2024年05月06日( 月 )

自動車産業の台風の目、配車サービス会社(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 米国の配車サービス会社であるUber(ウーバー)の1日あたり搭乗件数が、2017年にニューヨークのタクシーの搭乗件数を初めて上回った。ウーバーの売上高は16年の38億ドルから19年には4倍の142億ドルに成長している。
 コロナ禍で外出規制などの影響を大きく受けた配車サービス業界は、利用者数が減少するなどの苦戦を強いられているが、同市場は世界で躍進を続けており、とくに発展途上国では、その成長に目を見張るものがある。今回は配車サービス市場の動向を探るとともに、同市場の自動車産業への影響を取り上げてみよう。

新しく登場した配車サービス

配車サービスアプリ イメージ 自動車の出現により、人の活動範囲は劇的に広がった。自動車の購入は家の次に大きな支出をともなう消費であり、以前は自動車がステータスのシンボルでもあった。

 自動車産業は労働集約型の産業であり、新車の販売、部品販売、アフターサービス、中古車販売、保険など多くの関連分野で成り立っている。世界で新車の年間販売台数は9,000万台で、約300兆円の膨大な市場を形成している自動車産業にも、大きな変革の波が押し寄せている。自動車を所有するより、配車アプリやカーシェアリングで自動車を賢く利用する時代となりつつあるためだ。

 配車サービスとは、利用者がスマートフォンのアプリを通じて、利用したいときにタクシーやライドシェアの車を呼べるサービスをいう。もちろん以前にも自動車を所有せずに、タクシーやレンタカーなどのサービスを利用することもあったが、配車サービスにより、タクシーの利用が一層便利になった。

 たとえば、タクシーは、乗ってみないと目的地までの利用料金になるのかわからないが、配車サービスには、事前に目的地までの料金が表示される。加えて、配車サービスは、既存のタクシーのサービスより、より一層便利なサービスとなっており、ドライバーが登録されていることにより、顧客にさらに安心感を与えている。

 レンタカービジネスはレンタカー会社が自動車を購入して備えることによってビジネスが成り立っているため、ビジネスが拡大すればするほど、会社の負担は大きくなる。一方、配車サービス会社は自動車をもつ必要がないため、事業の拡大スピードが速くなる。

 このような状況により、世界各国で配車サービスビジネスは拡大の一途をたどっている。このような配車サービスを世界で最初に手がけたのは米国のUber(ウーバー)である。ウ-バーの成長に期待がかかっているが、ウ-バーは昨年、67億6,000万ドル(約7,384億円)の純損失を計上している。2019年の純損失額である85億ドル(約9,368億円)と比べると、赤字額は減少したが、それでもまだ赤字額が大きい。今年の第1四半期にも、3億6,000万ドル(約396億円)の赤字を計上している。

(つづく)

(後)

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