2024年04月16日( 火 )

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(1)

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 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」(主催:台日産業連携推進オフィス(TJPO)、協力:(株)電波新聞社)が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。
 今回のセミナーは新型コロナの影響を受けて、現地会場とオンラインのいずれでも参加できるハイブリッド方式で開催された。現地会場では約40人、日本・台湾の二元中継のオンラインで約130人が参加した。

台湾では、4月13日から陽性者がゼロ

 台日産業連携推進オフィス(TJPO)東京事務所 所長・日台OBネットワーク会長の峯岸進氏が、主催者を代表して最初に挨拶した。峯岸氏はコロナ禍にもかかわらず出席している約170人の参加者に感謝の意を表したうえで、次のように語った。

峯岸 進 氏

 TJPOの「台湾最新ビジネスセミナー」は現地会場とオンラインを用いて、初めてのハイブリッド形式での開催です。テーマは、「withコロナ時代―日台で切り拓く新ビジネスチャンス」です。このテーマを選んだ理由は、台湾は新型コロナの防疫対策で、日本よりはるかに進んでおり、世界の先頭を走っているためです。

 9月14日までの統計によると、台湾の人口2,300万人に対して、累計感染者数は499人、累計死亡者数は7人です。加えて、4月13日から昨日までの陽性者は「ゼロ」という驚異的な数字を継続しています。

 台湾の新型コロナ封じ込め(防疫対策)成功の陰には、さまざまな戦略、戦術があったと聞いています。オードリー・タンIT担当大臣が中心となって進めた「マスク・マップ」は、わずか3日でソフトが作成され「今、どこでマスクの購入が可能なのか」が一目でわかるようになりました。

 さらに、マスクの購入は「健康保険証」に紐づけされ、買い占めや価格の吊り上げができない措置もとられました。台湾入出にともなう2週間の隔離期間も、ITなどを駆使して、日本以上に行動が厳しく管理されています。今では、ニュージーランド、イスラエルなど多くの国が、台湾モデルを参考にして防疫成果を上げています。

 一方、日本では3~4月頃にはマスクが足りなくなり、一部の業者の買い占めも手伝って、50枚入りのマスクが1万円という法外な値段で売られることもありました。政府が全世帯に配布した布製マスク「アベノマスク」は約400億円もかけられたにもかかわらず、国民には不評だったことはご承知の通りです。

 日本に居住ビザをもっている人間は、8月5日からいつでも帰国できるようになりました。そのため、入国後の隔離期間(2週間)の行動規定が、台湾と比較すると、緩やかであることが懸念されています。

 峯岸氏は
「コロナ禍ではありますが、台湾との情報交換はとても意義あることと考え、本日のセミナーを実施するに至りました」
 と結んだ。

世界的に止まらないデジタル化の勢い

 続いて、台北駐日経済文化代表処 経済部長の周立氏が挨拶した。台北駐日経済文化代表処は日本における台湾の大使館に相当し、同経済部長は、主に台湾と日本のビジネスにおける橋渡しの役割を担う。周氏は次のように語った。

周 立 氏

 新型コロナウイルスは、ワクチンや特効薬はなく、その上強い感染力をもっている、とてもやっかいなウイルスだと考えています。各国は感染拡大を防止するために、国際物流、人的往来にとどまらず、人と人との対面交流も避けてきたため、経済に大きな影響が出ています。これまでのビジネスの常識や人々の生活常識はもはや通用しなくなっており、このままでは世界経済は破綻の方向に向かうでしょう。

 一方で、世界的にデジタル化の勢いが止まらなくなっています。日本でも、長い間目指していたテレワーク、時差出勤などの働き方改革が、これまで想像もできなかった猛スピードで推進されています。

 今回の危機を乗り越えることができれば、社会は飛躍的にデジタル化の進展を遂げます。コロナ禍の脅威にさらされる「with コロナ時代」には、コロナ対策と経済回復の両立が求められています。台湾は、新型コロナにおいて世界でもっとも早く立ち直り、感染予防と経済回復を両立した実績があります。その成功には、デジタル化が大きなカギとなっています。本日のセミナーでは、台湾企業が提案したデジタル化の方法を活用し、新たな生活様式や医療現場で応用した事例を紹介します。

 周氏は
「デジタル分野における、台湾と日本の各分野のプレーヤーによる連携が一層進むことで、with コロナ時代に相応しい台日協力関係が生まれ、お互いの生活向上に貢献できると信じています。台日関係、台日産業連携のさらなる発展を祈念します」
 と結んだ。

(つづく)

【金木 亮憲】


<INFORMATION>
台日産業連携推進オフィス(TJPO)

 台湾行政院が2011年認可した「台日産業連携架け橋プロジェクト」により12年3月に設立。関連部会の資源を統合し日台双方の産業連携をより一層密接にすることで、日台間における全体的な産業のレベルアップを図り、共同でグローバル競争力と産業チェーンを高めることを目的としている。
日台産業間の連絡窓口として、セミナーや商談会を通じて、産業の連携案件、プロジェクト追跡業務などのサポートを行うとともに、相互に派遣団による交流を行っている。

日台OBネットワーク
 2007年設立の日台産業の連携に熱意を持つ企業人で構成されたボランティア団体。台湾政府の重点政策方向、産業の趨勢、将来の推進方向、日台の連携成果など日台双方の重要な情報交換の場となっている。現在の会員は約360人。
 組織は、最高顧問:安藤国威 ソニー(株)元社長兼COO、会長:峯岸進 台湾Sony元董事長。副会長:高杉春正 台湾TDK元董事長と揚原浩 台湾富士通元董事長、関西地区会長:松本光司 双日台湾元董事長で構成されている。毎年日本で1~2回の交流会を開催。会員ほか、日本企業の各界名士および台湾政府高官や産業界関係者も参加する。

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