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2020年11月30日 17:34

1人ひとりが社会を動かすプレーヤーに 市民社会への変容が世界を変える(中)

(株)ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口 一成 氏

 「ソーシャル」というキーワードをこれほど耳にした年はなかったのではないだろうか。しかし、今回は一世を風靡した「ソーシャルディスタンス」ではなく、本来の意味での「ソーシャル」に改めて注目してみたい。福岡に本拠を置き、ソーシャルビジネスの開拓と普及に力を注ぐ(株)ボーダレス・ジャパン代表取締役社長・田口一成氏に、今取り組むべきソーシャルビジネスとSDGsを含めたこれからの社会の在り方について聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス取締役 緒方 克美)

マイクログリッドで電力の地産地消を実現

 ――地球環境に対する田口さんの取り組みの1つが、ハチドリ電力です。

 田口 ハチドリ電力は、電力の小売業者です。家庭やオフィス・工場などに、自然エネルギーを販売しています。先ほども触れましたが、現在、もっとも大きな社会的課題は地球温暖化。そして、その原因となっているのはCO2の排出です。

 今、日本から排出されているCO2の41%がエネルギー部門、つまり発電です。現在、日本で発電されている電気の約8割が石炭・石油などを燃やして発電する火力発電でまかなわれています。発電で使うエネルギーを再生可能エネルギーに変えることができれば、日本から出るCO2を大きく減らすことができる。そして私たちは、環境活動への選択肢として選んでいただくために、1つの選択肢しか提示したくない。それが、実質自然エネルギー100%のプランです。

 ここで経済性を考えると「自然エネルギー100%だと高価なので、70%」という発想もあるのでしょうが、それはやりたくありません。

 ――とはいえ、それではコストが高くなるのではありませんか。

 田口 ハチドリ電力では、電気からは利益を取りません。「会費」というかたちで、ひと契約につき500円だけ運営費用をいただきます。ハチドリ電力では利用料の1%を基金として再生エネルギー発電所をつくる仕組みになっています。

 ハチドリ電力を使うことで、CO2を排出しない電気を遣えるだけではく、再生可能エネルギーを実際に増やすことに直接寄与できる仕組みになっています。

 ――なるほど。しかし、太陽光発電といえば一時のメガソーラーブームであまり良くない印象がありますが…。

 田口 FIT制度(固定価格買取制度)が、投資対象になってしまいました。そのため、無理な開発が行われたことで再エネ批判も起きました。でもこれは、あくまで取り組み方の問題だと考えています。

 そもそも環境問題への行動としての太陽光発電なので、環境を壊さない設置の方法があります。戸建住宅や集合住宅の屋上に設置する方法はもちろん有効です。新しいものでは、ハチドリ電力が推進しているソーラーシェアリング。これは畑の上にソーラーパネルを置く方法です。畑で栽培される野菜や果物にとって、太陽光は3割ほど過剰なのです。つまり、3割分はソーラーパネルで遮って、発電に使ってもいい。発電と農業で、太陽光をシェアするわけです。

 これなら、農家さんから見れば副収入にもなります。景観にも配慮して、ソーラーパネルを支える構造材も鉄パイプではなく地域の間伐材を使うとなおいい。自然物なので一定期間が来れば組み直すことを前提に考えています。スケールメリットを追求するメガソーラーではなく、地域で必要な電力だけを発電する小規模発電所です。

 ――送電網についてはどうお考えですか。

 田口 当面は、従来の電力会社がもっている送電網に乗せるしかありません。今の電気代には送電費用が大きな割合を占めていますから、自宅や事業所の屋上に太陽光パネルを載せて電力の自給自足を可能にする自家消費モデルを進めていきたいと思います。

 ――電力の自給自足、地産地消ですね。

 田口 建物の屋上や畑の余剰スペースなどを活用した小規模な太陽光発電所をたくさんつくり、地域で必要な電気を供給できるようにしたい。そして、みんなが参加したくなる仕組みをどんどんつくって、再エネ需要を増やしていきたいですね。そもそも、太陽光発電に必要な費用のほとんどが初期の設備投資で、ランニングコストとしては継続的に燃料を必要とする火力発電や原子力発電より圧倒的にリーズナブルです。

(つづく)

【文・構成:深水 央】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田口 一成
所在地:福岡市東区多の津4-14-1(福岡オフィス)
設 立:2007年3月
資本金:1,000万円
売上高:(20/2)約54億円


<プロフィール>
田口 一成
(たぐち・かずなり)
1980年12月生まれ。3人兄弟の長男。西南学院高校・早稲田大学卒。大学2年のときに発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て、ソーシャルビジネスに取り組むことを決意。現在、自らも「ハチドリ電力」など新しい取り組みを続けながら、年間100社のソーシャルベンチャーを立ち上げる仕組みづくりに奔走している。

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