ウッドショックが問う日本の住宅・林業界の行く末(後)
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長期的な視点が必須
ウッドショックへの短期的解決策としては、日本の外国産木材の輸入力強化や代替品の活用などが挙げられる。米国の住宅着工数急増の要因となった事実上のゼロ金利政策が、23年中に前倒しで解除される見通しであることから、次第に落ち着くという見方もある。
一方で、今回のような現象は、今後も起こる懸念もある。そのため長期的解決策としては、「日本の林業の活性化」と「国産木材の使用率向上」が必須なのだ。この2つは、経済の安定化とともに、持続的社会の形成にも深く関連している。
(株)三栄建築設計、(株)オープンハウス、ケイアイスター不動産(株)の3社は4月13日、(一社)日本木造分譲住宅協会を設立した。同協会は三栄建築設計・代表取締役社長・小池信三氏の「近年頻発する豪雨災害などに対して、住宅業界としてできることをする」という思いから始まり、オープンハウスの代表取締役社長・荒井正昭氏、ケイアイスター不動産・代表取締役社長・塙圭二氏が賛同するかたちとなった。
国産木材を積極的に活用(伐採)し、伐採した分だけ植林していく取り組みに向けて活動を開始した。これにともない、同協会の3社は国産木材の使用率を上昇すべく、設計の見直しや新商品の開発に着手している。
森林伐採と聞くと、自然破壊をイメージする人も少なくないだろう。しかし実際は、伐採をしなければ自然保護・環境保全にはつながらないとされている。なぜなら樹木のCO₂の吸収量は齢級8~10(樹齢40~50年)にピークを迎え、それ以降は減少するためだ。
また、伐採して植林し直すことで、土砂災害などの被害を減らすことにもつながる。過去に行われた拡大造林政策では、人工林の植林が急ピッチで行われたため、今ある人工林は根が浅い状態だといわれている。本来、自然林は地面深くに根を張り、地盤を支えることで自然のダムの役割をはたしているが、現在の人工林の状況では、かえって木材ごと土砂災害として流れてくる危険性を孕んでいる。
「伐採して植林をする」ことを林業や住宅産業、物流業界を巻き込んで行うためには、新たな流通モデルが必要となる。同協会はまずは伐採して国産木材を安定して活用するために、集成材工場・製材工場、山・森林組合との連携ラインの構築を目指している(図4)。
同協会事務局の菊谷氏は、「ウッドショックと協会の発足が重なったのは偶然でしたが、結果として注目を集め、協会の活動に多くの方が賛同してくれました。このプロジェクトはとても長期におよび障害も多いですが、次の世代にまで続けることが重要だと考えています」としている。
ウッドショックは、日本の林業および住宅業界の課題を浮き彫りにした。一方で、今まで問題とされながらも、解決に向けた施策が行われなかったことにも目が向けられるようになったともいえる。林業の人手不足や災害対策、環境保全もその一端だろう。課題の解決には世代を超えた取り組みが必要だからこそ、今を生きる世代が早急に取り組むべき課題といえるのではないだろうか。
(一社)日本木造分譲住宅協会
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標「SDGs」の課題解決を重要な経営課題とし、高品質で安心して住める木造住宅の普及、木造分譲住宅業界の健全な発展、木造分譲住宅で国産木材の利用を促進し国内の森林が持つ多面的機能(温室効果ガス削減等)の維持回復を図ることを目的としている。事業内容は「国産木材利用促進の支援」「木造建築物に関する技術開発や調査研究」「木造建築物の性能・品質等の向上のための研究開発や普及啓発」などを計画している。
(了)
【麓 由哉】
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