「業界の安売り体質を変えたい」社員がリードする関家具経営の心得(前)
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(株)関家具 代表取締役 関 文彦 氏
みやき町と包括連携協定を締結
――佐賀県みやき町と2021年1月、包括連携協定を締結されました。こちらの経緯についてお聞かせください。
関 みやき町では「女子サッカーのまち宣言」を行うなど、幅広くまちづくりに取り組まれており、元気のある自治体という印象をもっていました。そうしたなかで、昨年秋ごろにみやき町の皆さんが来社されたことがきっかけとなり、包括連携協定を締結する運びとなりました。当社では地元・大川市をはじめ、ソフトバンクホークスやサガン鳥栖など、幅広く支援を行っていますが、社員を連携先の自治体に派遣させるかたちでプロジェクトを進めるのは、当社にとっても初めての試みになります。
【協定の取り組み内容】
(1)木のぬくもり、ウッドセラピー®を活用した木育での人材育成、健幸(けんこう)長寿のまちづくりに関する事業
(2)みやき町産木材を活用したオリジナル商品、ふるさと納税返礼品の開発に関する事業
(3)女子サッカーのまち宣言にともなう、スポーツを通じたまちづくりの推進に関する事業
(4)そのほかの地域活性化・地域産業振興に関する事業今回の包括連携協定は、みやき町のまちづくりに対する熱意を受け、私たちとしても何かお手伝いできればとの思いから動き出した取り組みでもあります。当社社員とみやき町職員の皆さんが手を取り合うなかで、相乗効果を発揮することを期待しています。
――取り組みのなかで気になるのが、ウッドセラピー®です。これは具体的にどのようなものなのでしょうか。
関 木は人の心を優しく、温かい気持ちにさせる効果があり、私たちはそれをウッドセラピー®としております。今回のウッドセラピー®は、木の温もりを生かした教育の実施です。私は、急速に進む技術革新のなかで、日本だけが世界から取り残されているような感覚を覚えています。そのなかで、世界との差を縮めるために今必要なのは、教育だと考えました。そして、家具の総合商社として、教育の部分で何かできることはないかと思案を続け、たどり着いたのがウッドセラピー®を含む「木育(もくいく)」だったのです。
私は教育者ではありませんが、教員免許2級をもっています。1級を目指した時期もありました。ペーパードライバーならぬペーパーティーチャーですが、教育に対する思いは少なからず残っています。そして、当社には木工技術者もいます。プロによる木材の確保から実際の家具づくりまでを通して、みやき町の子どもたちに授業というかたちで木工の楽しさを伝えていきたいですね。また、合わせてみやき町に当社の製品を展示させてもらうことで、みやき町の皆さんに木の温もりに触れていただく機会を提供できればと考えています。
――みやき町との包括連携協定だけでなく、これまでにも御社はさまざまな取り組みに挑戦されています。
関 私は「関家具経営の心得13か条」を掲げ、これを基に経営を続けています。そして、第10条は次のように定めました。『楽しくなければ仕事じゃない、やりたい事を任す、失敗しても文句は言わぬ、責任は全て社長が取るから思いっ切りやってください』。
1つ例を挙げましょう。東京の青山に出店したいと、社員が提案してきたことがありました。家賃だけを考えても、採算を取るのはかなり厳しいと思いましたが、承諾しました。当時社員からは「1年猶予をください」と頼まれていましたが、あれからもう10年になります。今では「アトリエ木馬青山プレミアムギャラリー」は、東京エリアにおける主力店舗の1つとなっています。
東京だけではありません。横浜・みなとみらい、名古屋・栄、大阪・なんばなど、現在の主要店舗は企画から交渉、そして開業に至るまで、100%社員の手によるものです。自分たちでやろうと、能動的に動ける社員がいてくれる。これは、非常に喜ばしいことです。
――社内の教育体制が、効果を発揮しているということなのでしょうか。
関 私は「関家具経営の心得13か条」を徹底しているだけです。第11条にはこうあります。『社員の皆さんは社長の先生、社員からの情報及び意見及び提案は会社繁栄の源』。現場のことに関しては、やはり社員が一番理解していますので、信じて任せるのが間違いないのかなと思います。自分が企画したものと上から指示されたものでは、仕事に対するモチベーションも雲泥の差ですから。
当社は創業54年目を迎えました。社員の自主性に任せ始めたのは、創業30年目ごろからだったと記憶しています。きっかけは、とある講演会に参加した際に聞いた「これからはティーチングの時代じゃない、コーチングの時代だ」という言葉でした。やり方をすべて教えるのではなく、本人に気づかせることが重要であるという考え方は納得のいくもので、以降、経営方針に取り入れています。
(つづく)
【聞き手:内山 義之/文:代 源太朗】
<プロフィール>
1942年4月、大川市出身。家具屋に勤めながら68年に福岡大学商学部を卒業後、家具卸の関家具を個人創業。82年11月に(株)関家具として法人化した。
<COMPANY INFORMATION>
(株) 関家具
代 表:関 文彦
所在地:福岡県大川市幡保201-1
創 業:1968年
設 立:1982年11月
資本金:1億4,000万円
URL:https://www.sekikagu.co.jp月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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