2024年04月25日( 木 )

【地場ゼネコン特集】加速する財務基盤強化 次年度以降は体力勝負の持久戦か(前)

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 当社が行ったゼネコン・デベロッパー調査によると好決算を出す企業が少なくなかった。しかし、3月以降のコロナ禍のなか受注予定だった新築・改修工事の計画が延期、白紙になるケースが見られた。受注形態や、受注先によっては21年以降にコロナの影響が出てくるのは必至だ。各社にはコロナの感染状況を睨みながら戦略を立てていくことが求められる。

ゼネコン売上高

 70社中37社が前年より増加となった。業績が好調な背景としては、大型案件の受注が増えたことや、公共工事、民間工事ともに建築活況が続いていたことが挙げられる。売上高100億円を超えた企業は13社。前年より3社増加した。上位5社の順位は前回と同じで、売上高トップは九州北部を主な販路とするA社。前年比約35億円の増収となり400億円目前まで積み上げ、地場トップと評される2位B社との差は約150億円にまで広がった。また50億円以上100億円未満の企業は12社に上る。

 売上高伸び率で目立ったのは、8位のC社で2倍以上の増収をはたした。ただし、同社は近年、売上高の浮き沈みが激しく、前年の約30%の大幅減収からのV字回復の結果だといえる。減収率がもっとも高かったのは前年伸び率が1位だったD社。2018年5月に前代表の不祥事で建設業を廃業。その後、許可を再取得した経緯がある。18年9月期は前年の民間受注残が多かったこともあり大幅な増収となったが、19年9月期は官公庁工事減少の影響を受けマイナス71%となった。

売上総利益/率

 70社中34社が前年より増加となった。上位4社は売上高ランキングと同じ顔ぶれ。伸び率に関しては100%台が2社。伸び率トップは産業用建物建築分野において豊富な実績をもち、高いブランド力を有するE社。

 利益率で見ると民間工事に特化したD社が27.49%を計上した。D社を含め、15%を超えた企業は16社となった。上位10社中8社の顔ぶれが変わっており、高い粗利率を安定的に確保することの難しさが現れている。

経常利益/率

 70社中31社が前年より増加となった。上位3社は売上高および総利益ランキングとも変わらず。経常利益トップのA社は2年連続1位で前年比約2億円の増益となった。2位B社との差はおよそ11億円となっている。

 経常利益率で見ると、1位は地場デベロッパーから毎期安定した受注を行うF社で11.53%を計上。2位のG社の売上総利益率は11%台にとどまっているも10.24%を計上。原価の計上方法にもよるが合理的に販管費を用いることにより高い利益率を確保している。経常利益率の平均は前年度を0.05%下回り4.48%。5%以上確保したのは29社。一方、1%台に満たなかったのは10社で前年より1社増加。経常赤字は1社となった。

当期純利益/率

 70社中30社が前年より増益となった。70社の当期純利益平均は1億9,792万円。前年比472万円減となっている。当期純利益1位はA社。前年比17.44%増加させている。

 当期純利益率1位はエネルギー事業を軸とするグループ会社の1社であるH社。当期純利益率平均は2.56%で前年比0.29%減となった。前年比減少に転じたのは40社。5%以上を確保したのは11社で前年より2社減少。1%に満たなかったのは16社で前年より1社増加している。

借入依存度

 借入依存度は平均12.01%。50%以上の企業は今回3社で前年より1社増加した。近年各社とも財務基盤強化を進めてきたが、70社中20社が無借金経営を維持。前年より3社減少したものの、現預金を多額に有する一方で有利子負債がわずかしかない企業も数社見られる。

自己資本比率ランキング

 自己資本比率は平均38.63%で前年比0.19%と微増。自己資本比率30%を超える企業は47社で前年より2社増加した。なお、10%未満の企業は1社のみ。好況な市況をふまえ、財務体質の健全化が進んでいるといえよう。21年は新型コロナウイルスの感染再拡大に備え、内部留保を蓄え財務基盤を強化している。

(つづく)

【内山 義之】

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