2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

ビジュアルプロモーションにBIM活用、仮想モデルハウスで工務店の受注を支援

(株)栄住産業

現物と見紛う流麗さ

細部までつくり込まれた屋内の様子
細部までつくり込まれた屋内の様子

 門をくぐって玄関ドアを開けると、瀟洒で清潔感にあふれたエントランススペースが広がり、さらに廊下を通ってリビングに入ると、十分な採光が得られた明るい空間が広がる。部屋には雰囲気に合ったモダンな家具や調度品が配され、ふと片隅に目をやると、室内に差し込む温かな日差しのなかで可愛い子猫が無邪気に戯れている。階段を上がり、バルコニーから屋外に目を向けると、そこには眼下を一望できる高台からの贅沢な景色が広がっている。

 ――と、ここで視点が一転、まるでドローンで撮影したかのような、家を見下ろす映像に切り替わる。家の内部だけでなく、外観を俯瞰的に見るというのは、なかなかできない経験だ。すると、外の様子が青天、曇天、雨天、夕方、夜間と次々と変わりながら、それぞれの天候や時間帯によって外観の様子も刻々と変化。さらには、桜舞い散る春に、強い日差しがまぶしい夏、美しい紅葉に彩られた秋に、静かに雪が降り積もる冬――と季節すら移り行き、ほんのひとときの間に、四季折々の家の風情を臨場感たっぷりに味わうことができる。

  

 これは実際にある家の映像ではなく、細部まで緻密に描かれたCGによるもの。非常にリアリティがあるにも関わらず、現物の家そのものは、まだ建ってすらいないというから驚きだ。「4SEASONS(フォー・シーズンズ)」と名付けられたこの映像制作を手がけているのは、金属防水工法「スカイプロムナード」や屋上空間「OSORAリビング」で知られる(株)栄住産業。ただし、この映像自体は同社に直接的な利益をもたらすものではなく、同社の顧客である工務店の営業を支援するためのものだ。

 戸建住宅を販売する場合、最初の段階で「この会社で建てたい」と施主にいかに思わせられるかがカギになる。そのため、多くの場合は住宅展示場などに自社の技術の粋を詰め込んだモデルハウスを構え、施主の“心”をつかむことに腐心する。だが、中小の工務店にとっては、大手と競えるような豪華なモデルハウスを建てることは非常にハードルが高い。たとえ無理をして建てても、その分コストがかかって販売価格が高額になり、結果「売れない」――では目も当てられない。

 「当社が工務店さま向けに提供している4SEASONSでは、実際のモデルハウスの代わりにバーチャルな仮想空間上でモデルハウスを建て、内観や外観をリアリティのある映像として施主さまにお見せすることで心をつかみ、工務店さまの成約率アップをサポートしていくものです」――と同社取締役社長・宇都和光氏は語る。

 現物のモデルハウスではないのでコストが抑えられるのはもちろん、実際の施工時には施主の希望に沿って部分的な設計変更などのカスタマイズも可能。冒頭に紹介したような天候・時間・季節の違いによる家の印象の変化の仮想体験などは、バーチャルだからこそ可能な点でもある。また、現物のモデルハウスではつい間取りや仕様を“背伸び”してしまいがちだが、施主の希望する価格帯に合わせたモデルを複数用意することも可能で、コロナ禍で住宅展示場に足を運ぶ人が減っているなか、リモートでの提案にも適している。さらに、仮に売れなかったとしても、そのときは仮想モデルハウスを建て替えてしまえばいい。まさに、至れり尽くせりの優れものだ。

天候や時間帯、四季の違いによる外観の変化も表現可能
天候や時間帯、四季の違いによる外観の変化も表現可能

地場工務店のお役に

 同社代表取締役会長・宇都正行氏の発案によって始まったこの取り組みは、もともとは積算の効率性向上を目的としたものだった。「地場工務店のお役に立つ」という同社の使命に基づき、当初は「見積もり算出に手間と時間がかかってお客を逃してしまう」という工務店の“お困りごと”解決のために、システム構築をスタート。同社のフィリピンのITチーム「EIJYU SANGYO PHILS INC.」とともに、「ブルーオーシャン・システム」という名前で約6年の歳月をかけて現在のかたちにしていった。そのなかで、積算や工程管理の支援だけでなく、3Dモデリングの映像によるビジュアルプロモーションが工務店の顧客獲得のために役立つと考え、4SEASONSの誕生に至ったという。

 実は、これらブルーオーシャン・システムおよび4SEASONSに使われているのは、次世代型の設計手法と目されている「BIM(ビム)」である。BIMとはコンピュータ上の3次元の仮想空間のなかに、模型のように建物を組み上げる設計手法のことで、設計から施工、維持管理までのあらゆる工程に関わる情報を一元的に管理することが可能な優れもの。導入に際してはまだまだ高いハードルがあるものの、現在、国や大手ゼネコン、業界団体などが主導するかたちで、普及に向けた動きが活発化しているところだ。設計の世界では効率性向上などの観点で着目されているBIMだが、同社の場合は顧客となる工務店の営業支援のために、優れたビジュアライゼーション面でのポテンシャルに着目した。

 「人間の知覚情報の約9割が視覚によるものといいます。仮想モデルハウスには現物にはない利点も多く、中小の工務店さまが大手と戦っていくうえで、当社の4SEASONSは強力な“武器”になると思っています」(和光社長)。

 次世代型設計手法BIMの機能を十二分に活用した、ビジュアルプロモーションによる工務店支援。時代の先を行く革新的な同社の取り組みは、いまだ保守的な性格の強い住宅業界に“新風”を吹き込もうとしている。

左から、執行役員/営業本部長・河野信幸氏、取締役社長・宇都和光氏、営業企画部長・原口潤也氏
左から、執行役員/営業本部長・河野信幸氏、取締役社長・宇都和光氏、営業企画部長・原口潤也氏

【坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
(株)栄住産業

代表取締役会長:宇都 正行
取締役社長  :宇都 和光
所在地:福岡市東区原田3-5-6
設 立:1976年2月
資本金:9,800万円
URL:https://www.eijyu.co.jp

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