2024年04月16日( 火 )

3D点群データをクラウドで自動解析「スキャン・Xクラウド」で市場はどう変わる?(中)

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 ScanX(株)(以下、スキャン・エックス)は、オンライン3D点群処理ソフト「スキャン・エックスクラウド(以下、Xクラウド)の正式販売を9月17日に開始した。クラウドの特長は、一般的なネット環境があれば、どこからでもブラウザ上で高度な3D点群データ()のアップロード、処理をスピーディーに行える点にある。月額2万9,800円という安価なライセンス料金設定もウリの1つだ。2019年10月に設立されたスキャン・エックスとはどういう会社なのか。Xクラウド開発にはどういう意図があるのか。Xクラウドの誕生によって、日本の3Dソフトウェア市場に変化は生じるのか。同社の宮谷聡共同代表に聞いた。

※3D点群データ
 地面や構造物などの対象物に対し、座標軸をもった100万~200万点/s程度のレーザー光照射により対象物との距離を計測することで、対象物の3次元(3D)データを生成する技術。レーザースキャン、点群データなどとも呼ばれる。取得した3Dデータを基にGISにヒモ付けすることで、建設現場の無人化、ICT施工などが可能になる。 ^

月3万円弱で価格破壊狙う

 Xクラウドには、3つの特長がある。1つ目がコスト。月額2万9,800円(初期費用、保守費用なし、1プロジェクト50GBで10プロジェクトまで)というリーズナブルなライセンス料金設定だ。この料金設定について、宮谷氏は「価格破壊を狙った」とサラリと言ってのける。とはいえ、無謀な設定をしたわけではなく、「海外の3Dソフトウェアの相場を基準にした」ものだそうだが、それでも「日本の顧客からは『安いね』と驚かれる」という。この点、「日本の既存のソフトウェアの料金設定がそれだけ高いということだ。日本が遅れているのか、ガラパゴス化しているのか、どちらかだと思っている」と指摘する。

 2つ目が作業環境のシンプルさ。ブラウザのみで解析処理ができる。対応するブラウザはGoogle ChromeまたはFirefox。ハイスペックなPCなどのワークステーションを構築する必要がないため、一般的なネット環境さえあれば、自宅や外出先でも操作可能だ。ファイルフォーマットは、PTX、PLY、E57、BIN、TXT、XYZ、LAS、LAZに対応する。

 気になるのは処理速度だが、「インターネット回線の速度に大きく左右されるが、ざっくりいえば、YouTubeが視聴できる環境があれば、データ量が1~5GBなら30分程度で処理できる。今のところ、最大50GBまで対応しており、50GBでも6~12時間で処理は完了する」と話す。

ゴミ取り自動化で時間短縮

 そして3つ目が、わかりやすいユーザーインターフェース。わかりやすさの基準は人によって異なるが、Xクラウドには、そもそもマニュアル自体が存在せず、画面表示に従うだけで、解析処理を行える。3D点群データをアップロードする場合は、まずプロジェクト名や日時などを打ち込み、次に建物や樹木の分類設定、ノイズ除去などの設定を行ったら、アップロードする。基本的にこの4つのステップのみだ。

 アップロードしたデータは、ブラウザ上で樹木などの自動フィルタリングが可能。断面図などの表示はもちろん、ノイズ除去、メッシュや等高線の生成などもできる。建物や樹木などの分類設定では、地面だけを自動抽出する機能が実装されている。

 「3D点群データ処理で一番時間がかかるのが、ノイズなどのゴミ取り。この自動化が、ソフトウェア開発で最も重視したポイントの1つだ。当社としては、日中に現場で3D点群データを取得して、夕方にクラウド上にデータを突っ込めば、翌朝にはゴミ取りなどの処理が終わっているという作業モデルを目指している」という。ブラウザ上で操作するためには、数十GBはザラな点群データを圧縮する必要がある。これについて「今回開発した圧縮技術は、Xクラウドを支える主要技術の1つ。点群を減らさず圧縮するために、さまざまな工夫を凝らしている」と明かす。

樹木の点群データ((株)東豊開発コンサルタント提供)

(つづく)

【大石 恭正】


<COMPANY INFORMATION>
ScanX(株)

代 表:宮谷 聡、ホン・トラン
所在地:東京都新宿区市ヶ谷加賀町2-3-2-102 
設 立:2019年10月
資本金:5,000万円(資本準備金含む)
TEL:050-1742-3040 


<プロフィール>
宮谷 聡
(みやたに・さとし)
1990年3月生まれ、宮崎県延岡市出身。2015年3月東京大学大学院航空宇宙工学科専攻修了。JAXAとの共同研究ではやぶさ2の研究プロジェクトに参加する。16年9月ISAE-SUPAERO修了。同年欧州航空機メーカーのAirbus入社、ドローンプロジェクトに関わった後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどのスタートアップに在籍し、ソフトウェア開発などを手がける。19年10月にスキャン・エックスを設立。現在に至る。好きな言葉は「Pressure Creates Diamond」。

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