ売りも始まり出した。今後の地方自治、観光、文化活動の行方はどうなっていくのであろうか。
 小室裕一 立教大学 経済学研究科 特任教授に聞いた。小室氏は元総務省自治税務局長、その後首都圏新都市鉄道(株)代表取締役専務、(一財)地域総合整備財団 監事などの重職を歴任。一方で、(公財)全日本ダンス協会(連) 常任理事、NPO法人東京シティガイドクラブ副理事長、NPO法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長など、幅広く文化活動に参画、地方公共団体の自力再生に尽力されている。

潜在的旅行者が満足できるメニューを提供することに尽力

 ――新型コロナの影響をもっとも強く受けた産業のなかに観光業があります。先生は、NPO法人東京シティガイドクラブ副理事長でもあります。この点はいかがでしょうか。

 小室 観光というのは「人が移動する」ことが基本になっています。現地に行って、非日常的なことを楽しみながら、地元でしか手に入らない土産物(物品、食料品など)を買い求めます。しかし、今はその根幹となる人の移動が、渡航制限や自粛で激減しているので、ものすごく辛い状況になっています。

 今多くの方は「インバウンド」(訪日外国人)のみに注目しております。 確かに国際線がほとんど飛んでいない状況は大きな痛手です。しかし、日本の観光に占めるインバウンドのシェアはそれほど高くありません。(訪日外国人旅行者による、全旅行消費額のシェアは2019年の時点で17.2%)インバウンドの市場がないということは、通常であれば、海外に出て行く資力がある日本人も海外に出ていけないことを意味します。ここは発想を転換して、各地方自治体がそのような潜在的旅行者が満足できるようなメニューをいかに提供できるかということに知恵を絞るべきだと思います。それは従来あったような土産物などではなく、もっと文化的なものかも知れません。

最大1日60名までは、お客さまの要望にお応えできた

東京シティガイドクラブのユニフォームを着て

 小室 NPO法人東京シティガイドクラブ(TCGC)は、(公財)東京観光財団が実施している 「東京シティガイド検定」合格者などを主なメンバーとして結成した 東京観光ボランティアグループです。2007年にNPO法人の認可をとり、現在に至っています。 皆さまのガイド要望にお応えできるよう、分野別に研究グループをつくるとともに 常日頃セミナーや現地研修を重ね、精力的に都内のガイドを行っています。東京の街をエリア、スポットなどに精通した会員が約1,600人(ガイド登録者は約400人)おりますので、Before Coronaであれば最大1日約60人のガイドまでは、お客さまの日時などの細かい要望にお応えすることが可能でした。

 Before Coronaでは1人のガイドが平均10人程度を引率していました。しかし、今は1人のガイドが直接引率できるのは5人までとなっています。10人を超える場合は2班(5人×2)に分け、お客さまには、レシーバーを通して、ガイドの声を聞いていただく新しい試みを検討しています。従来はA3のパネルなどで現地の昔の風景写真なども紹介しながら進めていましたが、3密を避けるために、今後はこの点にも工夫が必要になってきます。マスクやフェイスシールドの使用など、解決しなければならない問題はたくさんあります。
 例年100人から200人の新規加入者がいます。しかし、今年は会場でのオリエンテーションはできず、オンラインでグループ(7グループ×3回)ごとの研修会に切り替えました。

(つづく)

【金木 亮憲】


<プロフィール>
小室 裕一
(こむろ・ゆういち)
1974年東京大学法学部卒業後、自治省入省。79年群馬県行政管理課長、87年自治省財政局交付税課理事官、89年大阪市経済局参事としてデュッセルドルフ駐在、92年青森県総務部長、96年自治省行政局振興課長、2001年総務大臣官房審議官、05年総務省自治大学校長、総務省自治税務局長を経て、首都圏新都市鉄道(株)代表取締役専務、(一財)地域総合整備財団 監事などを歴任。現在は立教大学特任教授、明治大学ガバナンス研究科兼任講師、NPO法人 日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長、(公財)全日本ダンス協会連合会 常任理事、NPO法人東京シティガイドクラブ副理事長を務める。

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