2024年03月29日( 金 )

いよいよ今年度中の事業者公募へ 九大・箱崎キャンパス跡地再開発(中)

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新たな拠点創出に向けた都市計画の決定・変更

 こうした跡地利用計画やグランドデザインを受けて福岡市は、新たな拠点の創出に向けて、九州大学跡地にふさわしい機能の導入を図るとともに、土地利用転換に向けた都市基盤を整えるため、20年6月に都市計画の決定・変更手続きを実施した。

 まず、土地利用の転換および道路などの基盤整備を契機として、良好な市街地の形成と多様な都市機能の誘導を図るため、箱崎キャンパス跡地や貝塚駅周辺を含めたエリアの用途地域を、「第一種住居地域」(容積率200%/建ぺい率60%)から「第二種住居地域」(容積率200%/建ぺい率60%)に変更。これにより、一定規模の店舗やオフィス、住宅などの併存が可能となった。また、市施行の土地区画整理事業の事業実施に向けては、箱崎キャンパス跡地の北側エリアと貝塚駅周辺、さらに箱崎中学校周辺を含めた区域決定と、「貝塚駅周辺土地区画整理事業」という名称決定を行うことで、施行の対象とした。

 さらに、「貝塚公園」の公園区域の変更を行ったほか、新たに「箱崎中央公園」の公園区域を決定。跡地南エリアにおける公園不足の解消と、移転後の箱崎中学校との一体的な防災性の向上、さらには近代建築物活用ゾーンの緑と連続するゆとりある空間整備に資することを期待している。

 土地利用転換の進め方については、箱崎キャンパス跡地において民間活力を生かしながら良好な市街地形成を実現するため、多様な都市機能の導入を可能とする用途地域を設定。今後、事業者公募を行い、その提案内容に応じてまちの魅力をさらに高める地区計画制度などの活用を検討している。

 事業者公募前の都市計画手続きについては、前述の「第二種住居地域」への見直しを20年6月に決定告示。事業者公募については、福岡市・九州大学・URでグランドデザインの実現に向けて必要となる案件を定める。公募において民間活力を生かした幅広い土地利用計画や壁面位置の制限、街角広場などの提案を求めることで、良好な環境を創出していく方針。さらに事業者公募後には、公募によって求めた内容などを地区計画に定めていくとともに、エリアの魅力を高めるような事業者の提案に応じて、より多様な都市機能の誘導を可能とする「緩和型地区計画制度」(開発整備促進区()などを想定)の活用を行っていくとしている。大型の商業施設ができる可能性もあるというわけだ。

※:開発整備促進区
 大規模な土地利用転換が見込まれる区域において、エリアの魅力向上に資すると認められる場合に、劇場や映画館、演芸場、観覧場、店舗、飲食店、展示場などの多様な用途に供する一定規模以上の建築物の立地を可能とする地区計画の制度 ^

南エリアはURが、北エリアは市が整備

 箱崎キャンパス跡地の基盤整備については、UR都市機構が開発行為を行う南エリアと、福岡市が土地区画整理事業を行う北エリアとに分けて実施される。

 まず南エリアにおいては、周辺地域が望む早期のまちづくりを図るために、迅速な都市基盤整備が可能な事業者として九州大学はURを選定。URは開発行為を実施し、それに併せて都市計画道路などの整備も行う。南エリアの開発面積は約29.3haで、土地造成や公園、跡地外周道路の拡幅などを実施。現在、公共施設の管理者協議などが行われており、工事着手は20年度中を予定している。

 また、南エリアでは「堅粕箱崎線」(延長約630m、幅員28m、4車線)と「原田箱崎線」(延長約730m、幅員19m、2車線)の2本の都市計画道路が、直接施行制度に基づいてURによって行われる。直接施行制度とは、面的整備と併せて都市計画道路などの公共施設もURが整備する制度のことで、都市再生機構法第18条1項に基づくもの。現在、この都市計画道路の用地取得を進めるとともに、20年10月から工事に着手している。

 北エリアにおいては、前出の「貝塚駅周辺土地区画整理事業」として、市が土地区画整理事業を実施する。同土地区画整理事業は、箱崎キャンパス跡地などの計画的な土地利用転換に必要な都市基盤整備を行うことにより、貝塚駅周辺の脆弱な都市基盤の課題解消と合わせて、交通結節機能の強化を図ることを目的にしたもの。施行地区面積は約23.4haで、事業施行期間は29年3月末まで(清算期間を除く)。今後の計画では、20年12月に事業計画案が策定され、21年1月予定の縦覧を経て、20年度中に事業認可。その後、仮換地指定を経て、22年度から基盤整備工事が行われる予定となっている。

都市基盤の整備範囲

(つづく)

【坂田 憲治】

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