2024年04月26日( 金 )

1人ひとりが社会を動かすプレーヤーに 市民社会への変容が世界を変える(前)

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(株)ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口 一成 氏

 「ソーシャル」というキーワードをこれほど耳にした年はなかったのではないだろうか。しかし、今回は一世を風靡した「ソーシャルディスタンス」ではなく、本来の意味での「ソーシャル」に改めて注目してみたい。福岡に本拠を置き、ソーシャルビジネスの開拓と普及に力を注ぐ(株)ボーダレス・ジャパン代表取締役社長・田口一成氏に、今取り組むべきソーシャルビジネスとSDGsを含めたこれからの社会の在り方について聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス取締役 緒方 克美)

深刻度を増す地球環境 まずはエネルギー改革を

 ――「ソーシャルビジネス」という言葉を最近よく耳にするようになりました。福岡でも取り組む人は増えているのでしょうか。

(株)ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長 田口 一成 氏

 田口 まだまだこれから、というところだと思います。当社では、「社会変革の担い手を育てるソーシャルビジネススクール」と銘打って、ボーダレス・アカデミーという社会的起業家を養成する取り組みを行っており、3期目となりました。定員25名で、東京では毎期定員以上のお申し込みをいただいています。

 ですが福岡では1期目は25人で満員でしたが、2期目は20人ちょっと、3期目は12〜3人。現在、福岡でソーシャルビジネスに取り組んでいる人の多くが、ボーダレス・アカデミー出身者という感じではないでしょうか。

 ――ソーシャルビジネスというと、最近ではSDGsの文脈でも注目されるところだと思います。ようやく時代が追いついた、というところでしょうか。

 田口 よくそう言っていただきますが、私としては今の時流を見ているつもりはありません。ただ、SDGsを含めて世の中の人たちにも「このままでいいんだろうか」というぼんやりとした不安はあるのではないでしょうか。少子高齢化社会、地球温暖化、食糧危機などの多くの課題について、学識経験者や知識人の層に「このままでは地球環境自体がもたないのではないか」と考える人が増えています。

 とくに地球温暖化については深刻です。2030年までに、2010年の時点よりもCO2が半減していないと、温暖化を止めることはできず、さらに2050年までには実質的に排出量をゼロにしなければいけない。

 ――そんな短い期間でそこまで排出量を減らすのは、非常に難しいことです。

 田口 はい。でも、私はあきらめていません。子どもの世代から、「なんでこうなるとわかってたのに、CO2を減らさなかったの?」と言われないように2030年までにどれだけできるかわかりませんが、やれるだけのことはやろうと動いています。温暖化を完全に食い止めるのは無理かもしれませんが、少しでも延命できればいいのですから。

 今世間でSDGsが注目されているということとは危機感が違うかもしれません。それでも、目を向け始めるきっかけになったのはプラスだと思います。あとは、実際の地球環境を意識した取り組みにどう落とし込んでいけるか。その初めの一歩ですね。

(つづく)

【文・構成:深水 央】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田口 一成
所在地:福岡市東区多の津4-14-1(福岡オフィス)
設 立:2007年3月
資本金:1,000万円
売上高:(20/2)約54億円


<プロフィール>
田口 一成
(たぐち・かずなり)
1980年12月生まれ。3人兄弟の長男。西南学院高校・早稲田大学卒。大学2年のときに発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て、ソーシャルビジネスに取り組むことを決意。現在、自らも「ハチドリ電力」など新しい取り組みを続けながら、年間100社のソーシャルベンチャーを立ち上げる仕組みづくりに奔走している。

(中)

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