2021年12月05日( 日 )
by データ・マックス

何が変わるのか?大阪市・水道管路更新コンセッション(後)

 大阪市水道局は、配水管の耐震化促進のため、2018年12月に成立した改正水道法に基づく「コンセッション方式()」による管路更新(耐震管への取替え)事業を進めている。コンセッション化は、水道料金値上げを避けながら、管路更新ペースを倍化させるのが主な狙いで、約1,800kmの管路更新を約15年間で達成したい考えだ。

 施工計画策定、設計、発注、施工、施工監理という、管路更新に関する市の業務全般を民間事業者に譲渡。市は、民間事業者をモニタリングする部署を新たに設置し、各業務フローなどの不正不良などをチェックする。市は20年4月にコンセッション化に関する実施方針を公表。21年に事業者の選定などを行い、22年4月に事業開始する予定だ。大阪市はなぜ、管路更新事業のコンセッション化に踏み切ったのか。コンセッション化によって、管路更新事業はどう変わるのか。

※コンセッション方式:許可制運営権制度。事業権譲渡などともいわれる。水道施設の所有権は自治体のまま、公共施設運営権を民間事業者に設定する方式。根拠法はPFI法、水道法。施設の所有権が移転しないので、いわゆる「民営化」には当たらないとされる。^

市のチェックに違和感

 市担当者は「受け皿となる民間事業者はある。ただ、業務量が膨大なため、単独の企業ではなく、複数企業から成るSPC(特別目的会社)を想定している」と話す。ただ、日本国内で管路更新をコンセッション化した前例はなく、当然、経験のある日本企業もない。事業開始後の初期トラブルは不可避だろう。

 更新ペースの高さも、達成できるか気がかりだ。実績のない民間事業者が、市直営の倍近いペースで仕事をこなせるとは考えにくい。いわゆる「官から民へ」の流れは、「民間ができることは民間に」という考えをベースにしたものだが、現状では「行政ができないことを民間に」の感が否めない。

 工事発注も当然行うわけだが、その際、大阪市中小企業振興基本条例に基づき、市は民間事業者に対し、市内中小企業との連携、協力に応じるよう求めることになっている。民間事業者は、その趣旨を踏まえた事業計画書を提出する。要するに、地元の業者が受注できるよう差配を求めるということだ。地元びいきはどこの都市でも同じようなことをやっているし、それ自体は問題ではない。

 問題なのは、市が“優良な市内業者”を前提にしている点だ。19年に水道局発注の水道管工事(更新工事)で、400に上る市内業者による大量の不正埋戻しが発覚している。普通に考えれば、不正埋戻しをした業者は優良とはいえず、400業者は入札から排除するのがスジだ。ただし、400もの業者を排除すると、工事を受注する業者がいなくなる。「不正埋戻しはしたけれども、賠償もしたし、それはなかったことにして、優良な業者として取り扱う」――ことになっている。管路更新事業を進めるという意味では現実的な対応だが、結果的に「赤信号みんなで渡れば怖くない」的な状況を市が肯定してしまったのは、いかがなものかといわざるを得ない。

 そもそも市による不正不良のチェックにも、違和感がある。直営工事の不正を見逃した同じ組織が、民間工事の不正不良をチェックできるのか。まずはチェックすべきは大阪市水道局そのものではないのか。市議会も市民も、よくこの点をスルーしたものだ。

値上げしにくい水道事業者

 更新ペースが管路の老朽化に追いつかず、老朽管率の高止まり状態が続くという問題は、大阪市に限らず、全国の自治体などが直面している問題だ。水道は道路などと同じく国民のためのインフラであるが、企業会計(独立採算制)の下、自治体などによって運営されてきた経緯がある。水道事業者によってサービスや料金に格差があり、老朽管の更新も、事業体の規模などによって、温度差がある。水道システムの維持に必要なコストは、料金に上乗せするのがスジだが、20数年間デフレが続く日本では、料金値上げは政治的に難しい。

 全国の水道事業者は、そういう構造的な制約のなか、何とか管路更新ペースを上げようともがいている。大阪市の管路更新事業のコンセッション化は、ペースを上げるための窮余の一策と見ることができる。その一策が吉と出るか凶と出るか――。まずは、どういう民間事業者が選ばれるかに注目したい。

(了)

【大石 恭正】

(中)

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