3D点群データをクラウドで自動解析「スキャン・Xクラウド」で市場はどう変わる?(前)
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2020年11月11日 07:00

3D点群データをクラウドで自動解析「スキャン・Xクラウド」で市場はどう変わる?(前)

 ScanX(株)(以下、スキャン・エックス)は、オンライン3D点群処理ソフト「スキャン・エックスクラウド(以下、Xクラウド)の正式販売を9月17日に開始した。クラウドの特長は、一般的なネット環境があれば、どこからでもブラウザ上で高度な3D点群データ()のアップロード、処理をスピーディーに行える点にある。月額2万9,800円という安価なライセンス料金設定もウリの1つだ。2019年10月に設立されたスキャン・エックスとはどういう会社なのか。Xクラウド開発にはどういう意図があるのか。Xクラウドの誕生によって、日本の3Dソフトウェア市場に変化は生じるのか。同社の宮谷聡共同代表に聞いた。

※3D点群データ
 地面や構造物などの対象物に対し、座標軸をもった100万~200万点/s程度のレーザー光照射により対象物との距離を計測することで、対象物の3次元(3D)データを生成する技術。レーザースキャン、点群データなどとも呼ばれる。取得した3Dデータを基にGISにヒモ付けすることで、建設現場の無人化、ICT施工などが可能になる。 ^


 スキャン・エックスは、イスラエルのスタートアップAiroboticsでSLAMや3D点群データ解析したキャリアをもつ2名のエンジニアが共同創業したSaaSベンチャーだ。宮谷氏は日本人、トラン氏はベトナム人の両親を持つ香港生まれのオーストラリア人だ。社員数は7名(20年9月時点)で、うち日本人は宮谷氏とインターンの学生のみ。東京の本社のほか、トラン氏が在住するオーストラリアのブリスベンに支社を置く。

 Xクラウドによるプラットフォームビジネスのほか、ソフトウェア開発などを手がける同社がフォーカスするのは、日本や海外の建設市場。とくに中小の建設会社、測量会社などをメインターゲットにしている。

 同社のコアバリュー(企業理念)は「Passion(情熱)」「Innovation(圧倒的な開発力)」「Diversity(多様性の尊重)」「Fearless(失敗を恐れない)」。とくに思い入れが強いのが多様性だ。「Diversity is advantage(多様性は強み)」が口癖になるほど、強く意識している。国籍や文化、宗教などにとらわれず、良いモノをつくって、世界中に届ける企業風土づくりにこだわる。


より低価格で使いやすく

 スキャン・エックスの宮谷氏は、建設業界での3D点群データをめぐる状況をこう概観する。

 「日本の建設業界でも近年、TLS(Terrain Laser Scanner)やMMS(Mobile Mapping system)、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などを用いて取得した3D点群データを使った現場施工管理が普及しつつある。普及の理由の1つが、3D点群データの取得に必要となる機材のコストダウンだ。最近では、LIDAR(Light Detection and Ranging)を搭載しているガジェットも登場するなど、大幅にコストが下がってきている。写真や動画と同じように、誰でも3D点群データを取得できるようになる時代が訪れつつある」。

 その一方で、i-Constructionを掲げ、ICT化を進めたい建設業にとっては、これ以上ない追い風だが、それにうまく乗り切れない状況もある。

 「たしかに、3D点群データを取得するためのハードのコストは下がってきている。ところが、そのデータを処理するソフトウェアなどは高額なままだ。世界的にもまだ安くなったとはいえないが、日本はとくに高い傾向がある。さらに、ユーザーには高スペックなPCなどのワークステーションの構築も必要で、一式そろえると、数百万円に上ることもある。ユーザーインターフェースが難解なのも問題だ。使いこなすには、マニュアルを読み込んだうえで、それなりのトレーニングも必要になる。規模の小さな建設会社にとって、これらのハードルは高い」と続けた。

 つまり、ハードのコストダウンは進んでいるのに、ソフトウェアでは進んでいない。これが宮谷共同代表の見立てになる。「この課題を解決したい」――つまり「より低価格で、使いやすいソフトウェアをつくりたい」というのが、Xクラウド開発の出発点だった。

 Xクラウドの開発にあたり、建設会社や測量会社、損害保険会社などにβ版を試験導入してもらい、定期的なフィードバックを受けながら、改善を重ねてきた。実際の現場で使えるものをつくるためだ。「日本の顧客は、海外では求められないような細かいことを求めてくる傾向がある。それ自体ありがたいことだ。当社のエンジニアには海外の人間が多いので、顧客とエンジニアとの間をしっかりブリッジするのが、私の重要な役割になる」――そうだ。

今年7月の豪雨で土砂崩れが起きた九州の被災現場の3D点群データ

(つづく)

【大石 恭正】


<COMPANY INFORMATION>
ScanX(株)

代 表:宮谷 聡、ホン・トラン
所在地:東京都新宿区市ヶ谷加賀町2-3-2-102 
設 立:2019年10月
資本金:5,000万円(資本準備金含む)
TEL:050-1742-3040 


<プロフィール>
宮谷 聡
(みやたに・さとし)
1990年3月生まれ、宮崎県延岡市出身。2015年3月東京大学大学院航空宇宙工学科専攻修了。JAXAとの共同研究ではやぶさ2の研究プロジェクトに参加する。16年9月ISAE-SUPAERO修了。同年欧州航空機メーカーのAirbus入社、ドローンプロジェクトに関わった後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどのスタートアップに在籍し、ソフトウェア開発などを手がける。19年10月にスキャン・エックスを設立。現在に至る。好きな言葉は「Pressure Creates Diamond」。

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