2024年04月27日( 土 )

歴史・交通・人をつなぐ結節点~海峡都市下関市のこれから(5)

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都市機能の誘導で持続可能な都市形成へ

 人口規模でも経済規模でも山口県内第一の都市といえる下関市だが、前述の新幹線開業を契機とした交通体系の整備によって通過都市化が進み、85年以降は人口減少および急速な少子高齢化が進行。都市機能の空洞化やそれにともなう活力低下、大型商業施設の郊外進出による中心部の商店街の衰退などの課題を抱えていた。

 下関市ではそうした課題の解決に向けて、これまでにも「海峡まるごとテーマパーク」をコンセプトに、“海峡のまち”の特性を生かしたウォーターフロント整備などに取り組んできたほか、09年12月に「下関市中心市街地活性化基本計画」を策定して中心市街地の賑わい再創出にも注力。10年1月には「下関市都市計画マスタープラン」を策定し、25年度を当初の目標年次としたまちづくりを進めてきた。

都市拠点の1つに位置づけられる新下関駅周辺

 同マスタープランは、都市づくりの基本理念を「自然と歴史と人が織りなす交流都市~自然と人、人と人、ふれあいで輝く共創のまちづくりを目指して~」と掲げ、都市機能の形成と都市機能の適正配置を行うとともに、地域間を結ぶ都市軸を構築し、地域特性に応じた土地利用ゾーニングを設定。「下関市街地」と「新下関駅周辺」の2エリアを都市拠点として位置づけるほか、市北部の「菊川」「豊田」「豊浦」「豊北」の4エリアを地域拠点に、市南部の「彦島」「安岡」「川中」「長府」「小月」の5エリアを生活拠点として位置づけている。

 都市拠点のうち下関市街地エリアでは、商業・業務などの都市機能の集積を生かし、文化・交流面における都市機能を高めたにぎわいのある都市拠点を形成するとともに、関門海峡側の臨海部における港湾から市街地中心部への回遊性向上などを目指していく方針。また、新下関駅周辺エリアでは、JR新下関駅周辺から下関IC周辺における商業・業務などの都市機能を集積するとともに、主要幹線道路沿道などへの流通・商業などのサービス施設の立地誘導による拠点形成を目指すとしている。

 地域別の整備方針では、旧下関市エリアを都市構造上の機能連携や地域住民の生活圏などを考慮して、関門海峡から川中地区や長府地区までを含めた最も都市活動が盛んな区域を「市街地中心地域」とし、小月・王司・清末・王喜・吉田地区を「市街地東部地域」、安岡・内日・吉見地区を「市街地西部地域」として設定。さらに旧4町の町域ごとに区分した「豊浦地域」「菊川地域」「豊田地域」「豊北地域」を加え、全体構想の基本方針に基づきながら、地域ごとの状況や課題に対応したまちづくりを進める方針となっている。なお現在、同マスタープランは市民アンケートなどを基に見直しを進めているところで、修正後の目標年次は2040年になる予定だ。

 さらに20年1月には、コンパクトシティの形成に向けて都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」を策定。前述のマスタープランの一部という位置づけで、都市拠点や各地域における生活拠点などにそれぞれの特性に合った都市機能を誘導することで、持続可能な都市空間を目指すとしている。居住機能や都市機能を誘導していくことで、今後の人口減少や少子高齢化がさらに進行しても、誘導区域における人口密度の維持により、日常生活サービスや地域コミュニティを持続的に確保するとともに、災害危険区域などでの新規開発を抑制することで、安全・安心の都市づくりを進めていくことが狙いだ。同計画における目標年次は2040年としている。

将来都市構造図​​​

(つづく)

【坂田 憲治】

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