2024年04月24日( 水 )

鎌倉・空き家再生ファンドで住民参加型のまちづくり(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

空き家化を防ぐ新築

スケルトンハウス(森戸川ヴィレッジ)

 人が長く住み続けられる家を目指して、新築の設計にも工夫を凝らす。中古住宅市場はまだ成熟していないため、新築からも空き家の解決策を探っているのだ。何世代も住み続けられるようにするために、建物の耐久性も大切だが、松島氏がとくに注目しているのは家の使いやすさだ。設計時は今の家族構成やライフスタイルを基につくるが、将来のことは現時点での「想定」でしかない。先々、家族や子孫、また自宅を売却した場合に次の住み手がどう使うのかは、そのときにならないとわからない。さらに、人生には「想定外」の出来事も起こる。たとえば50年後にも住みたい家と思われるためには、将来の住み手がライフスタイルに合わせて自由に内装をつくり変えられることも解決策になるだろう。

 その1つが「スケルトンハウス」だ。外観は四角形のレッドシダー張りで、流行に関係なく使いやすい普遍的なデザイン。建物のなかを空洞にして、シンプルで頑丈な木造2階建ての建物を骨格(スケルトン)のみでつくることで、間取りや仕上げ、設備などの内装を住み手の好みに仕上げられる。住み替え時には、内装を空の状態にリセットして引きわたせるので、家族構成やライフスタイルが前の住み手と大きく違っても、すべてつくり変えることができる。

 松島氏は「こまめに手入れをすれば、構造上、最低でも50年は住める家を目指している」と話す。坪単価は税別55万円、経年変化が味わいとなる住宅のニーズがある鎌倉エリアなどに施工事例があり、築20~30年が経ってもヴィンテージとして価値を下げずに購入してもらえる家にしたいという。

スケルトンハウス外観
スケルトンハウス外観
スケルトンハウス内観

 また、松島氏は「スケルトンハウスでは、施主がコンセプトや間取りを『家づくりノート』というツールで設計するので、建てるプロセスから施主に楽しんでもらえる。施主が自ら家づくりに関わり家族で議論することで、一緒に建てたという実感が得られ、『自分たちの家』と深い愛着が湧くようになる」と話す。自宅を長く大切に使ってもらうことで、優良な住宅のストックを増やし、さらに中古住宅市場の活性化も目指している。

 

(了)

【石井 ゆかり】

(中)

関連記事