大分ならではの賃貸マンション企画「ちょうどいいマンション」とは（後）

「暮らしやすさ」念頭に大分のエリア特性を生かす

　――主なマンション供給エリアである大分市や別府市は県の中核都市ですが、人口は減少傾向にあります。そのような市場で賃貸住宅を供給していく際に、気をつけていることは何でしょうか。

　橋住　県内すべての賃貸物件を分母にすると、入居の確保は難しいように見えます。ですが、当社が企画または管理する物件の入居者は20～30代が多く、そうした年代の方からは、「豪華でなくてもいいけど、管理の行き届いたきれいなところに住みたい」といった要望が聞かれます。そこまで掘り下げて見ていくと、必ずしも人口減が与える影響は大きくないと見ることもできます。

　また、大分での移動手段は自動車がメインです。こういった地域性に合わせて、当社の企画物件では駐車場附置率が単身ないしDINKS向けで100％、ファミリータイプでは150～200％で計画しています。広めの間取り、駐車場100％以上といった物件は大分には少なく、当社が企画する物件の強みとなっています。

　当社はこれまで、供給する物件の多くが大分市内でした。別府市では、昨年10月に完成した「DAG Avanti」（別府市石垣東、全20戸）が第1号物件となりました。別府市は平地が少ない観光のまちで、土地の確保は難しく、家賃は大分市よりも高い傾向にあります。なかでも商業地の石垣東は人気のエリアですが、縁あって企画することができました。現在も石垣東で企画中の物件が2件ありますが、希少なエリアだからこそ、「暮らしやすさ」を意識した入居率目線の物件をつくらねばと身が引き締まる思いです。

持続可能な成長へ、後進育成にも注力

　――今後の目標をお聞かせください。

　橋住　当社は5年後、売上高20億円を目標にしています。目標達成のためには、確実な成長が必要です。そのためには、継続できる組織づくりが欠かせません。

　そのため、次の世代を育てることを中期的な課題として、全社員に共有しています。スーパー営業マンが入ってきて、勝手に売上をつくってくれるはずもない、だったらスーパー営業マンを育てればいい。現場監督も、事業を拡大させるためには将来性のある若者の人材育成に投資していかなければいけません。そのためには、管理職の前向きな意識改革が必要ですし、後輩を育てていくなかで自信をつけていくことも必要です。

　私が社長に就いてから、社名を浸透させるために冊子やテレビCMなどあらゆる方法で宣伝を繰り返しました。建築中の足場にも「入居者募集中」「満室御礼」など大きな懸垂幕を設置するなどし、その甲斐あって、不動産会社から土地の紹介や、情報も入ってくるようになって良い流れができてきました。

　変化の対象はすべてのことだと思っています。今まで以上のサービスと魅力向上のために、今後も社員皆で力を合わせて、5年後以降も、安定して20億円以上の売上高を計上できる会社に育てていきます。

ジェイ･スペース幹部に聞く、M&Aの前と後

常務取締役　神田 哲也 氏

　橋住社長がトップとして会社の目指す方向性を明確にしたことで、私自身の役割や立ち位置が鮮明になり、営業部に対しても、各部署間のリレーションにおいてもブレることなく指揮を執れるようになりました。社長の呼びかけで、会議室に全社員でつくった社是を掲げ、それを毎日目にすることにより、会社の存在意義や経営理念が浸透し、組織の一体感が醸成されたと感じています。日常的にも、事務所の内装を一新したり、報告だけに終始していた朝礼が課題や問題点を精査できるものになったことで、社員の士気が高まったり、見るからに会社が明るくなりました。

営業部・部長　高原 洋一郎 氏

　橋住社長が就任して、一番印象に残っていることは、「今から皆で一緒に社是をつくろう」と言って『7つの習慣（スティーブン.R.コヴィー著）』を全社員に配ってくれたことです。社長は自身の人生観を押し付けることをせず、個人の思いはそれぞれ違うけど、何をもって幸せとするか考える機会を与えてくれました。営業では裁量が増えたことで、仕事の幅が広がり、部署間の連携が必要になりましたが、考察を重ねることを課したことで、「こうしたほうがいいんじゃないか」といったアイデアもボトムアップで出てくるようになりましたし、組織として成長しているのを肌で感じることができています。

（了）

【松本　悠子】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：橋住　柾風
所在地：大分市萩原1-17-9
設　立：2003年4月
資本金：3,700万円
ＴＥＬ：097-585-5522
ＵＲＬ：https://jey-space.com