2024年03月29日( 金 )

地方創生で観光業界を救う一手となるか「Trip Base道の駅プロジェクト」

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 積水ハウスとマリオット・インターナショナルは10月7日、地方創生事業「Trip Base(トリップベース)道の駅プロジェクト」として、「フェア・フィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」(以下、マリオット宇都宮)のオープニングセレモニー・ホテル内覧会を開催した。オープニングセレモニーでは積水ハウス(株)取締役専務執行役員・石井徹氏や、マリオット・インターナショナル 日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデントのカール・ハドソン氏らが登壇し、それぞれ祝辞を述べた。

宿泊型に特化したホテル「フェア・フィールド・バイマリオット」

 積水ハウスとマリオット・インターナショナルの道の駅プロジェクトで開業するホテルには、レストランは設置されていない。食事は、道の駅のレストランや地元飲食店でとるほか、食材を購入してきて簡易的に設置された共有キッチンでの調理が基本だ。また、各部屋ともシャワー室のみで、道の駅内や近郊にある温泉施設などの利用を呼びかける仕組みとなっている。宇都宮市の道の駅「うつのみや ろまんちっく村」にオープンしたマリオット宇都宮(延床面積3,100m2、階数3階、87室)は、すでにオープンしている岐阜県の美濃加茂市と美濃市に続き、3カ所目の開業となった。

 フェア・フィールド・バイ・マリオットは、世界で1,000軒以上展開しているロードサイド型のホテルで、そのルーツは約70年前にマリオットの創設者であるJWマリオットとその妻が購入した家族経営の農場・フェアフィールドファームにある。

 「マリオット家にとって定期的にこの農場を訪れることは、多忙な生活のなかでバランスを取るために重要な役割をはたしていました。そして、農場で体験した温かさ、快適さ、バランス、そしてシンプルさにインスピレーションを得たJWマリオットは、1987年に純粋な喜びと安らぎを提供するフェアフィールドホテルを創設しました。きめ細やかなおもてなしと心のこもった施設であるマリオット宇都宮は、あらゆる人々に快適な滞在を提供してくれる皆さまにとっての『home away home/家を離れた我が家』になると確信しております」(カール・ハドソン氏)。

左:マリオット・インターナショナル 日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデントのカール・ハドソン氏
右:積水ハウス(株)取締役専務執行役員・石井徹氏

新しい旅のスタイル「目的のない旅」を提唱

 石井徹氏は、道の駅プロジェクトのポイントを3つ挙げた。1つは、道の駅にホテルを隣接させているところだ。通過点や休憩地点として利用されている道の駅に宿泊施設を設けることで、新しいニーズを生み出している。また、宿泊機能に特化させているホテルであるために、旅行者は道の駅をはじめとする地域のお店で食事し、お土産を購入しながら、地域の方々との交流、道の駅を通じた往来が増えて、地域経済の活性化につながるとしている。

 2つ目は、新しい旅のスタイルの確立だ。「私たちはプロジェクトを通じて、さまざまな地域を調査しました。見た目だけの問題で、流通に回らない野菜などが道の駅では手ごろに手に入ります。実はそんな野菜が鮮度抜群で旨い。地方には私たちが知らない魅力がまだまだ隠されていると感動した。そんな感動をたくさんの旅行者と共有したいと考えています。旅行を計画して実行していくだけではなく、目的を定めずに、知られざるスポットをめぐり、偶然の出会いを楽しみながら、過ごしていく。そのような豊かな時間を過ごしても良いのではないか、それがこのプロジェクトの提案する新たな価値です。ただ先を急ぐのではなく、その地域の特性を味わい尽くす、これがトリップベーススタイルです」(石井徹氏)。

 ポイントの3つ目はアライアンスだ。本プロジェクトは25都道府県の自治体、36のパートナー企業との提携で進められている。マリオット宇都宮でも宇都宮市を初め、宇都宮市商工会議所、企業と連携を図っている。

地方創生事業として注目される国内旅行市場拡大への期待

 カール・ハドソン氏によれば、今回の事業で見込まれていた顧客層は海外旅行者、国内旅行者がそれぞれ半分ぐらいだったという。コロナ禍によって状況は一変したものの、Go To トラベルキャンペーンもあり、好調なスタートが切れたと自信をのぞかせている。オープン初日は平日にもかかわらず稼働率は50%を超えており、すでに満室の日も出てきているようだ。

 道の駅「ろまんちっく村」で5年以上清掃員をしている70代の男性は、「道の駅は、平日に安い野菜の購入や温泉施設の利用など地元住民の寄り合い所のような場所。土日になれば、首都圏や福島県など県外からの来訪者で、駐車場はいつも満車になる。最近はコロナで暗いニュースが続いていたが、新しいホテルでこれまで以上の活気が生まれてくれれば」と期待する。ホテルが宿泊特化型であり、地方創生が目的であることを伝えると、嬉しそうに白い歯をのぞかせた。

 岐阜県、三重県、京都府をはじめ、2025年までに25都道府県で約3,000室の展開を視野に入れている本プロジェクトによって、地方の魅力が新たに見出され、業界を救う一手となるか、期待が寄せられている。

【麓 由哉】

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