2024年03月29日( 金 )

市民の安全・安心のために―最前線で尽力する“地域の守り手”(後)

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(一社)福岡市土木建設協力会 会長 大野  太三 氏
(丸三工業(株) 代表取締役社長)

 ――ほかに、平時からも災害に備えた活動をいろいろとされているとお聞きしました。

 大野 当会のなかには4つの委員会を設けていますが、そのうちの安全委員会では市と共同で市民総合防災訓練や水防訓練を毎年行うほか、防災委員会では市内各地区の住民に向けた防災教室の開催や、当会の会員向けの防災士スキルアップ講座などを行っています。

 先ほどお話ししましたように、地場の事業者である我々には、土地の経歴や災害時の危険箇所などについての知見があります。福岡市には他所から来られて住んでいる方も多くいらっしゃいますので、防災教室ではそうした方々を含めた地域の住民に、我々がもっている情報を提供することで、皆さまの防災意識を高めるお手伝いをしています。ただ、この防災教室はここ数年で新たに始めたもので、まだそれほど多くは開催できておりません。今後は市教育委員会などとの連携も含めて、もっと多くの地域・住民に向けた防災教室の開催の方策も模索していきたいと考えております。

 そのほかに、先般福岡市が改訂を行ったハザードマップ作成の際の協力や、我々が設置している「防災看板」に避難経路の情報やAED設置場所の情報を記載するなど、さまざまな防災活動を行っています。当会では今後も“地域の守り手”として、行政との連携の下に日ごろからの備えも含めて、災害と向き合っていく所存です。

より良い業界に向けて

 ――近年の業界環境はいかがですか。

大野 太三 氏

 大野 決して良いとはいえません。我々が“地域の守り手”たり得るためにも、まずは個々の事業者の経営が健全であることが前提です。我々地場の土木事業者のほとんどは、福岡市や県などからいただいている公共工事に支えられていますので、そこを減らさないでいただきたい。公共工事の数が減ってしまうと、会社によっては廃業という選択をせざるを得ないところも出てきますが、そうなるとその地区の“守り手”がいなくなってしまいます。そこだけは何とかしていきたいと思っています。

 また、慢性的な人手不足も業界が抱える大きな課題で、とくに若者の成り手がいません。それを埋めるために、今では地場の小さな事業者でも、外国人労働者を迎え入れているところも多くなりました。将来的にはICT施工などの機械化・省人化も進んでいくのでしょうが、お話ししているような土地の経歴などの知見を受け継いでいくためにも、やはり人は必要です。働き方改革を含めた職場環境の改善などに取り組むとともに、社会インフラを支える土木建設業の魅力を積極的に発信することで、業界に若者を取り込んでいきたいと思います。

 ――最後に、協力会として今後取り組んでいきたいことは何でしょうか。

 大野 会員企業全社の総意をまとめるのはなかなか難しいですが、5年後・10年後に「業界がこうありたい」という希望は、皆が共通してもっていると思います。当会としても理事会できちんとしたスローガンを策定し、その下で業界をより良くしていくために、皆で一丸となって取り組んでいきたいですね。

(了)

【坂田 憲治】


<INFORMATION>
(一社)福岡市土木建設協力会

会 長:大野 太三
所在地:福岡市博多区中洲中島町3-10 福岡消防会館7F
設 立:1980年4月
TEL:092-291-1231
URL:http://www.f-doboku.com


<PROFILE>
大野  太三
(おおの・たいぞう)
1954年、長崎県出身。日本大学生産工学部土木工学科を卒業後、丸三工業(株)へ入社。専務取締役を経て、95年3月に同社代表取締役社長に就任した。(一社)福岡市土木建設協力会では、理事、副会長を経て、2016年5月から会長を務めている。

(前)

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