2024年04月25日( 木 )

【まちの特徴探訪】福岡西のベイエリア・小戸(前)

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小戸のエリア特性はレジャースポット

(左)マリノアシティ福岡/(右)コーナンめいのはま店

 福岡市西区小戸(おど)――JRと福岡市地下鉄の中継駅・姪浜駅を最寄り駅とする同エリアは、姪浜と一体的に見られることが多いが、エリアの特色は異なっている。姪浜駅を中心とする姪浜エリアは、西区役所などの行政機能に加え、ディスカウントストアや書店、飲食店などが集約された商業施設「ウエストコート姪浜」などが集積しており、生活利便性に優れた居住区といえ、マンションやビルが林立している。

 一方の小戸エリアも、ホームセンター「コーナンめいのはま店」やスーパーマーケット「フードウェイ小戸店」などの商業施設が充実しており、生活拠点として周辺環境は申し分ない水準にある。しかし、今津湾や博多湾に面し、福岡市立ヨットハーバーや、バスケットゴールなどの遊具にバーベキュー広場も備える小戸公園、九州最大級のアウトレットモール「マリノアシティ福岡」などを内包していることから、どちらかというと、レジャースポットとしての印象のほうが強いだろう。

(左)福岡市立ヨットハーバー/(右)小戸公園エントランス

 コロナ禍の影響はあるものの、ヨットでのクルージングや釣りなど、身近で手軽にマリンレジャーを楽しみたいという需要を満たすエリア特性から、市外はもちろん、海外から足を運ぶ人も少なくない。福岡市中心部と、観光地として人気の糸島市の中間点という立地も、小戸エリアへの“ついで訪問”を促進しているものと考えられる。

 また、小戸エリアは姪浜だけでなく、日本三大愛宕としても知られる「愛宕神社」でお馴染みの愛宕エリアや、マリナタウン海浜公園などがある愛宕浜エリアとも近く、周辺エリアとともに醸成される山の緑と海の青がもたらす開放的なイメージは、住民はもちろん、訪れた人に“非日常感”を与えることに一役買っている。

(左)マリナ通り(マリナタウン付近)/(右)小戸公園から臨む可也山(糸島)

ボタ山を埋め立て利用、産業遺講の活用が転機に

煌びやかなイメージが先行する小戸エリアだが、その歴史を遡ると神話が色濃く反映された土地だとわかる。

小戸公園内に鎮座する「小戸大神宮」。
1725(享保10)年に、
福岡藩6代藩主・黒田継高によって
社殿が建立された

 地名の小戸とは、波風で山肌が削られてできた谷間を指す「小門(おと)」が由来となっているとされる。神代には、神々の父神である伊弉諾尊(イザナギノミコト)が、この小戸の憶ヶ原で禊祓を行ったことで、天照皇大神、月読命、須佐之命、綿津見三神、住吉三神などが誕生したとされ、神々の誕生の地だともいわれている(諸説あり)。

 神話の地としての背景を持つ小戸エリアが近代的な発展を遂げる契機となったのが、大正時代における石炭産業の勃興だ。姪浜では、1914年に石炭の採掘が始まった。採掘現場の「早良炭鉱」(姪浜炭鉱、小戸~豊浜エリア)は海に近く、船舶による石炭の運送も可能な好立地。石炭の質も良かったため、石炭産業が姪浜の基幹産業となるのに、さほど時間はかからなかった。

 採掘現場だった小戸エリアは、石炭採掘時に発生する捨石(ボタ)の集積場・ボタ山でもあった。小戸大神宮側にあったボタ山は炭鉱閉山後に取り崩され、海の埋め立てに利用された。小戸エリアは、産業遺講であるボタ山を活用することで、海上に開発可能区域を生み出したのだ。

江戸時代に描かれた小戸大神宮憶ヶ原
(姪友会「郷土写真集2002年姪浜とその周辺」より抜粋)

(つづく)

【代 源太朗】

(後)

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