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2021年02月24日 07:00

【コロナ下の流通業界特集(3)】スーパー20年史は倒産の歴史 「巣ごもり後」は再編必至

 流通業界の歴史は、倒産と事業撤退の歴史でもある。21世紀に入った2001年以降、多くの企業が経営破綻し、倒産しないまでも経営難から事業存続を断念した。超低金利で15年以降大型倒産はなくなったが、代わって勢力拡大を目指す大手スーパーによる経営難企業の買収が増えている。長期の売れ行き不振で青息吐息だった“ゾンビ企業”は巣ごもり消費で一息ついているものの、コロナ後には市場から退出を迫られる可能性が浮上する。

01年以降、破綻は約20件

 データ・マックスの調べによると、2001年以降民事再生法または会社更生法適用を申請したスーパーはマイカル九州、寿屋、02年にニコニコ堂、オレンジチェーングループ、06年石原商事、09年西原食品、11年ニューマルシンの7社。このうち、石原商事はダイエー出身社長に率いられ、経営難に陥った「なかの」を買収するなど北九州圏で一時は日の出の勢いだったが、過剰投資がたたってあっけなく倒産。ユアーズ・丸和連合がスポンサーとして支援に入ったが、両社はこれが命取りになる。

 自己破産または廃業、清算、任意整理は12件(負債総額1億円以上)だった。大半は中小スーパーで、民生法と違い支援企業による再建を最初から断念したケースだ。店舗の一部は同業他社が継承した。マックスバリュ九州による福岡県筑後地区のタイホー、麻生芳雄商事による同京築地区のアクトなどだ。

倒産減り、買収が増える

 民事再生法適用申請は11年1月筑豊地区のニューマルシン、自己破産は14年1月の近松ストアー(佐賀県)がそれぞれ最後。以後、現在まで法律に基づく「倒産」はない。

 代わって増えているのが大手・中堅企業による買収または事業継承だ。15年10月、イズミによるユアーズ支援を皮切りに、16年マルミヤストアによるオーケー、穴吹興産によるジョイフルサン・グループ、18年大和によるクッキー、大黒天物産によるマミーズと、すべて会社を倒産させることなく、支援企業が店舗と従業員の大半を受け継いだ。

 背景には、超低金利の長期化で資金繰りに窮することが減り、余裕のあるうちに事業継続に見切りを付ける方が得策とのオーナー経営者の判断がある。事業拡大を目指す中堅・大手企業との思惑が一致した。

 マックスバリュ九州(現・イオン九州)が13年に買収したクリエイトは佐賀県で10店を展開していたが、営業損益は赤字続きで、破綻前に身売りを決断した。マックスバリュ九州はクリエイトが生鮮に強いことに着目し、旧クリエイト店をトライアルカンパニーやダイレックスと対抗するためディスカウント(DS)業態「ザ・ビッグ」に転換させた。

 イズミは熊本県の西紅、広栄に続きスーパー大栄、ユアーズを傘下に収めた。「ゆめタウン」の新設が難しくなったことから、大型店につぐ業態として食品スーパーを育成するのが狙いだった。スーパー大栄は福証上場企業だったが、業績悪化が深刻化する前に身売りを決断した。

 マルミヤによるオーケー支援は、大分県内でシェア拡大を目指すマルミヤと、競争激化で先行きは厳しくなると見たオーケー経営者の考えが合致した。マルミヤは新規出店に頼らず一気に売上を拡大、仕入・物流を統合することで買収会社の早期黒字化をはたした。M&Aの成功した事例といえる。

 大黒天物産がマミーズを買収したのは、九州で一気に店舗網を拡張するため。マミーズは、福岡県魚市場が新規事業進出のため破綻したオレンジチェーン本部の店舗を継承して発足した。店舗買収を繰り返しながら売上を拡大したが、ほとんど赤字続きだった。従業員の雇用を維持することを条件に格安価格で事業を譲渡したと見られる。大黒天は九州で4店だったが、時間をかけずに22店を手に入れた。

 20年11月、米ウォルマートが西友の株式の85%を米投資ファンドのKKRと楽天に譲渡し、西友の経営から撤退を決めた。経営権を握ってから14年、西友の業績は低迷したままで今後の好転も望めないと判断した。米国流のやり方が日本市場から退出させられた。

ゾンビ企業は整理淘汰へ

 買収がうまくいってないケースもある。大和は同じ鹿児島県北薩地方が地盤のクッキーを傘下に入れたが、かえってグループ内競合を激化させた。大和の20年2月期の売上高は140億円と前期比3%減少、最終利益は前期の6,100万円の黒字から9,200万円の赤字に沈んだ。会社売却前に40億円を売り上げていたクッキーの業績は不明。地元業界関係者は「大和が積極的に引き受けたというよりも、両社に融資している銀行に押し付けられた」と内実を話す。

 19年アスタラビスタが4店舗を買収した祐徳自動車の場合は、主力のホームセンターに集中したい祐徳と、佐賀県で勢力拡大を目指すアスタラの狙いが一致した。

 九州では複数店舗を展開する地元資本のSMが60社強あると見られる。ドラッグストアやDSとの競争で業績が低迷し、経営体力をすり減らしている中堅中小企業が少なくない。過大投資をしてこなかったことと、さらに超低金利日銭商売のため持ちこたえているのが実情だ。巣ごもり消費で売上が好転し、当面、経営難の表面化は遠のいた。とはいえ、コロナ禍はいつかは終わる。市場縮小でプレーヤーを減らそうとする市場原理が働き、これらゾンビ企業の整理淘汰は避けられない。

(つづく)

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