歴史・交通・人をつなぐ結節点~海峡都市下関市のこれから(1)
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星野リゾートの新ホテルが、あるかぽーと地区に誕生
山口県下関市のウォーターフロントエリア「あるかぽーと地区」に、新たなランドマークが誕生する――。
国内外で宿泊施設を複数展開する(株)星野リゾートは、あるかぽーと地区で2023年春に「星野リゾート OMO 下関(仮称)」の開業を計画している。OMOブランドとしては4施設目となり、星野リゾートが手がける山口県での事業では、長門市の長門湯本温泉にある「界 長門」(20年3月開業)に続き2施設目となる。19年4月には、星野リゾートと下関市とで基本協定を締結。同協定では、関門海峡を臨む景観を最大限に生かした魅力溢れるホテルの開業に向けて、星野リゾートと下関市が協働して取り組むことを定めている。
星野リゾートは今回の下関での開発について、次のように述べている。「関門海峡という美しい景観を有するばかりではなく、壇ノ浦の戦いや馬関戦争など、幾度となく歴史の転換点に立ち合い、その舞台となった場所です。また、豊かな水産資源にも恵まれ、その新鮮な海の幸を求めて全国から観光客が訪れています。OMOブランドとしては初の港湾都市での事業展開となり、豊富な観光資源をもとに、新たな都市観光の価値を提供できると確信しています。今後については、下関市と協働して事業の検討を進めるとともに、地域魅力の発信に貢献してまいります」。
星野リゾートでは計画遂行に向けて、あるかぽーと地区のホテル建設予定地内の13地点でホテル建設に係る設計・概算事業費算定のためのボーリング調査を20年8月4日から開始。当初は5月にも調査を行う予定だったが、新型コロナの影響で遅れた。
ホテル建設予定地は、あるかぽーと地区の遊園地「はい!からっと横丁」の南側に隣接する約1.8haの土地で、現在はその大部分が臨時駐車場として利用されている。下関市長・前田晋太郎氏は自身の公約であるかぽーと開発を「1丁目1番地」に掲げており、星野リゾートによる今回の開発は、下関の今後の都市開発において最重要事項の1つだ。同ホテルの開業により、関門のまち・下関市に、新たな魅力が付与されることが期待されている。
歴史の節目にたびたび登場
下関市は、本州の最西端に位置し、関門海峡を挟んで九州と向かい合うほか、朝鮮半島や中国大陸とも近いことで、古くから海上・陸上の交通の要衝として栄えてきた。本州における東アジアからの玄関口であり、九州と隣接する港湾都市として発展してきた経緯から、日本史における重要な節目に幾度となく登場。その舞台となってきた。
中世における最も有名な出来事は、源氏と平家の最後の戦いとなった1185年の「壇ノ浦の合戦」だろう。安徳天皇と三種の神器を奉じて都落ちした平家は、流れ流れて下関の彦島に拠点を置いていたが、源義経率いる源氏軍の関門海峡の潮の流れを利用した攻撃により敗北。これにより平家は滅亡し、その後に源頼朝によって鎌倉幕府が開かれ、貴族政治から武家政治へと体制が大きく変わっていった。なお、下関市内の赤間神宮は、このときに幼くして亡くなった安徳天皇を祀っているほか、滅亡した平家一門の墓(七盛塚)があり、怪談「耳なし芳一」の舞台としても知られている。
1600年には毛利秀元が長府に陣屋(櫛崎城)を構え、長州藩の支藩として長府藩が成立。櫛崎城の周辺には武家屋敷が広がり、5万石の城下町を形成した。現在も下関市の東部に位置する長府エリアには、由緒ある神社仏閣や武家屋敷、土塀の町並みなど当時の面影が色濃く残っており、「城下町長府」として人気の観光地となっている。なお、1612年に宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘が行われた「巌流島」は、現在では下関市だが、当時は長府藩ではなく豊前小倉藩に属していた。
下関が次に歴史の大きな節目に登場したのは、幕末期のこと。関門海峡を航行中のアメリカ商船を砲撃した1863年の「下関事件」をきっかけとして、翌64年には長州藩と連合国(イギリス・フランス・オランダ・アメリカ)との間で下関戦争(馬関戦争)が勃発した。また、長州藩士の高杉晋作が伊藤博文らとともにこの地で奇兵隊を結成し、倒幕への流れに大きく貢献。江戸幕府崩壊後、長州藩は薩摩藩とともに明治政府の中核になっていった。
明治期に入ると、1889年4月に日本で最初に市制を施行した全国31市の1つ「赤間関市」(あかまがせきし)として市制施行されたほか、93年10月には大阪に次ぐ日本銀行の2番目の支店として「日本銀行西部支店」が開設されるなど、西日本における重要都市の1つとしての地位を固めていった。
また、94年7月に開戦した日清戦争が翌95年に日本の勝利で幕を閉じると、阿弥陀寺町の料亭「春帆楼」で日清講和会議が開催。日本と清国の間で「下関条約」が結ばれ、日本は欧米列強の仲間入りをはたした。
(つづく)
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