【検証】福岡の観光業に追い打ちをかける 宿泊税は愚策ではないのか?(前)
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県と2市が課税する宿泊税
「I・Bまちづくりvol.15」(2019年6月末発刊)誌上で、「宿泊税導入で本当に観光振興できるのか?」という記事を書いた。福岡県、福岡市などは、小競り合いをしてまで宿泊税導入に前のめりになっているが、「本当に目論見通り行くのか?」というところを自分なりに検証するのが目的だった。記事の結びには次のように書いておいた。
「税収が増える」と勇み足で宿泊税を導入したものの、宿泊者や宿泊事業者の不興を買ったうえに、思ったほど税収が増えず、観光振興に費やす予算も捻出できずに看板やポスターなどでお茶を濁す――。これでは何をしているのかわからない。(中略)宿泊税を導入する以上、“きちんと成果を出す”という覚悟が、自治体にあるのかどうか。宿泊税の成否は、その点にかかってくると思われる。
福岡県、福岡市、北九州市は今年4月、それぞれ宿泊税条例に基づき、宿泊税の徴収を開始した。宿泊税とは、県内・市内ホテルなどへの宿泊者に対し、1人1泊ごとに200円を課税することを指す。ただ、徴税はホテルなどの宿泊事業者が行う。2市に宿泊した場合は、県と市の二重課税となる。福岡市の場合は、県が50円、市が150円(宿泊料金が2万円未満)、北九州市の場合は、一律県が50円、市が150円を徴収する。年間の税収は、県が約15億円、福岡市が約18億円、北九州市が約3億円を見込んでおり、それぞれ観光振興策に充てる目論見だった。
最悪のタイミングで導入
宿泊税がスタートした今年4月といえば、新型コロナウイルスによるパンデミック真っ只中のころだった。同月7日には、日本政府が緊急事態宣言を発令し、都道府県をまたぐ移動の自粛をお願いした。福岡県は地元の要望もあり、「特定警戒都道府県」に指定された。指定を受けて県は、市内事業者に対して休業自粛を要請。5月14日に福岡県の指定は解除され、休業自粛要請も解除された。福岡県内の感染者数は、5月以降減少傾向にあったが、7月下旬以降は感染者の増加が続いている。第2波の渦中にあると言って良いだろう。
福岡県などがなぜ、緊急事態宣言発令の1週間前というタイミングで宿泊税を導入したのか、疑問が残る。4月スタートの理由の1つには、東京オリンピックのインバウンド需要を取り込みたいという色気があったようだが、その東京オリンピックは3月24日の時点で1年延期が決定されていた。直前ではあるが、すでにアテは外れていたわけだ。そもそも、日本国内でのコロナ禍は、1月下旬ごろから始まっていたので、宿泊税導入を延期、凍結する機会はあったはずだ。決まっていたこととはいえ、融通が利かないことこのうえない。
福岡県や福岡市などは4月下旬、特別徴収義務者(ホテル事業者など)の事務負担の軽減を名目として、4月宿泊分の申告納入期限を5月末から6月末に延期する措置を講じた。ただ、申告納入だけは1カ月猶予をやるというだけの話で、基本的には何の変更もない。何らかの措置を講じたという、当局のアリバイづくりに過ぎないと言わざるを得ない。
(つづく)
【大石 恭正】
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