2024年03月28日( 木 )

ダイバーシティのまち 住吉・美野島がたどってきた歴史(2)

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中世 
3,000haの荘園保有、絶大な権力の筑前国一宮 

 先ほど紹介した住吉神社の話は、主に神代―いわゆる神話の時代のことだが、その後の奈良・平安期以降も、同神社は国家鎮護の神として尊崇され、重要な役割をはたしてきたという。国家に異変が起こるたびに、時の朝廷から住吉神社に奉幣使が立てられて禍乱の鎮定が祈願されたというが、国内の騒乱の場合は摂津国一之宮「住吉大社」だけだったのに対し、外寇ともなれば筑前国一宮「住吉神社」まで、はるばる勅使を立てて“敵国降伏”を祈願されたという。いかに時の朝廷から重用されていたかが、わかるだろう。 

 こうして平安末期の住吉神社は、広大な神域に加え、さらに広大な荘園を保有していたとされているが、その荘園の総面積たるや、およそ3,000町歩―現在の単位換算で約3,000haというから驚きだ。なお、これらを維持していくためには、神社としての権威だけでなく、武力も必要だったとされており、当時の住吉神社の神官を務めていた佐伯一族は、もともとは宮廷の警備・護衛を任とするような勇猛な家柄だったという。 

 ところが、1179(治承3)年に佐伯一族は捕えられ、伊豆や隠岐に流罪に処せられることになった。この理由については、社伝にも「故ありて」との記載があるだけで、その真相は定かではない。だが、九州・博多の地での日宋貿易の独占を目論んだ平家一門が、同地で絶大な既得権益を有し、対外貿易でも莫大な利益を得ていたと推察される住吉神社の存在を疎ましく思い、神官の一族を流罪に処したのではないか、という説もある。

 なお、平家一門はその後、源氏との争いに敗れて滅亡に追いやられていくことになるのだが、源氏方の源頼朝の下に、伊豆に流された住吉神社の神官・佐伯昌助の弟である住吉小太夫昌長という者が馳せ参じて祈祷などで加勢したという記録が、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」に記載されている。鎌倉幕府成立を住吉神社の神官が陰ながら支援した模様だが、これには平家一門に対する意趣返しの意味合いもあったのかもしれない。なお、平家滅亡後には佐伯一族の神官2人が住吉神社に復帰したほか、鎌倉幕府の御家人として奉行などの要職に就いたとされている。

ホテルトラッド博多 外観(えんHD)

 (株)えんホールディングス(以下、えんHD)は、資産運用型分譲賃貸マンション「エンクレスト」を住吉・美野島エリアで数多く供給してきた。「エンクレスト博多STYLE」(332戸)、「―博多PREMIER」(209戸)といった大型物件のほか、「―博多」「―博多Ⅱ」「―博多Ⅲ」「―博多LIBERTY」「―博多LEGEND」など、住吉エリアにはとくに多くのエンクレストマンションを供給。さらに20年5月、えんHDはこの住吉エリアに本社ビル「えん博多ビル」を新設し、グループ会社のオフィスを移転した。

 同年8月1日には、グループの新たなチャレンジとなる「ホテルトラッド博多」(客室数209)が本社ビル上層階に開業。敷地内の花壇や壁面緑化は、世界的庭園デザイナー・石原和幸氏が監修し、「チェルシー・ガーデン」と名付けられた。石原和幸氏は、「花は地元・福岡のものです。近くを歩く方だけでなく、周りのビルからも美しく見えるように配置しました」といい、100種類以上の植物が使用され、四季の変化によって印象が変わるつくりとなっている。 

 えんHDは19年から、福岡市が推進する「一人一花運動」に参画。チェルシー・ガーデンやホテル前の歩道花壇はもちろんのこと、福岡市中心部にある約110棟のエンクレストの植栽に花を咲かせて福岡市内を花でいっぱいにする活動として「366フラワーデイズプロジェクト」に取り組むほか、「一人一花運動」のパートナー花壇およびボランティア花壇にも登録している。

 「一人一花運動」の花壇プレート贈呈式で同社の原田透社長は、「福岡のまちづくりに長年携わらせていただいています。感謝の意味も込めて、福岡の方々が、花を見て少しでも幸せな気持ちになれば」と話していた。都市緑化および都市公園事業功労者として、同社ほか9社が選出され、20年10月に福岡市植物園で行われた表彰式にて表彰された。 

チェルシー・ガーデンの一部(えんHD)

(つづく) 

【坂田 憲治】

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