2024年04月19日( 金 )

コロナ禍に揺れる新大阪駅~都市機能不足、リニアにも暗雲(前)

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 リニア中央新幹線の開業を見据え、新大阪駅周辺(十三、新大阪、淡路)の再開発の機運が高まっている。新大阪駅周辺エリアは2018年8月、国の「都市再生緊急整備地域の候補となる地域(候補地域)」に指定。20年3月、国や大阪府市らで構成される地域検討協議会は、「中間的コンセプト」として、「まちづくり方針の骨格」をとりまとめた。20年度以降、まちづくり方針を策定し、都市再生緊急整備地域の指定を受ければ、めでたく再開発プロジェクト始動という運びになる。今回、この骨格なるものをベースに、新大阪駅周辺のまちづくりの行方について考察してみた。

骨抜きの方針

 新大阪駅(大阪市淀川区)は1964年、東海道新幹線の開業にともない誕生した駅だ。駅構内の新幹線部分はJR東海の管轄下にある。新幹線のほか、JR西日本の在来線(京都線、おおさか東線)、大阪メトロ(御堂筋線)が乗り入れている。

 まちづくり方針の骨格に目を通してみると、「まるで中身がない骨抜きの骨格」というのが第一印象だった。中間コンセプトという触れ込みだったが、骨格どころか、中間的なコンセプトにすらなっていないと感じた。以下、その理由を述べる。

 かろうじて骨と思われるものをピックアップしてみると、(1)スーパー・メガリージョンの形成・ハブ化によるインバウンドなどアジアの活力の引き込み、(2)大阪都市圏の各拠点との連携、(3)「Society 5.0」や「SDGs」への対応、(4)大阪(梅田)駅周辺との交通リダンダンシーの確保、(5)首都代替機能を支える広域交通機能の拠点化―というお題目のようなものが並ぶ。(1)と(5)は鉄道インフラの話、(3)は新大阪駅に限った話ではない風呂敷(何にでも使える便利な道具)であるので、まちづくりの部分は(2)と(4)になるわけだが、新大阪周辺のまちづくりに関連するモノに限れば(4)のみになる。

 つまりこの骨格は、「リニアが新大阪に来るので、新大阪と大阪の交通アクセスを強化しよう」といっているだけに過ぎない。ところで、この間のリダンダンシーが脆弱だとすれば、リニア開業関係なく、早急に対応すべき課題であり、そもそも新大阪駅周辺のまちづくりとして取り組む課題なのか、という話になる。

 協議会はなぜ、こんなカラッポなモノを骨格として公表したのか。それは、当初まちづくりのきっかけにしようとしていた、リニア中央新幹線新大阪開業の雲行きが怪しくなってきたからだろう。というのも、新大阪駅周辺のまちづくりは、独自の駅周辺開発というより、国土交通省が進める新大阪駅の新幹線ネットワークハブ化構想(地方創生回廊中央駅構想)に乗っかっている代物だからだ。

 事実、骨格の本文中にも、「リニア中央新幹線や北陸新幹線の駅位置などの具体化に合わせて、ゾーニングやインフラ計画の検討を進め、本まちづくり方針の骨格と組み合わせて、まちづくり方針としていく」との記述がある。この骨格は図らずも、新大阪駅周辺には新幹線を始めとする交通ネットワーク機能以外に目立った都市機能がないことを自白しているようなものだ。

 骨格では、37年頃に新大阪駅開業予定とされるリニア中央新幹線を前提にしているが、開業時期はおろか、新大阪までリニアが開業するかどうかも正式には決定していない。リニアが新大阪まで来ない可能性もあるわけだ。折しも静岡県の反対により、27年の名古屋駅開業すら危ぶまれていることを考えると、協議会が最終的なコンセプトを打ち出さなかった(打ち出せなかった)事情も理解できる。

(つづく)

【大石 恭正】

(後)

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