2024年03月29日( 金 )

【凡学一生の優しい法律学】民間学術研究団体のお粗末な憲法論(前)

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1.問題の所在

 米国のマーク・ラムザイヤー教授の「従軍慰安婦≠性奴隷」説に対する韓国と中国からの批判論に対して、民間団体「国際歴史論戦研究所」(杉原誠四郎会長)は「学問の自由に対する不当な圧力である」にもかかわらず、日本学術会議が不当に沈黙しているとして、同会議に対して公開質問書を提出した。

2.基本的人権のお粗末な理解

 日本国憲法は国民に「学問の自由」を保障している。しかし、この基本的人権は無制限に許されるものではなく、法律による制約があることは誰もが理解していよう。

 歴史的事実に対して学問的評価を表す時には、その歴史的事実が客観的に定まった事実でなければ、学問的評価の対象にならない。韓国や中国がその存在を主張する「従軍慰安婦」が存在したかどうか、また、その女性接客業の具体的な内容に関する「事実認識」が論争の的になっているため、その評価も対立しており、客観的な証拠に欠ける。このような場合に見解を表すことは、「言論の自由」の範囲であり、「学問の自由」ではない。

 韓国や中国の批判が客観的な証拠に基づくものであれば、ラムザイヤー教授の論説はその時点で客観的な証拠に反する学説として排斥され、この問題自体収束する。また、韓国や中国の批判が、客観的な証拠に基づいたものでなければ、政治的主張の対立における「反対論」であり、それが妥当であるかどうかを誰も決めることはできない。

 戦時中には、日本人の接客婦も韓国人の接客婦も存在したとみられ、韓国人の接客婦のみが、性奴隷の境遇にあったとする客観的証拠は何もない。そのため、戦時下の接客婦が奴隷的な地位にあり、それが日本軍(日本国)の主導で行われたと認定するには、証拠が不足しており、そのような主張は言論の自由の範囲に属する政治的主張にとどまる。

3.日本学術会議の立場は正しい

 日本学術会議では、歴史認識に基づく学問的見解は、その分野の学者の総意に基づき、日本学術会議の見解として総会の決議を経て公表する。しかし、前述のように、従軍慰安婦問題は、確定した客観的証拠がなく、歴史的事実に対する政治的見解の対立であるため、学問の対象とはいえない。そのため、日本学術会議の社会科学部門で見解が出されたとしても、日本学術会議全体として統一した見解を表明することはできない。

(つづく)

(後)

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