2024年04月24日( 水 )

コロナを寄せ付けない究極のアンチエイジング 寿命1000歳プロジェクト!(2)

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国際政治経済学者 浜田 和幸

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染-拡大も気になるが、連日の感染者数に関する報道の過熱ぶりには「恐怖心」をいたずらに煽っているようにも思われる。将来への不安に苛まれ、日本では自殺者の数が急増していることも無視できない。ネット上では根拠の曖昧な情報が飛び交い、人々を疑心暗鬼の闇に引きずり込む一方である。飲食業や旅行産業では経済的な悪影響も深刻化しており、鳴り物入りの「Go Toキャンペーン」も腰砕けになってしまった。来年の東京オリンピック・パラリンピックにも暗雲が立ち込めている。要は、社会全体を暗い影が覆っているといっても過言ではないだろう。

高齢者を20歳の青年に

 日本ではあまり知られていないが、「インターネットの生みの親」とも呼ばれているアメリカ国防総省の先端科学技術研究所(通称「DARPA(ダルパ)」)の存在は世界を変える新技術の開発においては欠かせない。なぜなら、インターネットをはじめ技術関連の未来研究においては、当初の目的は軍事そのものであることが多いからである。

 このダルパが、近年、国家予算の半分近くの資金のなかから、強力に研究開発を進めているのが、人体改造計画に他ならない。本来の目的は、戦場で致命的な傷を負った兵士の人体の再生技術や、兵士の運動能力や耐久能力を飛躍的に高めるための細胞研究であった。

 たとえ戦場で腕や足が失われたとしても、そうした兵士の肉体を速やかに再生するための技術。はたまた、1週間、2週間にわたり、飲まず食わず、睡眠をとらなくとも判断力や決断力に影響を受けないような、人間の意識改革と生命力の強化に細胞研究の成果を応用しようとするものである。

 歴代のアメリカ大統領も、このダルパに対して、「人間の脳の活性化について研究を進めるように」との特別な指示を出してきた。いわば、ホワイトハウスお墨付きプロジェクトなのである。こうしたアメリカ政府の潤沢な研究開発費のおかげで、アメリカにおいては、人体の再生研究に関する国際会議が頻繁に開催されてきた。

 たとえば、2014年末には、アメリカで「人類の科学史上最大」と呼ばれる寿命延長のためのバイオテクノロジー会議が開催された。ハーバード大学をはじめ、世界の名だたる生命科学の専門家が一堂に会し、かつてないほど創造的な研究成果が相次いで発表されたものだ。

 具体例を挙げると、人間にたとえれば「60歳の高齢者を20歳の青年に若返らせる研究」の成果も発表された。これこそが、冒頭に紹介したNMNの力である。何しろ、糖尿病のマウスを使った実験で、肥満状態にあるマウスにNMNを1週間飲ませた結果、血糖値が大幅に低下。「糖尿病も改善し、老化した膵臓の機能も蘇った」と報告されている。夢のような話だが、「60歳を過ぎた女性が20代に若返り、出産も可能になる」という。

 こうしたサーチュイン遺伝子の存在を発見したのが、先に述べたワシントン大学の今井眞一郎教授である。同教授によれば、通常、「あらゆる生物の細胞にNMNは含まれているのだが、加齢とともに減っていく傾向にある」とのこと。そこで、こうした細胞内のタンパク質の1種であるNMNを増やすことができれば、衰えた細胞が元の若々しい臓器の再生につながると仮定されている。さらにはアルツハイマー病についても、早い段階からこのNMNを取り入れていれば、病気の発症も抑えられるとのこと。

 我が国の食品加工会社でも、すでにこのNMNを独自に製造できる技術を開発している。要は、Googleにとどまらず、アメリカの国防総省が先鞭をつけた、人体改造計画、延命研究は、まさに世界のベンチャー企業や投資家の関心を大きく刺激し、新たな成長産業として飛躍を遂げる原動力となっているのである。

 言い換えれば、人間の頭脳をビッグデータ化するとともに、人間の肉体や生命を永久化しようとする試みに他ならない。人間とマシンの合体とも受け止められる。いわゆる「サイボーグ化」の始まりである。これを単なる空想の産物と笑い飛ばすのか、あるいは、科学的なニューベンチャーとして真剣に受け止めるのか。どちらの視点に立つかによって、人類と地球の未来が大きく左右されることになるに違いない。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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