開通に向けラストスパート 新阿蘇大橋(仮称)建設工事の進捗を追う(前)
国土交通省九州地方整備局が、2021年3月ごろの開通に向けて急ピッチで進めている「新阿蘇大橋(仮称)」の建設工事。9月中旬、渡河部の橋桁がつながり、黒川をまたぐ橋の骨格ができあがった。
かつての阿蘇大橋は、16年4月の熊本地震により落橋。新たな阿蘇大橋の架橋は、震災からの復旧復興のシンボルとみなされており、地元住民の期待は高い。
渡河部の中央閉合を機に、阿蘇大橋工事の進捗などについて、工事を所管する同局熊本復興事務所の大榎謙所長に話を聞いた。
進捗はすこぶる順調
――阿蘇大橋渡河部の工事が完了したそうですが、工事の進捗などをお願いします。

大榎 謙 所長
大榎 9月14日に新阿蘇大橋(仮称)渡河部で、橋桁閉合ブロックのコンクリート打設(中央閉合)を行い、橋桁がつながりました。その際、施工業者である大成建設・IHIインフラ建設・八方建設地域維持型JV(以下、大成JV)の主催で、地元南阿蘇村5校の小学生による最終コンクリート打設イベントを行いました。
イベントに参加した小学生からは、「こんなに大きな橋が人の手によってつくられていることを知って感動しました」とか、「橋ができあがったら、家族でわたってみたい」「橋から見たふるさと阿蘇の景色の美しさを改めて感じた」といったコメントをいただきました。我々としても、それらのコメントに非常に感じ入った次第です。
進捗についてですが、関係各位の努力により、21年3月ごろの開通に向け、工事はすこぶる順調に進んでいます。9月末には橋桁内の外ケーブル緊張が完了し、現在は橋桁上面の地覆工、落下防止柵の設置、超大型移動作業車の解体、黒川左岸側の巨大エレベーター「インクライン」の解体作業などを行っているところです。今後は、引き続き附属物の設置を進めるとともに、橋前後の土工事、伸縮装置設置、橋面防水、舗装工等を行います。「1日でも早く」が我々のスローガンですので、引き続き早期供用開始に向け、工事を推進してまいります。

コロナ対策のキモは人々の意識
――新型コロナや豪雨による影響はありませんでしたか。
大榎 熊本県では今年2月22日に、1例目の新型コロナ感染者が確認されました。工事関係者に感染者が発生すると、最低2週間は工事をストップせざるを得ません。災害復旧事業に支障をきたしかねませんので、新型コロナへの対応方針や事業継続計画を作成、周知し、「もらわない、うつさない」を合言葉に、事務所全体で感染防止対策などに取り組んでいます。大成JVも同様、日頃から高い意識をもって感染防止対策などに努力し、この国家的非常事態のなか、予定工程に沿って支障なく工事を進めていただいています。
「令和2年7月豪雨」は、熊本県南部などで大きな被害をもたらしました。当施工現場周辺でも、例年並みの降雨がありましたが、集中的な降雨にはならなかったので、工程に大きな影響をおよぼすような事象は起きませんでした。コロナ感染症対策で大事なのは、やはり1人ひとりの意識のもちようだと思います。
――活断層区間の橋桁の工夫も無事完了したわけですね。
大榎 そうですね。阿蘇大橋には一部、やむを得ず推定活断層をまたぐ区間(P3~PR1)があり断層変位が生じた際、構造体で抵抗するのは不可能であるため、復旧性や渡河部への影響を考慮して単純桁としました。また、断層変位が生じた場合に上下部構造が損傷する力が伝わらないよう、橋桁を支えるP3とPR1の支承取付けボルトは、レベル2を超える地震動が発生すると、あえて損傷するように設計されています。これにともない、落橋防止対策として橋桁を受ける張りの部分を断層変位量相当(1.4m)の拡幅を施しています。これらは被害を最小限にとどめ、迅速に復旧するための工夫です。
――今後の工事の留意点、ポイントなどは。
大榎 これから冬場を迎えますが、積雪や凍結、強風など厳しい気象条件のなか、舗装工事等を行っていくことになります。天候を把握しながら、遅れを出したり品質低下を招かないよう、施工時の適切な温度管理や、冬ならではの事故対策がポイントになると考えています。
(つづく)
【大石 恭正】