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2020年10月15日 11:08

NTTドコモはなぜKDDI(au)とソフトバンクに敗れたのか?~ガチンコの「競争」未経験(後)

格安のサブブランドをもたないドコモから顧客が流出

 設備をもたなくてよいことから、月額料金を4分の1くらいに減らせる格安スマホ(MVNO)が登場し、スマホの価格競争は激化した。ソフトバンクとKDDI(au)は、価格帯の異なる格安ブランドを投入した。

 ソフトバンクは2014年に格安ブランド「ワイモバイル」を立ち上げ、数年前から両ブランドの一体運営を強め、両ブランドを扱う店舗を増やして契約数を増やした。だが、孫氏が投資家に軸足を移し、携帯電話に情熱を失ったためか、ソフトバンクはかつてのように価格破壊を巻き起こす存在ではなくなっている。

 代わって台頭したのがKDDI(au)。15年から格安携帯「UQモバイル」を始めた。テレビCMはソフトバンクのお家芸だったが、UQモバイルが、そのお株を奪った。深田恭子、多部未華子、永野芽郁のUQ三姉妹が出演するテレビCMは、若者の人気を得た。これで契約数を伸ばした。

 一方、最大手のドコモは格安のサブブランドがなく、顧客流出の一因となった。ドコモの辞書には「競争」という二文字は載っていない。ワイモバイルとUQモバイルを叩き潰すために、その価格を下回る低価格のサブブランドをぶつけるのが競争の常道だが、ドコモはそうしなかった。価格競争を無視したのだ。

 それでは競争に勝てるわけはない。惨憺たる結果に終わった。20年6月末時点の携帯電話の純増数は、KDDI(au)が60万件の増加(3カ月単位)で、トップの座を快走。ソフトバンクは47万件増で2位。ドコモは28万件増にとどまり3位のポジション。競争力のないドコモは「まさに3番手」なのだ。

菅首相が執念を燃やす携帯料金の値下げ

 9月16日、菅義偉首相は就任後最初の会見で「国民の感覚から大きくかけ離れた」例として、「大手3社が9割の寡占状態を長年にわたり維持しており、世界でも高い料金で20%ほどの営業利益(率)を上げ続けている」と、大手キャリア3社を批判。かねてからの主張である「携帯料金の値下げ」に改めて強烈な意欲を示した。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長が、狙いすましたようなタイミングで、高速移動通信網「5G」のサービス料金を月2,980円(税別)にすると発表した。ドコモなど大手3社が5Gの大容量のプランを月7000~8,000円台としているなか、楽天は半額以下だ。菅首相の期待に応える意味がある。

 三木谷氏は、菅首相の経済ブレーンの1人だ。「菅さんの持論である、携帯電話引き下げは、三木谷氏が吹き込んだもの。朝食をともにしながら、三木谷氏がレクチャーしたといわれている」(市場関係者)。

 楽天の携帯電話参入が決まった18年は、官房長官だった菅氏が「(料金は)4割程度下げる余地がある」発言した時だ。それ以来、菅氏と三木谷氏はこと携帯電話において二人三脚で取り組んできた。

 今後の焦点は、データ通信の大容量プランだ。菅政権は楽天を交渉カードとして、大手3社に値下げを迫ることになる。携帯電話料金の値下げは菅政権が公約した目玉の1つ。大手3社の5Gの大容量プランの値下げをひき出せれば菅政権の得点になる。

ドコモは格安サブブランドを投入か

 しかし、ことは簡単ではない。政府がNTTの尻を叩き、一気に値下げ料金競争に踏み出したところで、大きく変わるわけではないからだ。ドコモの強制的な値下げに、KDDIやソフトバンクは対抗できる。しかし、それでは格安スマホや楽天モバイルが採算難に陥り、事業撤退に追い込まれるかもしれない。

 格安スマホとの競争によって値下げさせるはずなのに、大手3社の寡占体制が固定化することになりかねない。これでは、何のための値下げ競争がわからない。健全な競争とはとても思えない。

 ドコモはこれまで、ワイモバイルやUQモバイルのような格安ブランドに否定的だった。携帯の王者を自負するドコモは、格安ブランドは沽券にかかわると考えていたのだろう。

 しかし、NTTが打ち出した完全子会社化で変化の兆しがある。ドコモ社長に就任予定の井伊基之氏は記者会見で、格安ブランドについて「考慮しなきゃいけない」と述べた。

 12月1日の井伊社長就任に合わせて、ドコモは2000~4,000円台の低価格のサブブランドを発表するのではないか。データ利用が少なく価格を重視する顧客に格安ブランドを勧めることができる。ドコモに値下げを迫ってきた菅首相にとっても最初のポイントになる。

(了)

【森村 和男】

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