2024年04月29日( 月 )

産学官、地域と研究開発で積極連携〜福工大による福岡東部のまちづくり(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
福岡工業大学

 まちづくりを考えるうえで、大学などの高等教育機関の存在は重要だ。大学があることで学生や教職員などの人が集まり、地域で飲食やモノの購入などで消費する機会が増える。学校周辺には住宅のほか、商業施設も集積するようになり、経済的な効果も高まる。福岡市東区和白の福岡工業大学も地域とつながりをもち、成長する学園都市を支える機能をはたしている。

積極的に地域と関わり課題を解決

産学官連携

 福岡都市圏の持続的な発展と、その未来を担う人材の育成を目標に、福岡都市圏15大学と福岡市、福岡市商工会議所、(一社)福岡中小企業経営者協会が加盟して発足した「福岡未来創造プラットフォーム」に、地域人材育成作業部会のメンバーとして参加。産官学連携によるプラットフォームオリジナルの共同教育プログラムの開発を進めている。

 たとえば、2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育を視野に入れ、システムマネジメント学科の学生は、新宮町立立花小学校の6年生を対象にしたICT体験授業を実施する「シスマネ神宮町プロジェクト」に取り組んだ。

地域連携・貢献

 社会環境学科の上杉昌也助教が指導する2年生のゼミ学生は、新宮町環境課ならびに筑前新宮に白砂青松を取り戻す会(白砂青松の会)との協働で、新宮海岸の防風砂林「楯の松原」の遊歩道を観光資源として活用するためのデジタルマップの作製に取り組み、完成させている。

セーフティパトロール隊

 04年から「セーフティパトロール隊」と称し、男子寮の学生を中心にパトロール隊を結成。月に1回程度、地域の防犯活動も行っている。さらに、10年には、一般学生を中心とした地域防犯ボランティア団体として「コミュニティパトロール隊」も結成。2班体制で地域防犯活動に取り組んでいる。

 福岡工業大学をはじめ多くの大学が立地する福岡市東区では、04年3月策定の「東区基本計画」のなかで、大学を地域の魅力資源と位置付け、「大学と地域の共働」に向けた『東区大学・地域まちづくり事業』を実施している。そのなかで、同学は小学生と保護者を含めた地域住民を対象に、福岡市にゆかりのある江戸時代の儒学者である貝原益軒の思想を学び、人間としての在り方、生き方など先人の教えを学ぶ講座を開催し好評を得ている。

 また、地域No.1の生涯学習センターを目指し、「FITオープンカレッジ」と称して、一般向けに各種講座を開催している。ITなどに関する最新知識を得るための講座や仕事に役立つ講座、生活を豊かにする趣味の講座、健康促進に役立つ講座など幅広く開講。目的に応じて地域住民が学ぶことができる機会を提供している。

14年連続して志願者が増加

 このように福岡工業大学は、地域が抱える課題を研究や活動テーマに盛り込み、解決に導いていることがわかる。実際の課題や問題を解決するために、研究やボランティアを通して学生たちも学びを得ているのだ。地域との関わりをもち、ともに成長することも学園都市発展のあるべき姿だといえるだろう。

 また、地域の発展は、大学の発展や経営とも密接に関わってくる。大学の移転や学生の減少は、飲食店をはじめ不動産、ヘアサロン、病院など地域経済の衰退にもつながるからだ。教職員、学生を合わせて約4,500人を擁する大学の存在は大きい。

 大学間での位置づけは、対外的な評価の高さからうかがえる。たとえば、「入学後、生徒を伸ばしてくれる大学」(大学通信発行の「大学探しランキングブック2019」内「全国の高等学校の進路指導教諭が評価する大学」)で九州私大1位。「面倒見が良い大学」(19年9月15日号の「サンデー毎日」内「進路指導教諭が徹底比較!オススメ大学ランキング」)九州国公私大1位を獲得し、14年連続で志願者数が増加している。14年連続で志願者が増加し続ける大学は、ほかにない。

 ちなみに、03年の志願者数は一般3,348人、推薦934人で志願倍率5.16だったものが、20年では一般1万1,078人、推薦736人、志願倍率は12.91倍にもなった。企業からの信頼も厚い。「採用を増やしたい大学」(日経キャリアマガジン特別編集「価値ある大学2021年版」日経HR/20年6月発行)2年連続全国1位を記録した。

 さらに、経営状態についても高い評価を得ている。教育・研究、経営・財務に関する第三者評価の一環として、11年から(株)格付投資情報センター(R&I)、14年から(株)日本格付研究所(JCR)が実施する格付審査を受審し、2社の格付会社による異なる視点からの評価を受けている。その結果、20年にR&Iの格付においては格付が[A]から[A+]に上昇し、JCRの格付においては見通しが「安定的」から「ポジティブ」に上昇し、本学の経営・財務の安定性の評価がますます高まっている。

 こうした大学の取り組みや客観的な評価を積極的に公開する姿勢が、高校生と保護者、取引先など大学関係者からの信頼につながっている。

 これまでにさまざまな実績を積み重ねてきた福岡工業大学が次に目指すのは、教育・研究機関として「全国トップクラスの教育拠点の形成」である。そうなれば、同大学を中核とした学園都市の発展も、さらに期待できるだろう。

(了)

【宇野 秀史】

(前)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事