2024年05月04日( 土 )

(続報)住友林業~自作自演で墓穴を掘る~契約解除へ!(4)

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 Net IB Newsでは、東京都内在住のA氏の住宅建設に関する問題「住友林業、見積書の詳細を開示せず不誠実な契約」で発信したが、今回は、住友林業の自作自演により、A氏からの契約解除に至った顛末を紹介する。

 契約解除をしても、着手した「解体工事」と「設計料」については、それまでの成果についてA氏も利益を受けることから、清算することは当然であろう。

 清算の考え方は、
(1)住友林業が解除までに支払った(予定を含む)実費で清算するか。
(2)内訳書で具体的な出来高(金額ベース)の割合を算定し清算するか。
 のいずれかである。

 (1)の実費精算では、算出根拠が不明確であり、A氏が次の業者に依頼した際に、住友林業との契約金額大きく上回る恐れがある。上回った金額については損害賠償請求できるようであるが、確定までに時間がかかり面倒である。裁判所はこの点について、(2)の「出来高割合方式での算定が採用されることが多い」と述べているが、(1)の実費清算を否定してはいない(『Q&A建築訴訟の実務』261頁、新日本法規出版)。

 住友林業は、「解体工事」と「設計料」について実費清算で金額算定している。「設計料」の実費は、出来高100%で算出しており、実費がそれだけ(あるいは、それ以上)かかったとの意思表示であろうが、A氏は設計検討図レベルの図面しか受け取っておらず、実費清算の不合理さが如実に表れている。契約書の重要事項説明書にある「作成する図書の種類」が完成し、それを受け取った時点で出来高100%である。

 A氏の住宅は 一般的な住宅と比べれば大型物件であるが、打合せを通じて、設計の与条件の整理から図面化するまで、住友林業の設計力の稚拙さを感じる。    

 4月26日、住友林業から請負約款第26条に基づく「解約精算金額」なる書面が届いた(資料(E)参照)。

 その内容は、    
・着手した「解体工事」と「設計料」の実費清算に関するもの。
・工事請負契約約款に基づく「計画図など作成費用」で構成されている。

資料(E)
資料(E)

 都甲建築士兄弟は、(2)の出来高割合方式での算定を提案している。この方式であれば、残りの部分を足しても契約金額を上回ることがない。資料(E)は、住友林業が都甲建築士兄弟から論理的に提案を受けたことを基に、資料(A)を改変したものであるが、問題は、「計画図など作成費用」である。契約約款には、「総請負額(消費税別)に対する1.5%」とあり、当初契約の5億円に当てはめると750万円になる。「計画図など作成費用」とは何であろうか。設計料に含まれているのではないか。

 かつて、住友林業は「営業経費」と称していたが、認定NPO法人消費者機構日本から2016年2月に契約約款の改善要請を受けて、文言を変えた。まだ「営業経費」のほうが、漠然としていても理解しやすい。当初の契約金額である5億円は、住友林業も認めている通り、内容も根拠もない仮の金額である。住友林業に計画から設計・施工までを依頼するのみの包括的な契約にすぎない。未確定ではあるが、多めの金額を設定しているのみである。

 A氏はその後、住友林業と(ア)「解体工事合意書」、(イ)「(解体工事、地盤改良工事の減額変更に関する)覚書」、(ウ)「(一部外構工事に関する)先行工事合意書」(エ)「(請負代金の支払い方法について変更する)覚書」と進行に従って、部分の内容・費用を確定させた「合意書」・「覚書」といった2段階目の契約を締結している。契約解除していなければ、次は、請負金額のほとんどを占める本体工事の(オ)「建築着工合意書」を契約締結する予定であった。

 「解体工事」と「設計料」については契約解除にともない、出来高清算することから、本体工事はまだ未契約と考えざるを得ず、総工事費そのものが確定していない。「総請負額」を根拠のない5億円を基礎として清算することはできない。

 以上のように、都甲建築士兄弟により、解体工事についても、住友林業の自作自演の暴挙が解明された。素人相手に金目当ての組織的な行動と受け止められても仕方ない。さらに技術力の低さにも驚かされた。

 住友林業は、「新たな構築物」騒動で決定的な墓穴を掘ってしまった。それまでの一連の不誠実さと合わせて、どう始末をつけるのであろう。    A氏の被った精神的苦痛は察しても余りあるものがある。A氏は、都甲建築士兄弟の技術的な観点での適切な助言により、自身が被っていた被害の大きさを再認識して、早い段階での契約解除ができて良かったと感じている。また、世間の消費者に向けても、住友林業のような大手企業から、同様の被害に合わないことを切に願っている。

 住友林業は、解約精算の前に、まず、“謝罪”すべきである。当初の契約通りに進んでいれば、5月には完成予定であった。

 A氏は、以下のように語っている。

 今回、私の住宅の新築において、住友林業を信頼して契約を結びましたが、私の信頼は大きく裏切られる結果となり、大きなショックを受けました。私が建築に関してまったくの素人であったため、途中から専門家の力を借りたことにより、住友林業の不誠実な問題点が次々に暴露されました。同様のことは、大なり小なり全国で起きていると思います。

 建築の専門知識を持たない多くの消費者は、ハウスメーカーに巧みに騙されているという認識もないまま、支払う必要のない金額まで搾取されている事例は多いと思います。ハウスメーカーには大いに反省していただきたいと思います。

 住宅は人生で最も大きな買い物です。私は今回の経験から、住宅の建設や購入を予定されている消費者に、少しでもおかしいと感じたら、建築士や弁護士に相談をされることをお勧めします。

 今後、A氏と住友林業との間で契約解除後の精算について話し合いが行われる予定であるが、これまでの住友林業の不誠実な対応を見る限り、誠実な対応は期待できそうにない。住友林業の対応にA氏が納得をしない場合、訴訟に発展することも考えられるため、今後の経過に注目したい。

(了)

【桑野 健介】

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