工業都市からスーパーシティへ、九州2位・北九州市の栄枯盛衰(7)
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2021年07月08日 06:00

工業都市からスーパーシティへ、九州2位・北九州市の栄枯盛衰(7)

北九州市の町並み イメージ

近隣都市との広域連携、SDGsの推進も

 旧五市の流れを汲む区ごとの地域特性をもち、それぞれに特徴的なまちづくりが進んでいる北九州市だが、市単独だけではなく、近隣都市との連携による広域的な活性化にも取り組んでいる。

 北九州市は16年4月、「経済成長の牽引」「高次都市機能の集積・強化」「生活関連機能サービスの向上」の3つの柱を基に、人口減少および少子高齢化社会においても一定の圏域人口を有し、活力ある社会経済を維持するための圏域づくりを進めるため、近隣16市町(直方市、行橋市、豊前市、中間市、宮若市、芦屋町、水巻町、岡垣町、遠賀町、小竹町、鞍手町、香春町、苅田町、みやこ町、上毛町、築上町)それぞれと、連携中枢都市圏「北九州都市圏域」連携協約を締結した。今年5月には吉冨町も加わり、北九州都市圏域は全18市町で構成されることになった。

 北九州都市圏域は総人口約135万人、総面積は約1,460㎢あり、ともに福岡県の約3割を占めている。16年度から20年度にかけての5年間の「第1期北九州都市圏域連携中枢都市圏ビジョン」では、基本方針である「圏域人口の急速な減少抑制」において、圏域の社会動態にやや改善傾向が見られたが、若い世代の定着促進および圏域への定住促進はまだ道半ばとなっている。21年度から26年度までの第2期ビジョンでは、移住・定住などの取り組みを推進することで社会動態をプラスに転じさせるとともに、2050年までの脱炭素社会の実現を目指す取り組みや、SDGsの推進などを新たな目標に加えている。

 市ではほかに、脱炭素社会の実現を目指す「ゼロカーボンシティ」の宣言など、「北九州市SDGs未来都市」に向けた取り組みも進めている。これらは、ものづくり技術や公害克服の経験などの強みを生かすとともに、世界のモデルとなる持続可能なまちづくりや、人と環境の調和による新たな産業の開拓、ダイバーシティの実現などを目指していくもの。掲げているビジョンは、「『真の豊かさ』にあふれ、世界に貢献し、信頼される『グリーン成長都市』」だ。

 これらの取り組みに加えて、前出の「北九州市・東田 Super City for SDGs 構想」による八幡東区・東田地区のスーパーシティ化も実現すれば、北九州市は未来を切り拓く先進的な都市として、往時以上の輝きを取り戻していくだろう。

  

 止まらない人口減や、政令市のなかでもとくに高い高齢化率など、都市にとって決して明るいとはいえないイメージもつきまとう北九州市。だが、いまだ九州2位の90万人以上の人口を抱え、その人口規模を支えるだけの産業や企業も数多く存在し、それらに裏打ちされた都市力の高さはいまだ健在だ。今年5月に事業家の堀江貴文氏が新球団の設立を発表したのも、北九州市の都市力の高さを見込んでのものだ。今後、まずはスーパーシティ特区指定の吉報を待ちつつも、それだけに頼らない数々の都市政策およびまちづくりプロジェクトの進行で、未来に向けての独自の強みと存在感を発揮していくことを期待したい。

北九州市役所
北九州市役所

 北九州市は、1901年の官営八幡製鐵所の操業以降、日本の近代化を支える「ものづくり」のまちとして育まれた勤勉な市民性、公害を克服し環境のまちへと転換する原動力となった市民力や環境・産業技術の集積など、本市の強みを活かしたまちづくりを進めています。

 現在、未来につながる戦略的なプロジェクトとして、まず、九州で唯一の24時間利用可能な海上空港である「北九州空港の機能拡充」に取り組んでいます。本市は、古くからアジアとの航路があり、人・物の交流がありました。本州や九州各県と高速道路で接続された優位性を活かし、「九州・西中国の物流拠点空港」を目指しています。そのためにも、北米や欧州へ大型貨物機が直行できる滑走路延長(3,000m化)の早期実現に向け、事業主体である国に加え、福岡県などと連携した取り組みを進めています。

 次に、洋上風力発電では、国から指定された西日本で唯一の洋上風車の積出等を担う「基地港湾」を核に、「洋上風力発電関連産業の総合拠点」の形成を目指します。

 さらに、中小企業の生産性向上に資する産業用ロボットの導入支援や介護ロボット等の活用による先進的介護の実証実装など、地元企業等の生産性や競争力の向上を図ってまいります。

 一方、本市は、「SDGsのトップランナー」を目指し、全市を挙げて取り組んでいます。とくに環境分野については、国の脱炭素の動きに合わせ、昨年10月に「2050年までに脱炭素社会の実現を目指すこと(ゼロカーボンシティ)」を宣言しました。環境と経済の好循環により都市の競争力を高め、国内外の脱炭素に貢献する「北九州モデル」を構築し、グリーン成長を推進していきます。

 このほか、文化芸術やスポーツの力をまちの活性化につなげる取り組みも進めています。文化芸術の分野では、日中韓の文化交流事業「東アジア文化都市北九州2020▶21」を、本年12月末まで会期を延長して実施しています。GW期間には、「北九州未来創造芸術祭ART for SDGs」として、「SDGs」の目指す未来のヴィジョンをアートで表現し、国内外に発信する、今までにない新しいかたちの芸術祭を開催しました。

 スポーツの分野では、10月に、史上初の「世界体操」「世界新体操」の同時開催となる「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」が開催されます。

北九州市長 北橋 健治 氏 さらに、今年の秋には、スイスの世界的シンクタンクである「ホラシス」のアジアミーティングが国内で初めて本市で開催される予定で、各国の経営者や投資家などにより、ESG投資などについて議論が行われることとなっています。

 これらの国際規模のビッグイベントを通じて、コロナ禍で疲弊した地域経済の活性化やまちの魅力の一層の向上が図られることを期待しています。

 世界規模で新型コロナウイルスとの闘いが続くなか、まずは全力で感染拡大の防止にあたるとともに、ポストコロナを見据えた新たな時代を切り拓く取り組みに挑戦することで、「日本で一番住みよいまち」の実現を目指してまいります。

北九州市長 北橋 健治

(了)

【坂田 憲治】

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