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2020年11月26日 07:00

グローバリズムの次のステージに コロナで激変・移行する世界 九州・福岡の壮健企業100社 

有馬裕之+Urban Fourth
代表/建築家 有馬 裕之 氏

グローバリズムの転換

有馬 裕之 氏

 現在、新型コロナ蔓延による影響で、国内外のさまざまな動きがストップ、もしくは停滞しているような状況です。そうしたなかで我々建築家が今何をすべきかを考えたとき、個人的には「グローバルとは何か」「地域とは何か」の問い直しを始めるべきではないかと感じています。

 今後は、これまでのグローバリズムからの転換が急速に進む一方で、ナショナリズムが台頭します。そのなかでのエネルギーの見直しや、AIを含めたIT技術との連携など、さまざまな事柄を我々なりにうまく整理しながら、同時に対応していく必要に迫られます。これからの社会はどう変わっていくのか、あるいは、どう変えていくべきなのかを考えると、(株)星野リゾート代表の星野佳路氏が提唱している「マイクロツーリズム」なども含めて、グローバル化とは逆の、「地域個性の模索」をしていく必要があるのではないでしょうか。

 たとえば近年の日本では、国を挙げてインバウンドなどの観光政策に力を入れてきました。そのもっとも極端な例が「京都」です。京都はこの20年間、グローバル化の進行のなかで、「いかにインバウンド客に喜んでもらえるか」「お金を落としてもらえるか」に主眼を置いてまちづくりを進めた結果、国内随一の一大観光都市として経済成長を遂げてきました。それが、コロナをきっかけとして海外からの人の往来が途絶えた結果、何が起こっているか―――。これまで観光客でごった返していた街中が、すっかり閑散としてしまっています。京都はこの状況を打破する解決策を、残念ながらまだもち得ていないのではないでしょうか。こうして見ると、「これまでのグローバル化とは何だったのか」を検証し直すとともに、次の段階の模索と構築を始めていくべきではないかと感じます。

中核的な役割をはたす「SDGs」

 今後、世界はどう変わっていくのでしょうか―――。それに対する私の考えは、これまでのグローバル化一辺倒の流れから、本来の姿としての「SDGs(持続可能な開発目標)」を見据えた新しい方向へと転換していくというものです。

 2000年代初頭から加速した、近視眼的な利益中心主義が重要視した「新自由主義グローバリズム」というのは、社会や都市、そして建築においても、「効率主義」や「利益主義」の名の下に、ただ巨大なものを生み出して、効率性や機能性だけを追求していくというプログラムでした。それが今後は、「人」や「地域社会」「地球環境」「エネルギー」などのさまざまな側面に対するバランスが求められ、それに対応せざるを得ないようになっていくと思っています。

 考えてみればコロナ前までは、「アングロサクソン型」といわれる、株主優先ですべてに効率性が求められ、成果主義、自己責任―というアメリカの資本主義が、圧倒的なパフォーマンスを発揮していました。そして、そのまま世界を席巻していくかと思われていた矢先に、コロナで状況が一変。今、変革が起きようとしています。そこでは、利益追求だけでなく社会的責任や社会貢献も目指すことにも目が向けられるかもしれません。一方で、多様なステークホルダーが集まり、対話などを通じて持続可能性の高い新たな価値を創造するという、新しい資本主義の形成も想定されます。

 そのなかで中核的な役割をはたすのが、SDGsです。その最大の特徴は、「未来のあるべき姿」という理想像を掲げ、そこから逆算的に「バックキャスティング」的な思考で現在なすべきことを考えるという点です。今を起点にその延長線上としての未来を考える「フォアキャスティング」とは、根本的にアプローチが違います。SDGsで設定されているゴールが2030年ですから、ちょうど10年先の未来のあるべき姿を描いたうえで、そこに向けて今何をなすべきなのか―――。これまでのグローバル主義による弱肉強食の強欲むき出しの世界が、コロナを経たことで、新しいステージに移っていく予感がしています。

今後の建築の可能性

 建築家としては、都市における建築の在り方についても考えないわけにはいきません。たとえば都市部のオフィスですが、今後の運用については、かなり不透明です。商業用不動産サービス大手の米・CBREによれば、これまで通りオフィスで業務を行うと答えた世界の200社のうち、ソーシャルディスタンス(社会的距離)策を正しく導入できるのはごく一部という調査結果が出ています。つまり、従業員の安全と業務維持のバランスをとらなければならない企業にとっては、新型コロナウイルスのワクチンが開発されるまで、既存のオフィスでの業務再開は事実上難しいということです。

 少なくとも、現状のオフィスの在り方を変更していく必要が生じており、レイアウトの再編成はもちろんのこと、休憩室やカフェスペースの廃止、シフト制の出社形態の増加、部屋ごとの最適人数の設定、センサーや顔認証などによる身体的接触の最小化など、これまでのオフィスの基本条件が大きく変化せざるを得なくなるでしょう。少々過激な言い方をすれば、「現在の建物はもはや役立たずで、そのほとんどは古い機能だけをもつ時代遅れの箱のような存在になりかねない」ということです。今後オフィスは、「長期的に美しく安心・安全につくられた、コロナのような健康マターにも対応できる建物」になる必要があるといえるでしょう。

 一方で、都市や建築における緑化も積極的に進めることが必須条件となっていくことが考えられます。たとえば、私が四半世紀前にエミリオ・アンバースを起用して、共同でチームを組みつくり上げた「アクロス福岡」ですが、もともと「市民のための公園をつくる」という基本的な考えの下、ビル全体を「庭園化」しようと大規模な屋上緑化を施したものです。地域の環境や多様性、自然との融合など、さまざまなコンセプトを盛り込んで事業化したのですが、当時は反対も多く、否定的な意見も多くいわれました。それが四半世紀を経てすっかりと木々が生い茂り、現在は福岡のまちに根差して、緑化によって気温を下げる役割をはたすとともに、自然の緑が常に新しさを感じさせる建物となっています。

 今後は都市や建築においても、これまでのグローバリズムのなかでの効率性や機能性重視の在り方から、「エネルギー」「AI」「地域個性」、そして「人」などの要素を積極的に取り込む必要があります。さまざまな変化への対応を同時に行っていくような流れになっていくように思いますし、それが我々建築家に求められているものだと感じます。


<プロフィール>
有馬 裕之
(ありま・ひろゆき)
 1956年、鹿児島県生まれ。80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなど多岐にわたり、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。

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