2024年04月20日( 土 )

すり鉢の底・渋谷の浸水対策~駅東口に4,000m3の雨水貯留施設(後)

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一時的に貯留、容量オーバーの雨水

 同施設の主な集水エリアは、渋谷駅東口駅前広場から宮益坂上交差点付近までとなっており、1時間あたりの降雨量が50mmを超えた場合に取水される仕組みだ。超過した雨水は、取水管やマンホールを通じて雨水貯留施設に流れ込む。渋谷駅周辺には下水幹線が通っており、1時間あたり50mmまでの降雨には対応できるが、この容量を超えた豪雨が降ると、下水管では処理できないため、今回の雨水貯留施設が整備された。

 同施設は、雨水の流入時に水流の勢いを抑えるドロップシャフト(らせん状の回路)を採用しており、貯留施設底部の劣化を防ぐことができる。また、脱臭・換気設備を備え、降水量に合わせて水を溜められる構造となっているため、清掃範囲を限定できるなど、効率的に管理できる工夫がなされている。天候が回復した後には、雨水は48時間をかけてポンプアップで古川幹線(既存の下水道幹線)に排水される。

 この雨水貯留施設の地上部は交通広場であり、同時並行で道路や鉄道の改良、ビル開発などの事業が進んでいたため、工事では、各事業者や行政などの関係者との綿密な工事スケジュールの調整が一番の課題となった。多くの人々が乗り降りする駅のため、工事では歩行者や交通機関、鉄道駅などに影響のないよう慎重に進めることが肝心だったという。

 本事業の一環として、同事業施行区域内の取水管は同事業共同施行者、施行区域外の取水管は東京都下水道局が整備を進めている。取水管は、施行区域内では全額を地権者負担で整備されている。

 かつて地上を流れていた渋谷川は現在、稲荷橋より上流部分は暗渠化されている。渋谷スクランブルスクエアの建設にあたり、東口の地下広場は駅施設や駅前広場と一体的になるように整備されたため、東急東横線がある渋谷駅東口の地下1階を流れていた渋谷川は、東側に移設され、当事業区域の渋谷川は下水道施設となった。

【渋谷駅街区土地区画整理事業施行区域】
(提供:渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者)

渋谷駅再開発

 渋谷駅周辺は05年に、開発事業などを通して市街地の整備を重点的に促進する「都市再生緊急整備地域」に指定されている。本事業は10~26年度までの施行期間で、駅の機能の更新や再編、駅ビルの再開発と一体的に都市基盤と街区の再編による公共施設の整備改善、宅地の利用増進を図る。東急、JR東日本、東京メトロの3社が地権者となっている渋谷駅周辺の約5.5haの地区が施行区域に当たる。東急は今後の整備について、「安全で過ごしやすい広場空間の創出やバスターミナルの再配置など、東口駅前広場の整備を引き続き進めていく」という。

(了)

【石井 ゆかり】

(前)

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