2024年05月04日( 土 )

【企業研究】2032年に3,000店舗・売上高3兆円 ニトリの野望実現に向けた道のり(前)

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ニトリ 店舗

 ニトリホールディングスの2021年2月期は売上高が前期比11.6%増の7,169億円、営業利益が28.1%増の1,377億円となり、34期連続で増収増益を達成し、営業利益率も19.2%と高い水準を維持した。32年には3,000店舗・売上高3兆円という遠大な目標を掲げているが、その実現に向けて新たな動きを活発化させている。

3,000店舗・3兆円の実現には新業態がポイント

 前期はニトリの既存店ベースの客単価が2.1%低下したが、客数は12.8%、売上も10.4%増え、相変らず集客力の強さを発揮している。国内の店舗数は651、主力の「ニトリ」が前期末から17増え450と約7割を占める。ホームファッション業態の「デコホーム」は12増の106、都心型小型店業態の「ニトリエクスプレス」は3増の17、アパレルの「N+(エヌプラス)」は13増の17となり、昨年傘下に収めたホームセンター島忠の61店舗が加わった。

 これまでの成長の軌跡をたどると、100店舗・売上高1,000億円を達成したのは2003年だったが、09年は200店舗・2,000億円、12年には300店舗・3,400億円となり、年々成長スピードを加速させ、17年には500店舗・5,500億円となった。驚異的な急成長だが、22年には1,000店舗・1兆円を目指す。さらに世界でドミナントエリアを拡大し、32年には3,000店舗・3兆円に拡大させて、世界の人々に豊かな暮らしを提案する企業へ変貌を遂げるとしている。

 この構想を実現させるためには、国内では出店余地の少ない「ニトリ」に代わり、「デコホーム」と「ニトリエクスプレス」の出店がカギを握る。

 「ニトリエクスプレス」は17年3月、札幌市の札幌駅前にある商業施設「札幌エスタ」 に1号店を出店した。店舗面積は1,000~1,300m2。雑貨や寝具を中心に取り扱い品目は5,500品目とニトリの約半数で、都心部で店舗展開を進めている。1号店から2年間で70店舗の出店を予定していたが、4年間で17店舗にとどまっている。32年には1,000店舗体制を目指しており、今後急速に出店ペースを上げる必要がある。

 これに対して「デコホーム」は11年から店舗を展開していたが、18年3月、横浜市の商業施設「トレッサ横浜」に、既存の「ニトリ」と「デコホーム」を差別化するうえでの転換点となる店舗を出店した。店舗のロゴやデザインを一新し、買い物をより楽しんでもらえる店舗を目指して、女性をメインターゲットにオリジナル商品の開発にも力を入れ、今後はすべてオリジナル商品にする計画だ。

 約500~1,000m2の売り場にホームファッションのみを取り扱い、3,000~4,000品目を展開する。今後フォーマットが確立できれば、500店舗まで出店が可能とみており、出店を加速させていく。出店余地は大きく、オリジナル商品の開発の成否がカギを握るとみられている。そうした状況のなかで、今後は都心またはその周辺部での店舗展開が主流となり、不動産コスト増による店舗の収益力の向上も課題となる。

アパレル業態「N+」が大化けする可能性も

 19年にデビューしたアパレルブランド「N+(エヌプラス)」も、店舗網拡大のエンジンとなる可能性を秘めている。売上は公表していないが、「ショップの認知度が拡大し、商品も2年で良くなった」と似鳥昭雄会長は振り返り、22年2月期は5店舗を出店する計画だ。

 「N+」は30代以上の大人の女性をターゲットに、おしゃれで機能性に優れたアイテムを手ごろな価格で提供することを目指している。体形の変化にも対応できる豊富なサイズやパターンをそろえ、日常で手入れが簡単な商品を展開。アクセサリーやバッグなどもそろえ、コーディネート提案している。昨シーズンは5,000本を売り上げた羽毛入りパンツといったヒット商品も生まれ、ストレッチ機能の商品も売れている。

 19年3月、ショッピングモール「ららぽーと富士見」(埼玉県富士見市)に1号店を出店し、グループ企業のニトリが現在17店舗を展開している。「ららぽーと」や「イオンモール」といった大型商業施設にも出店しているが、「ニトリ」の店内にインショップ形式で展開している店舗のほうが、売上が順調に推移しているという。

 今後は足元の人口が多いエリアへの出店を強化し、「デコホーム」とのコンビネーション型店舗も実験的に出すなど、出店を加速させていく。今のところビジネスモデルは構築中の段階だが、メンズやキッズの取り扱いも視野に入れているはずで、ニトリの強みである「製造物流小売業」の手法を深化させることで、飛躍的な業績拡大も見込め、大化けする可能性もある。

 異業種への進出は事業規模拡大の大きな武器となる。今年3月、「ニトリ環七梅島店」(東京都足立区)の敷地内に、「ニトリダイニング みんなのグリル」がオープンし、外食にも参入した。グループの広告代理店ニトリパブリックが運営し、チキンステーキ240gが500円、ハンバーグステーキ150gが700円、リブステーキ150gが990円など、安さを打ち出している。ドリンクメニューもコーヒー200円、生ビール290円などと低価格。サラダバー180円、スープバー100円、ライスバー150円、セット350円も用意し、食事メニューの一部はテイクアウトにも対応している。ターゲットは子どもから高齢者までと幅広い。

 「ニトリ」に飲食機能を付加することで、来店客の新たな需要を取り込む。一方、家具・インテリアショップは購入頻度が低く、従って来店頻度も多くないため、飲食店を併設し、店舗に足を運ぶ機会を増やそうという狙いもある。ただし、多店舗化するには、「ニトリ」からスピンアウトできるビジネスモデルの確立が必要だ。

(つづく)

【西川 立一】

(中)

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