2024年04月25日( 木 )

ネット通販利用増で佐川急便を中核とするSGHDグループの巨大物流倉庫、小型搬送ロボットが活躍~省人化50%減(後)

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 ネット通販(EC)の利用増で伸びる商品配送の需要。EC向け倉庫を手がける佐川急便(株)を中核とするSGホールディングスグループの佐川グローバルロジスティクス(株)(以下、SGL)は、次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」でロボティクスを用いて作業を大幅に自動化、省人化50%減を図っている。

手作業の4倍速の自動梱包機 

保管エリア(左奥の通路に自動棚搬送ロボット「EVE」が見える)

 保管エリアで台車に積み込んだ商品は自動搬送ロボット「OTTO(オットー)」で出荷検品エリアまで自動で運ばれる。OTTOの最高速度は2m/秒だが、体感としては人が歩くよりも少し早いくらいだ。この倉庫の地図を記憶しているため、荷物を届ける場所まで迷わずにたどり着くという。バーコードをスキャンし検品が済んだ商品は、ベルトコンベアに乗って自動梱包機に向かう。なお、壊れやすいものなどは手作業で梱包される。

 自動梱包機は段ボール箱を自動で組み立てて、商品を箱詰めしてくれる。それぞれの商品サイズに合う段ボールで梱包されるため、輸送時の破損を防ぐクッションなどの緩衝材は不要。さらに、納品書の封入や送り状の貼付も自動化されている。
 手作業での梱包は10人で行った場合1時間あたり200個ほどだが、自動梱包機は1時間あたり約800個を梱包できるため、約4倍速だ。

 自動化により手作業の梱包を半分以下に減少させることで、倉庫業界の深刻な人手不足の解消を図っている。

 また、2021年1月には佐川急便が階下に保有する大規模中継センターが完成する予定。完成後は、ECサイトで深夜の午前2時に受注しても、東京都内であれば最短で当日午前中着が可能になるという。通販サイトで注文後、「待たずに届く」世界が現実のものとなりつつある。

人とロボットのハイブリッド倉庫の理由

 この倉庫が人とロボットの両方で作業するハイブリッドであることについて、堀尾氏は「物流施設では、すべてを機械化した方がパフォーマンスはたしかに高い。しかし、大手ECモールのセール時などは、物流量が3~5倍と大幅に増加し、OTTOや自動梱包機などの能力を超えた物流量を扱う必要が出てくる。そのため、物流量の急増時に柔軟に対応できるよう、すべてを機械化せずに人による作業を半分は残している」と話す。

 ロボットを用いた自動化を図るなかで、人の役割となるのは目視ベースの検品や機械作業の進行確認だ。加えて、作業工程で設備の故障など想定外の出来事が起こった場合に備えて、最終的には人が判断する仕組みだという。堀尾氏は「決まったことを行うのは機械が得意だが、緊急時など状況に合わせて柔軟に対応できるのは人の強み。臨機応変さが必要な部分は人の手を生かしている」という。

 コロナ禍で、衣料品は店舗でリアルイベントを実施しにくいため、ECで販売し個人に直接届けるニーズが増えており、プラモデルなど在宅で楽しめるホビーや定額レンタルサービス(サブスクリプション)の配送需要も伸びているという。堀尾氏は「18年のEC化率(ECを利用して購入する割合)は約6%だったが、今年はコロナ禍の影響で伸びておりEC物流の転換期となるだろう」と語る。
 SGLでは本施設の経験やノウハウを生かし、第2、第3の大型EC物流センターをつくることを目指している。

 日本から海外に個人輸入として商品を届ける越境ECは、ニーズはある一方で海外の物流網は国内に比べてコロナの影響からまだ回復しておらず、配送に影響が出ているため現地の回復を待っているという。

 買い物のオンライン化で急増した商品輸送を、倉庫内の搬送や梱包の自動化で大きく効率化、省力化し、通販ニーズ拡大に対応している。物流業界では今後も大幅な自動化が進むと考えられ、「何をどんな方法でロボットが担うのか」ということにも注目が集まるだろう。また同時に、想定外の出来事の判断や柔軟な対応ができるという人の強みも大切になってくるのだろう。

(了)

【石井 ゆかり】

(前)

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