2024年04月18日( 木 )

【長期連載】ベスト電器 消滅への道(13)半世紀生きるために同社のケースに学ぶ

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 ユニード、寿屋、そしてベスト電器。「九州の覇者から全国へ」という野望を抱き、事業拡大に走ったが、いずれも惨憺たる結果に。没落していく企業にはそれなりの理由がある。ベスト電器が繰り広げた“ドラマ”を振り返る。

強欲をもたなければ半世紀の業歴は可能 

 遠い昔になるが、1980年代のころ、「業歴50周年企業」と耳にすると、「非常に由緒のある老舗企業」と尊敬の念を抱いたものである。照栄建設(株)の新春取材に行った際、富永社長が終了間際に何気なく、「当社も今年で50周年目を迎えることになる」と漏らした。「そうだ、設立が72年であった」と感慨にひたった。創業者・前畑一人氏が32歳の年齢で会社を興したのである。筆者は創業者とは77年からの付き合いになる。 

 同社は「理念を明確に掲げ」「お客本位」「時代の波動を的確につかむ」ことで福岡ゼネコン業界の一翼を担ってきた。無心、ひたむきな姿勢を50年間貫いてきた結果でもある。創業者の前畑氏は今年で82歳を迎えるが、同氏に対しては尊敬の念を抱くという以上に、同社が業界の一翼を担っていることに対して、これまでの姿勢からみて当然の結果だと納得している。長い間、この企業に関わってきているため、感無量ということもない。「強欲をもたずに原理原則に則った経営を貫徹すれば、半世紀生きることは容易」というのが筆者の企業観である。 

野望企業の挫折 

ベスト電器 野望をもって企業拡大を図ると、同業のライバルと必ず衝突する。そこで企業の優勝劣敗が明確になる。福岡・九州において敗北企業のドラマに数多く立ち会ってきた。一時、家電小売業界のトップに君臨してきたベスト電器がヤマダ電機の子会社となり、果ては完全に吸収され、法人としての痕跡が跡形もなくなった。なぜこうなったのか?創業者・北田光男氏が亡くなって以降、会社の悪しき体質・膿がすべて露呈されたためだ。 

 本来、「企業組織は永続化されるもの」であるが、「創業者北田氏の個人商店」であったため、本人が成仏すると企業組織もそれにともなって入水したのである。面白いドラマといえばそれまでであるが、野望に燃える経営者にとっては「明日は我が身か」と他人事ではなく、頭を悩ませる問題だ。しかし、謙虚な姿勢で学ぶ経営者は必ず危機を乗り切っていく。とはいえ、このような低姿勢の経営者は稀有である。 

 読者は今回のベスト電器のドラマに関するレポートを目にし、驚愕するのではないか。「組織がこれほどまでに腐っていたのか!これでは潰れるべきして潰れたようなものだ」と絶句するであろう。企業組織が腐りかけるスピードは非常に速い。ビックカメラはかつてベスト電器に対してM&Aの手を挙げたものの、ベスト電器の恥部を目の当たりにして、「こんな組織を相手にしていてはこちらまで悪影響を受ける」と危惧して手を引いた。 

 ベスト電器は最終的に全国制覇の野望に燃えるヤマダ電機の傘下となった。ビックカメラとの違いをもたらしたのは執着の度合いである。しかし、ヤマダ電機が永遠に常勝企業であるとは限らない。将来、企業戦争に敗北して淘汰されるリスクも待ち構えている。栄枯盛衰、平家物語とまではいえないにせよ、それが企業にとっての宿命である。 

 家電小売業界からスーパー・小売業界に目を転じてみよう。ユニード、博多寿屋の例のように、「九州の覇者から全国へ」という野望を抱いて事業戦線の拡大に走ったが、あえなく潰れてしまい、創業者一代で終わった。まさにベスト電器と共通点のある倒産劇である。大いに参考にしていただきたい。

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