2024年04月26日( 金 )

【佐賀】福岡ソノリクが農業ベンチャーとタッグ 産直卸売事業を支援

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 青果物輸送大手の福岡ソノリク(佐賀県鳥栖市)と東証マザーズ上場ベンチャーの農業総合研究所(和歌山市)は5月1日、神戸市に物流拠点「神戸センター」を開設する。

福岡ソノリク本社
佐賀県が2006年4月に分譲を始めた
鳥栖流通業務団地内の福岡ソノリク本社。
進出第1号となった(鳥栖市姫方町)

 福岡ソノリクは、青果物に特化した運送業と特許冷蔵施設を生かした倉庫業で大阪府以西の西日本エリア最大手。農総研は、全国の生産者の青果物を都市圏の小売店で販売する「農家の直売所」という仕組みをつくった。

 仕組みはこうだ。生産者は農総研に登録して、農総研が設置した集荷場に青果物を持ち込む。生産者は自分で青果物の販売価格を付け、農総研と契約した小売店のなかから販売先を選ぶ。青果物は運送会社が運び、翌日には希望した小売店の店頭に並ぶ。「農家の直売所」の登録生産者は1万人弱、小売店はスーパーを中心に1,800店に上り、急成長を続けている。

 20年10月、農総研は官民ファンドの農林漁業成長産業化支援機構、JR東日本、福岡ソノリクの3社を引き受け先とする新たな株式を発行、資本業務提携を結んだ。福岡ソノリクは、神戸市の摩耶埠頭に関西物流センターと関西営業所を所有する。このうち関西物流センターは5階建て。1階は包装、2階は加工、4階は特許冷蔵、5階はCA(空気調整)冷蔵の機能がある。農総研は、このセンター内に既存の摂津センター(大阪府摂津市)の機能を移転して拡大。同社初の荷さばき・保管・包装・加工を一体化した「神戸センター」を置く。

福岡ソノリク パックセンター
本社近くのパックセンター。
青果物を長期保管できる冷蔵施設を備える
(鳥栖市飯田町)

 農総研の契約小売店のうち40%近くが関西エリアに立地し、関西は関東と並ぶ“稼ぎ頭”。神戸センターのオープン後は、福岡ソノリクが開発した特許冷蔵施設での適温管理が可能になり、既存センターとの比較で取扱量は倍増する見込みという。

 特許冷蔵施設は、青果物が発生する「エチレンガス」が空気よりも軽いことに着目。換気扇を使って施設外に排出する一方で、超音波加湿器を用いて温度を一定に保って保管する。この技術によって、糖度の高い鹿児島特産「安納芋」を1年間保管することに成功し、脚光を浴びた。

 「私たちは青果物の運送と適温保管が仕事。青果物を調達し、消費者に販売するのはあくまで農総研」と園田壽俊・福岡ソノリク社長。ただし今後、農総研は販売方法の主流を小売店への委託販売から“産直卸売”に切り替えるという。

 そうなると、生産者から農総研が直接買い取って小売店に卸す方法によって利幅が拡大する半面、リスクも大きくなる。その結果、青果物に対する目利きと保管が今以上に求められるようになり、九州の青果物市場に精通する福岡ソノリクの役割が高まりそうだ。

【南里 秀之】

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