2024年04月17日( 水 )

来春、青果市場跡地再開発が完了「博多SOUTH」はどう変わるか!?(4)

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戦後復興からの発展、そして旧・青果市場の閉場へ

 終戦後、席田飛行場は米軍によって接収され、在日米軍板付基地(板付飛行場)となった。朝鮮戦争が勃発した際には、日本国内における最前線基地として、同基地から朝鮮半島に向けて米軍の航空機が出撃していったとされる。その後、米軍の管理下で民間航空も共同利用して福岡~東京線などが就航したが、70年12月に日米安全保障協議委員会おいて米軍管理の飛行場の整理統合計画が承認され、板付飛行場の返還および運輸省への移管が決定。72年4月から福岡空港として供用を開始した。

 戦後の復興期にかけては、福岡市と交通・産業・経済の面で同一圏内にある立地から、主に住宅地としての開発が進行。とくに竹下駅を中心とした地域には工場や商店街などが立地し、ある程度の都市的形態を整えていたとされる。また、都市計画上での博多駅の現在地移転にともなう南部発展の拠点として、博多SOUTHは重要な地域として位置づけられていたようだ。55年4月には那珂町が福岡市に編入。72年4月の福岡市の政令指定都市への移行にともなって、博多区に組み込まれた。

 高度成長期にかけては、エリア内を南北に縦走する幹線道路である「筑紫通り」の沿線を中心に開発が進行していった。現在、跡地再開発の真っ最中である青果市場も、68年9月に福岡市中央卸売市場・長浜本場の青果部から移転・開場して業務を開始。青果市場の周辺には関連する卸業者の営業所などのほか、めんたい工場や牛乳工場なども集積していった。

フォレオ博多
フォレオ博多

 その後もエリア内の都市開発は進み、94年4月に福岡高速2号線が、2003年5月に福岡高速5号線(都市高)の月隈JCT~板付出入口間が供用開始されると、交通アクセス面の利便性はさらに向上した。08年3月には東那珂1丁目に複合商業施設「クイズモール博多」がオープン。同施設は10年10月に「フォレオ博多」と改称し、ルミエールなどを核テナントに地域の生活利便性向上に一役買っている。

 そうしたなか、エリア内で一際存在感を放っていた旧・青果市場が、老朽化や狭隘化、温度管理施設の不足などを理由に、アイランドシティの新青果市場「ベジフルスタジアム」への移転・統合が決定。16年2月をもって旧青果市場は閉場を迎え、その後の跡地再開発の動きを抱えながら、博多SOUTHは現在に至っている。

商業施設開業を控えマンション開発ラッシュ

 青果市場跡地再開発における来春の商業施設開業を控えて、博多SOUTHでは現在、新築分譲マンションの開発ラッシュの様相を呈している。

「アルファステイツ東那珂」建設予定地
「アルファステイツ東那珂」建設予定地

 近接地の那珂6丁目では、大和ハウス工業(株)がRC造地上14階、総戸数183戸の「ブライトクロス博多」の建設を進めている。竣工は22年10月下旬の予定。また、東那珂1丁目の前出のフォレオ博多の隣接地では、穴吹興産(株)が「アルファステイツ東那珂」(RC造地上14階、総戸数91戸、22年9月下旬竣工予定)を、その隣には(株)ファミリーが「ファーネスト博多レヴィア」(RC造地上11階、総戸数81戸、22年5月下旬竣工予定)の開発をそれぞれ進めている。さらに、(株)タイヘイの「サングレート博多イーエックス」(板付5丁目、RC造地上9階、総戸数57戸、22年3月下旬竣工予定)や、(株)クレ・コーポレーションの「博多グランミライプロジェクト」(竹下4丁目、RC造地上14階・地下1階、総戸数169戸、23年5月下旬竣工予定)など、錚々たる規模の新築分譲マンションが目白押しだ。これらのどの物件も謳い文句として一様に打ち出しているのは、博多駅や福岡空港に近いという交通利便性の良さと、来春に商業施設が開業することによるエリアの魅力&生活利便性向上の効果だ。

「ファーネスト博多レヴィア」建設予定地
「ファーネスト博多レヴィア」建設予定地

 だが、エリア内には大型の公園や緑が少なく、現状の環境や景観面では、決して優れているとはいえない。施設屋上などに多彩な緑の空間を備えた商業施設の開業により、幾分かは環境・景観面の向上が期待できるにしても、それだけではエリア全体を賄うには不十分だ。優れたポテンシャルを秘めているエリアだけに、これらの課題をいかに解決していくかが、将来に向けた持続的な発展性を大きく左右してくるだろう。今後、来春の商業施設開業が起爆剤となって周辺のさらなる再開発を促し、博多SOUTHが良い方向に変貌を遂げていくことを期待したい。

(了)

【坂田 憲治】

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