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2020年10月02日 11:17

【ラスト50kmの攻防】不十分な「採算性」論議 特急『みどり』『ハウステンボス』の行方は

佐賀県議会が国交省との積極協議を求める決議

 佐賀県議会の9月定例会が9月30日、九州新幹線長崎ルート(博多―長崎間)の未着工区間、新鳥栖―武雄温泉間の整備方式について国交省との積極協議を求める決議案を可決、協議に慎重な山口祥義知事に突き付けた。

 コメントを求められた知事は、「佐賀県と佐賀県民の今と将来を見据えて対応していきたい」と、自民党佐賀県連の要請に回答した際と同様の言葉を述べた。さっそく10月中旬に国交省との「幅広い協議」が待っており、「要請」や「決議」の受け止め度合を測る“リトマス試験紙”になる。

 県庁内には、県議会の決議を「骨抜き」と酷評する声があるという。ただ、知事に積極協議を求める決議に県議会の35人中31人が賛成した。「山口知事が国との協議から逃げ回ってばかりなら、私たちは判断しようにも材料が少なすぎる。仮にフル規格で整備するとなれば、何が課題でどうすれば解決できるか。与党の整備新幹線検討委員会と一緒にチエを絞らないといけない。それが子や孫に対する私たちの責任だ。最初からフル規格ありきではない」。県議会の決議文のベースになった要請文をまとめた自民党佐賀県の留守茂幸会長(県議)はそう話す。

 留守会長ら県連役員は10月5日から2日間上京。自民党の二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、役員改選で交代した細田博之・与党整備新幹線建設推進プロジェクト(PT)座長らと会談。9月定例会での審議内容を報告し、年末の来年度予算案編成に向けての善後策を協議する。さらに政府の加藤勝信官房長官、国交省の水島智官房長や上原淳鉄道局長らとも会い、来年度予算案に対する概算要求の「事項要求」の中身や北陸新幹線金沢―敦賀間の工事進捗状況の説明を受けるとみられる。

 国交省は、長崎ルートと北陸新幹線敦賀―新大阪間を23年度に同時着工する計画だ。しかし9月24日に開かれた与党整備新幹線建設推進PTでは、2019年10月に貫通した石川県と福井県境の加賀トンネル(延長5.5km)でひび割れが確認されたり、専門的な工事が必要な高架橋区間で工事の入札が相次ぎ不調になったりするなど、23年春の開業が延期されかねない状況という。

 その一方、佐賀県議会は9月30日、新幹線問題等特別委員会と議会運営委員会の理事会を相次ぎ開催。同特別委は11月2日、JR九州の古宮洋二専務を参考人招致して閉会中の集中審議、議運委は次回例会の11月定例会を26日開会、12月16日閉会の会期21日間とそれぞれ申し合わせた。

「17 kmごとに駅」で採算はとれるのか

 長崎ルートの武雄温泉―長崎間は22年秋に開業。JR佐世保線の武雄温泉駅ホームで特急と新幹線を乗り換えるリレー方式が始まる。新鳥栖―武雄温泉間は輸送密度が高いため、JR九州は並行在来線を切り離した経営を、今のところ考えていないとされている。

 しかし、博多―長崎間を走る特急『かもめ』の本数は1日24本、往復で48本に上る。半面、武雄温泉―長崎間の距離は66km。駅舎は起終点を含め5駅。単純計算で17km弱に駅が1つある。ここに時速200km超の新幹線を1日48往復走らせて、採算が取れるか。先発の鹿児島ルートは、山陽新幹線の8両編成より短い6両編成を投入してやりくりを工面した。また、武雄温泉―長崎間は、新線と在来の長崎線と佐世保線を組み合わせた。このため開業後、博多―佐世保/ハウステンボス間の特急『みどり』や『ハウステンボス』の行方についても関心が高い。

 国交省は18年3月に公表した試算で、新鳥栖―武雄温泉間を標準軌新線(フル規格)で整備し、長崎―新大阪間を結んだ場合、投資効果は3.3とした。それでは、新鳥栖―武雄温泉間の整備方式が決まらずに武雄温泉駅でのリレーが続いた場合、何年間でどの程度の赤字を見込んでいるのか。

 山口知事との協議に絡め、赤羽一嘉国交省は、「長崎ルートは佐賀県だけの問題ではなく、九州全体、また西日本全体の未来に関わる重要な社会インフラ」と指摘している。JR九州が、九州の重要な社会インフラの担い手なのは論を待たない。武雄温泉―長崎間の22年秋開業が見通せた以上、部分開業の負の側面も詳らかにするなど、JR九州に情報公開を求める意見は少なくない。新幹線の部分開業後、不採算路線が次々に切り捨てられたら元も子もなくなる。

 佐賀県議会は、11月定例会の日程からみて9月定例会同様の「新幹線議会」になる公算が大きい。しかも来年度予算案が決まる年末の予算編成に近い。与野党の国会議員も巻き込みながら、知事と議会のせめぎ合いが予想される。

旧国鉄時代の長崎ルート案を基にした環境アセスでは、
新幹線佐賀駅は在来駅の北口に併設する計画だった。
今後、国交省やJR九州との協議のなかで、
佐賀駅を従来通りの併設駅にするか、新幹線の単独駅にするかの扱いも
焦点の1つになるとみられる=佐賀市駅前中央1丁目

【南里 秀之】

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