2024年04月29日( 月 )

【川辺川ダムを追う】川辺川ダム建設中止、決めたのは誰だ?(5)

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 「令和2年7月豪雨」により、熊本県南部を流れる球磨川が氾濫し、流域市町村で死者65名、9,000棟を超える家屋被害が発生した。球磨川は過去に何度も氾濫を繰り返してきた“暴れ川”だが、記録が残るなかでは、今回が過去最大級の水害だといわれる。球磨川の支流である川辺川では、1969年以降、総貯水容量1.3億m3を超える治水ダム「川辺川ダム」の建設が進められていたが、2008年に蒲島郁夫熊本県知事が「ダム建設計画の白紙撤回」を表明。09年にダム建設中止が決まった。

 以降12年間、国や県、流域市町村などは「ダムによらない治水」をめぐる検討を続けてきたようだが、実際に有効な治水対策が講じられることはなく、今回の水害を招いた。「ダム建設中止は、政策判断として正しかったのか?」「ダムによらない治水とやらは、なぜ実行されなかったのか?」「水害後も治水政策は変わらないのか?」――などいろいろと疑問が湧く。今回の水害を機に、川辺川ダム建設中止をめぐるこれまでの経緯などを追ってみた。

球磨川の治水、人事を尽くした結果か

※国土交通省九州地方整備局川辺川ダム砂防事務所HPより抜粋
(一部加筆修正)

 川辺川ダム建設の経緯などをめぐって、後出しジャンケン的に長々とほじくり返してきたわけだが、一番肝心なのは「これからの球磨川流域の治水をどうするのか」ということだ。言い換えれば、「水害を繰り返さないためには、何をすべきか」ということだ。それを考える前提として、過去の経緯を最低限検証しておく必要があったわけだ。

 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がある。できる限りのことをしたら、後は天命に任せるという意味だ。人事を尽くしていなかったのであれば、今後は人事を尽くすのに邁進すれば良い。一方、人事は尽くしたというのであれば、もう打つ手はない。天命に任せるしかない。一番タチが悪いのは、やるべきことはわかっているが、それをやらないということだ。

 この記事を結ぶに際し、国や県、流域市町村、住民などに対しては、これだけ問いたい。「球磨川の治水対策について、本当に人事を尽くしてきたと考えているのか」――と。

(了)

【大石 恭正】

 

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