3D点群データをクラウドで自動解析「スキャン・Xクラウド」で市場はどう変わる?(後)
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2020年11月13日 07:00

3D点群データをクラウドで自動解析「スキャン・Xクラウド」で市場はどう変わる?(後)

 ScanX(株)(以下、スキャン・エックス)は、オンライン3D点群処理ソフト「スキャン・エックスクラウド(以下、Xクラウド)の正式販売を9月17日に開始した。クラウドの特長は、一般的なネット環境があれば、どこからでもブラウザ上で高度な3D点群データ()のアップロード、処理をスピーディーに行える点にある。月額2万9,800円という安価なライセンス料金設定もウリの1つだ。2019年10月に設立されたスキャン・エックスとはどういう会社なのか。Xクラウド開発にはどういう意図があるのか。Xクラウドの誕生によって、日本の3Dソフトウェア市場に変化は生じるのか。同社の宮谷聡共同代表に聞いた。

※3D点群データ
 地面や構造物などの対象物に対し、座標軸をもった100万~200万点/s程度のレーザー光照射により対象物との距離を計測することで、対象物の3次元(3D)データを生成する技術。レーザースキャン、点群データなどとも呼ばれる。取得した3Dデータを基にGISにヒモ付けすることで、建設現場の無人化、ICT施工などが可能になる。 ^

データ共有、同時並行作業も容易

 Xクラウドへのログインは、至ってシンプル。スキャン・エックスのHPにアクセスし、メールアドレスとパスワードなどの必要事項を登録すれば、すぐに使える。アップロードが完了すると、登録したメールアドレスに自動で通知を送る機能もある。

 Xクラウドでは、アップロードしたデータの共有も容易だ。既存の方法では、大容量データ共有サービスに別途アップロードしたうえでリンクを共有する必要があるが、Xクラウドでは、共有ボタンを押すだけでリンクを共有できる。「たとえば、水害などの被災現場の3D点群データなどは、現状把握のため、一刻も早く多くの人々と共有したいデータだが、ボタンを押せば一瞬で共有することができる。一見地味な機能だが、大きな強みの1つだと思っている」という。

 新たにブラウザを開けば、1台のPCで複数のプロジェクト操作も可能。また、1つのライセンスを取得すれば、メールアドレスを共有して複数のPCで複数人が同時作業することもできる。既存のソフトウェアのなかには、1つのライセンスにつきインストールできるのはPC1台のみというものもあり、1台のPCを複数人が取り合うという状況が発生するが、Xクラウドではそういうこともない。

まだファーストステップに過ぎない

 Xクラウドには、開発段階であえて落とした機能もある。その1つが、帳票出力機能だ。「ほかではできない機能に特化することを優先して開発してきた。帳票出力などの開発は難しいことではないが、差別化要素にはならないと判断した。だから、意図的に実装を後回しにしている。徐々にユーザーのワークフローに溶け込ませるという開発戦略の一環だ」。いったん後回しにしたが、同社では現在、図面と3Dスキャンデータを重ね、出来形管理するi-Constructionに準じた帳票出力システムを開発中で、実装される日は遠くないようだ。

 「当社のウリは技術力。顧客のニーズがあるモノは、積極的に開発していき、シリーズ化していきたい。現在の資金体力では1つのプロダクトが精一杯だが、Xクラウドはファーストステップに過ぎない。可能な限り、現場の課題解決に応えられるプロダクトを世の中に出していきたい」と力を込める。

建設業はブルーオーシャン

 「3D点群データのポテンシャルはスゴイものがある。いずれ林業や建築などにも手を広げたいと考えている」という。

 林業についていえば、林野庁が「スマート林業」を打ち出し、ICT化による森林の可視化による効率経営を目指している。逆にいえば、従来の林業は効率が悪かったことを物語っている。「従来の森林台帳のつくり方は、たとえば10haの山の場合、1haあたりの木の本数を数えてそれを10倍するというもので、不正確極まりない」と指摘する。

 3D点群データを活用すれば、これが正確に測ることができるようになる。建設現場では除去対象となる樹木データだが、林業向けには樹木データを1本ずつ抽出。直径や樹高、樹冠などを自動計測したうえで、森林台帳としてアウトプットする機能も開発中だ。「林業は、テック系ベンチャーがあまりフォーカスしていない業界だが、どの情報を抽出するかが違うだけで、3D点群データの活用という意味では、建設業などと本質的な違いはない」と話す。

 ベンチャーらしく、トップ自ら全国各地を飛び回る一方、ソフトウェア開発を統括する。顧客には、福岡県や大分県など九州の企業が少なくない。宮崎県出身ということもあり、「今でも九州には特別な思い入れがある」という。

 「メインの市場は地域の建設業。当社にとってブルーオーシャンで、いくらでも入り込む余地がある。アーリーアダプターが思った以上にいたのは、嬉しい誤算だった。日本で実績を積んだ後は、いずれはグローバルで戦いたいという思いがある。世界的には『メイド・イン・ジャパン』のブランド力はまだまだ強いのだから」と目を輝かせる。

宮谷 聡 氏

(了)

【大石 恭正】


<COMPANY INFORMATION>
ScanX(株)

代 表:宮谷 聡、ホン・トラン
所在地:東京都新宿区市ヶ谷加賀町2-3-2-102 
設 立:2019年10月
資本金:5,000万円(資本準備金含む)
TEL:050-1742-3040 


<プロフィール>
宮谷 聡
(みやたに・さとし)
1990年3月生まれ、宮崎県延岡市出身。2015年3月東京大学大学院航空宇宙工学科専攻修了。JAXAとの共同研究ではやぶさ2の研究プロジェクトに参加する。16年9月ISAE-SUPAERO修了。同年欧州航空機メーカーのAirbus入社、ドローンプロジェクトに関わった後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどのスタートアップに在籍し、ソフトウェア開発などを手がける。19年10月にスキャン・エックスを設立。現在に至る。好きな言葉は「Pressure Creates Diamond」。

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