• このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年01月21日 16:45

政府は財政規律を凍結し積極財政を展開せよ(前)

京都大学大学院工学研究科 教授 
藤井 聡 氏

 菅政権は73兆円規模の経済政策を決定し、これに基づいて3次補正予算を実施することを発表した。1次補正、2次補正も同規模の大きな対策が図られてきたということで、これを見て、「菅政権は本気で日本のために頑張ってくれている」という印象をもった国民もおられるかもしれない。しかし、実態はその正反対だ。

73兆円経済対策は「粉飾決済」の類い

 経済対策と同時進行で検討されている各種の「社会保障改革」を含めて総合的に判断すれば、現政権はむしろ国民窮乏化策を展開していると言わざるを得ない内容だった。さっそく、この73兆円の中身を確認してみよう。この73兆円が実はスカスカの内容で、ふくらし粉で膨らませただけの「粉飾決済」である実態がすぐさま見て取れる。

 まず、このうちの半分弱の33兆円は民間資金だ。だから、普通の国であればこれを政府の経済対策規模を表現する際に使うことはない数字だ。ついては、それを差し引いた40兆円が政府の財政政策の規模ということになるが、このうち10兆円が「予備費」である。今、2次補正予算の10兆円が積み立てられているが、実際のところ、この約半分の約5兆円が未使用のまま放置されている。したがって、この3次補正予算の予備費10兆円が一体何に使われるのかが不明であるばかりか、すべて使われるのかどうかすら未確定の数値なのだ。

 つまり、政府の財政で支出が確定しているのはそれを差し引いた30兆円ということになる。しかし実は、このなかに財政投融資といって単なる「貸し付け」のオカネも入っている。この分は、貸し付けられた民間等はこれを事後的に返却しないといけなくなるから、いわゆる「真水」と呼ばれる「真の財政支出」とはまったく異なるものなのだ。よって、財政投融資として計画されているといわれる7.7兆円を差し引いた約22兆円が「真水」=真の財政支出額となる。

 では、この22兆円が全額補正予算なのかというと、どうやら違うようなのだ。本稿執筆時点ではまだ確定していないのだが、このうち3兆円程度が次年度当初予算のなかで執行される見込みもあるものだ。そして当初予算でその3兆円が使われるとするなら、実際、その約3兆円が全額「純増」されるのかどうか不透明なのだ。つまりその3兆円は、ただ単に「経済対策です」とレッテル張りされるだけで、実際には今回の政府決定がなくとも予算化されている可能性のある数字なのだ。そうなれば、それは経済対策でもなんでもないと言わざるを得ないものなのである。

 やはり今一番大切なのは、その2~3兆円を差し引いた19兆円が今、3次補正予算として執行される金額、つまりいわゆる「真の真水」ということになるのである。ここまで来れば、最初に耳にした73兆円という数字は一体何だったんだ、ということになるだろう。これこそ、先に「大きく見せかけるための粉飾決済」として73兆円という数字が言われているのだと解説さし上げた理由なのである。

権力者は国民を欺すための「粉飾決済」に手を染める

大阪都構想の「否決」を受けて会見する大阪維新の会の松井一郎・前代表(大阪市長)と吉村洋文・現代表(大阪府知事)
大阪都構想の「否決」を受けて会見する
大阪維新の会の松井一郎・前代表(大阪市長)と
吉村洋文・現代表(大阪府知事)

 ちなみにこの話をしていて思い出すのが、大阪都構想の際、維新の橋下氏らが主張していた「二重行政解消効果」だ。彼らは最初、「都構想をやって二重行政をやめれば、年間4,000億円ものカネが浮いてくる!」と言っていたのだが、よくよく中身を調べてみると、関係のない項目が山のようにあってすぐに年間1,000億円になった。そしてさらに調べると年間500億円を下回るようになって、最後には、年間数億円くらいしかない……ということになったのだ。「その話」と「この話」はそっくりだと言うこともできるだろう。

 要するに現在の菅内閣は橋下維新とまったく同じなのだ。政治的にアピールしたい数字を粉飾して大きく見せつけるけれども、中身をよくよく調べれば単なる見かけ倒しで、実体はそれよりももっと小さいものだった――というような、詐欺紛いのプロパガンダをやってのける手合いと言わざるを得ないのである。

 もちろん、この73兆円の経済対策をめぐる粉飾の度合いよりも、二重行政をめぐる橋下維新の粉飾のほうがよりむごいものであると言うことができるだろうが、程度の差こそあれ、やっていることを見れば、どちらも同じ穴の狢(むじな)なのだと言わざるを得ない。

(つづく)


<PROFILE>
藤井 聡

1968年生まれ、奈良県生駒市出身。京都大学工学部土木工学科卒。93年京都大学大学院工学研究科修士課程土木工学専攻修了。93年京都大学工学部助手、98年に京都大学博士(工学)取得。2000年京都大学大学院工学研究科助教授、02年東京工業大学大学院理工学研究科助教授、06年東京工業大学大学院理工学研究科教授を経て、09年に京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)教授に就任した。11年京都大学レジリエンス研究ユニット長、12年に京都大学理事補、内閣官房参与を歴任。『表現者クライテリオン』編集長。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年03月09日 13:00

【東日本大震災から10年(2)】福島第一原発事故から10年、放射性物質汚染の現状 公的除染終了後の問題(中)NEW!

 公的除染の問題点を考えてみよう。福島県のHPによると、除染の目標値は0.23μSv/hとなっている。これは、民間人の被曝限度量が年間1μSvで、時間あたりに直すと0...

2021年03月09日 11:31

飯塚市の「まち・ひと・しごと創生事業」に寄付~グッデイNEW!

 (株)グッデイ(福岡市博多区、柳瀬隆志社長)による福岡県飯塚市の「まち・ひと・しごと創生事業」に対する寄付金の贈呈式が8日、飯塚市役所で行われた...

2021年03月09日 10:19

【東日本大震災から10年(2)】福島第一原発事故から10年、放射性物質汚染の現状 公的除染終了後の問題(前)NEW!

 もうすぐ、3・11震災・原発事故から10年を迎える。この原稿では、東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の汚染がいまだに続く福島県中通りの現状を、私の徒歩...

2021年03月09日 10:19

【東日本大震災から10年(1)】宮城県で津波を経験、九死に一生を得るNEW!

 ゼオライト(株)の常務取締役・松井真二氏は2011年3月9日、フジパン仙台工場の水処理プラントの設置を行うため、河村恭輔名誉会長(当時・会長)と河村勝美会長(当時・...

2021年03月09日 10:00

ポスト・コロナ時代をどう生きるか?変化する国家・地域・企業・個人、そして技術の役割(6)NEW!

 『コロナは世界のパワーバランスが変わる引き金になり、米国、中国、ロシア、ベトナム、ミャンマーは混乱のなかで新しい権力構造を生みつつあります。個人の持つ感性やコミュニ...

2021年03月09日 09:15

【新・「電通公害」論】崩れ落ちる電通グループ~利権と縁故にまみれた「帝王」の凋落(4)NEW!

 クライアントに詐欺を働き、社の繁栄に貢献すべき若い有能な人材をも潰すような企業に未来はない。電通は大型スポーツイベントを次々と独占受注し、人々のマスコミ離れを食い止...

2021年03月09日 07:00

経営者が知っておくべき「人財」に投資するという考え方

 「人財」は、いつの時代も経営の根幹です。良い人財がいるかいないかで、経営は大きく変わってきます。では、どのように良い人財を得ればよいでしょうか?そこでは、従来の「人...

2021年03月09日 07:00

【八ッ場ダムを考える】群馬県は水没住民と どう向き合ってきたのか?(前)

 国直轄ダムの八ッ場ダムであるが、水没自治体である長野原町、その住民との交渉などを実質的に担ってきたのは、ダム受益者でもある群馬県だった。県は1993年、水没住民やダ...

2021年03月08日 17:55

加速する建設現場へのICT技術の導入、「i-Construction大賞」授賞式開催〜国土交通省

 国土交通省は5日、「i-Construction大賞」の授賞式をオンラインで開催した。同賞は、建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」に係る優れた...

2021年03月08日 17:44

アフターコロナの市民の心を癒す「パブリックアート」の大きな役割!(1)

 ニューヨークはアートの街として2つの点で有名である。1つは、ニューヨークには「メトロポリタン美術館(MET)」「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」など83もの美術...

pagetop