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2020年12月01日 11:00

【凡学一生のやさしい法律学】詭弁の論理学(4)

 詭弁は、確実に日本の民主主義を破壊している。日本に真の民主主義を実現させるためには詭弁の存在形式を理解し、詭弁を少なくとも日常の社会生活から排除しなければならない。詭弁の論理学は、今の時代にもっとも必要な社会知見である。詭弁はわかりやすくいえば「うそ」であり、「うそ」が蔓延する社会がまともな社会である筈がない。

4. 総理大臣による大儀なき国会解散の是認

 菅総理大臣は遠からず国会を解散するだろうとの「噂」について、橋下氏はこれも与党と野党の権力闘争のために許されるとした。ここでも総理大臣の解散権という具体的な事柄が、与党と野党の権力闘争の問題にすり替えられた。この問題には二重に詭弁が関係している(詭弁の二重構造)ため、少し複雑で難解かもしれないが、丁寧に説明したい。

 そもそも総理大臣に固有の解散権があるか、という議論が学説でも議論されている。憲法上、国会の内閣不信任案に対抗するかたちで総理大臣に国会の解散権があることは明文化されており、あきらかであるが、それ以外にも総理大臣に固有の解散権があるか、つまり世にいう「大儀なき解散」は認められるか、という問題である。

 このような固有の解散権の存在を天皇の国事行為の規定から正当化する論理となるため、「7条解散権」と講学上は呼んでいる。つまり、天皇は国事行為として国会の解散を宣言するが、国事行為は内閣の助言と承認が必要であるため、結局は総理大臣には解散権がある、という論理である。これが逆理と飛躍の詭弁であることはあまり認識されていない。

 天皇には国政に関する権能は一切ないため、天皇の国事行為は完全な形式・儀式に過ぎない。実質はすべて「内閣」(総理大臣ではない:筆者注)の助言と承認権に存在する。そのため、国事行為の規定を理由に内閣に国会解散権があるとし、さらに総理大臣に解散権があるとすることは二重の論理の飛躍となる逆理である。なぜなら、内閣(ひいて総理大臣としてよいのか)には、いかなる意味でも国会解散権をみとめる規定は存在しない。つまり内閣には、国会解散権を認める根拠がない。このように、内閣総理大臣の「大儀なき国会解散権」の問題には、重大な論理的な欠点が存在する。

 しかし、橋下氏はこれらをまったく無視して、与党と野党の権力闘争を理由に正当化した。もちろん、このような論拠で総理大臣の国会解散権を認める「学説」は存在せず、「橋下1人説」となる。「大儀なき解散」は「党利党略による解散」であるから、橋下1人説は「党利党略解散権説」ということになる。

 なお、この問題の背景には日本の法律学の浅薄性がある。それは形式と実質の混同であり、総理大臣と内閣の関係についての法的理解が不足しており、存在しないことである。

 総理大臣は、たしかに内閣の組閣権をもつ。それは各国務大臣の任命権である。任命された国務大臣は、一体誰に対する忠誠の義務があるのか。総理大臣もまた国民主権者によって権限が委任された代理人であり、国務大臣も代理人から選任されたいわゆる複代理人である。忠誠を尽くすべきは本人たる主権者国民であり、単なる任命権者である総理大臣ではない。論理的には、総理大臣の意思と合議体内閣の意思の食い違いはあり得ることだ。しかし、そんなこととは露知らず、任命権者の総理大臣を「おかみ」とあがめる自民党議員には、実質的な力関係だけが認識されている。お粗末な話である。

(つづく)

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