2024年05月02日( 木 )

球磨川の堤防決壊は逆流入が原因か~九地整が第2回調査委員会(前)

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九地整管内における2河川の被災調査

 7月3日から9日にかけて九州から西日本、東日本の広範囲で、13日から14日にかけては中国地方で、26日から29日にかけては東北地方を中心に大雨となり、多数の人的被害や住家を含めた物的被害をもたらした。このうち、九州南部の球磨川水系球磨川、九州北部の筑後川水系筑後川これら2つの一級河川で堤防決壊などの被害が発生した。

 こうした状況を受けて国土交通省九州地方整備局(以下、九地整)では、2河川の堤防被災の原因を究明するとともに、復旧工法などの検討を目的とした球磨川堤防調査委員会と筑後川堤防調査委員会からなる「堤防調査委員会」を設置。九州工業大学名誉教授の秋山壽一郎氏が委員長を務め、委員には河川工学や地質学などを専門とする有識者らが名を連ねている。7月13日に現地調査を含めた第1回目の会議を行い、8月7日には第2回目の会議を開催。九地整河川部からの説明を基に、委員らからはさまざまな指摘・意見が相次いだ。

2020年8月7日開催 第2回調査委員会の様子

(1)球磨川

越水後の逆流入で堤防2カ所が決壊

 今回の豪雨で球磨川では、左岸55.0k()付近、右岸56.4k付近の2カ所で堤防が決壊しており、いずれも各氾濫ブロックの下流端に位置している。

 まず、左岸55.0k付近では、延長約10mにわたって堤防が決壊した。堤防断面図から検証すると、決壊した高さは約3mと想定されている。被災後の現地状況では、堤防天端のアスファルトや堤体材料と思われる土砂が、河川側の高水敷へ飛散していたことを確認。電柱部の洪水痕跡から、少なくとも堤防天端より4.0m程度は水位が高い状態となっていたとされている。また、提内地から堤外地へ向けて帯状に流向跡が残っていること、堤外地の樹木が川側へ倒伏していること、宅地側の植生が上向きや決壊箇所に向けて倒伏していることなどから、堤防を越水した水が下流方向に流下し、下流側の堤防箇所付近に流れが集中。地形的な条件から決壊箇所へと流れが集中したことで、宅地側から河川側に水が流入するという通常とは逆の越水が発生した。これにより堤体が浸食され、堤防が決壊したと推測されている。

 もう1つの右岸56.4k付近では、延長約30mにわたって堤防が決壊した。応急復旧時の堤防断面図からは、決壊した高さは約6mとなっている。被災後の現地状況では、堤防天端のアスファルトや堤体材料と思われる土砂が川表側に飛散していることを確認できた。周辺の洪水痕跡からは、少なくとも堤防天端から2.5m以上の水位であったとされている。また、宅地側の植生は上向きや決壊箇所に向けて倒伏し、河川側の植生は下向きに倒伏しているほか、決壊箇所周辺では宅地側の法面にも堤防への侵食が確認できる。

 左岸55.0k付近と同様に、堤防を越水した水が下流方向に流下し、地形的な条件から決壊箇所に流れが集中したと見られている。ピーク時には堤防高を約2.5m越える高さまで水位が上昇したとされており、その後は河川水位の低下にともなって今度は宅地側から河川側への越水が発生。被災後の現場状況から鑑みて、川表の堤防浸食や天端舗装が川表に流出していることから、減水時に損傷を受けているものと推察されている。

 通常の堤防決壊では、河川からの越水にともなって川側の堤防法面が削られるというケースが多い。だが今回の球磨川における2カ所の堤防決壊は、通常時とは逆に、一度河川側から越水した水が氾濫した後、その溜まった水が低位にある河川に再び戻ろうとした勢いで堤防を浸食し、決壊に至ったというわけだ。いわば強固につくられた河川側ではなく、やや脆弱な宅地側からの水の流入にやられたかたちで、今後の河川整備―とくに堤防の舗装や護岸についての大きな課題を浮き彫りにした。

※河口から何km地点かを表す表記。上流から下流に向かって右側が右岸、左側が左岸になる ^

(つづく)

【内山 義之】

(後)

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