2024年04月20日( 土 )

東京見本市発の変異株感染爆発

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「菅義偉首相と村井嘉浩宮城県知事はコロナ対策の結果に対して責任を負う。失政が明らかになった場合には、速やかに辞任して責任を明らかにすべきだ」と訴えた7月13日付の記事を紹介する。

本年11月20日、宮城県知事が任期満了を迎える。
宮城県知事選が実施される。

2021年は、自公と反自公候補の戦いになった。

1月7日の山形県、
3月21日の千葉県、
6月20日の静岡県
の知事選ですべて自公候補が敗北している。

4月25日の北海道、長野、広島の国政三選挙でもすべての自公候補が敗北した。
この流れを受けて宮城県知事選でも現職の村井嘉浩氏を落選させることが強く求められる。

東京五輪は基本的に無観客開催になった。
日本の主権者の圧倒的多数が五輪中止または無観客開催を求めている。
コロナ感染が拡大しており、有観客での五輪開催を支持する国民はほとんどいない。

通常のスポーツ興行と五輪は異なる。
多数の五輪関係者が会場に向かう。
また、観戦チケットの保有者の多くが首都圏在住で、五輪観戦のために感染拡大地から五輪開催地に向けて大きな人流が発生する。
「直行直帰」に法的拘束力はない。

多数の国民が飲酒をともなう会食を行うことは避けられない。
宮城県最大都市である仙台市の郡和子市長は五輪組織委員会に宮城県での五輪開催を無観客にするよう要請した。
これに対して宮城県の村井嘉浩知事があくまでも有観客開催を強行する方針を示している。

宮城県では県のコロナ対策本部会議に参加する県医師会、仙台市医師会、東北大病院も連名で7月12日、
「県外客の来県は大きな危惧を抱かざるを得ない」
などとして無観客を要請した。
村井知事はこの声も無視する姿勢を示している。

村井知事はスポーツ興行が有観客で行われていることを挙げて、
「五輪のサッカーのお客は観戦できませんというのは、極めて不平等」
と主張する。

通常のスポーツ興行と五輪興行の違いをまったく理解していない。
宮城県議会は7月5日の本会議で、上水道の運営権を民間に売却する「水道民営化」強行に向けて、事業者への運営権設定に関する議案を賛成多数で可決した。

水道民営化は新自由主義の装いを施す新しい利権政治を象徴する事案。
水道民営化を強行した世界各地では民営化の弊害が顕著になり、再公営化の流れが主流になっている。

時代遅れの利権主義=水道民営化を推進するのが宮城県の村井嘉浩氏である。
「民営化」の実態は「営利化」。

人々の生存に不可欠な「公共財」は公的機関が責任をもって安定供給を図る。
これが公的事業の役割だ。
生活必需品であり、生存に不可欠な社会資本=インフラストラクチャーである。

生活必需品だから誰が事業を実施しても成り立ち得る。
独占事業であるから価格を高く設定すれば独占利潤を獲得できる。
富の増殖のみを追求するグローバル大資本が富の追求のために目を付けたのが公的事業。

非営利の公的事業を営利目的の利益追求事業に置き換えるのが「民営化」で、実態は「営利化」。
巨大資本への利益供与である。
見返りに何らかのキックバックがあると考えるのが自然だ。

為政者が最優先すべき事項は市民の命と健康。
命と健康を守る視点から五輪の無観客が求められている。
村井嘉浩氏が五輪の有観客開催を求めるのは自分自身の利益のためであると見られる。
このような人物が次の県知事選に出馬するなら、宮城県の主権者はこの候補者を確実に落選させるべきだ。

デルタ株の浸透で日本国内での感染再拡大に歯止めがかからない。
7月13日の東京都新規陽性者数は830人になった。
6月20日から24日間連続で新規陽性者数が前週値を上回った。

週単位の新規陽性者数では
6月13日から19日の週の2,644人が
7月4日から10日の週の5,040人へとほぼ倍増した。

半月で倍増する激しい感染再拡大が観察されている。
7月14日から18日までに東京都の新規陽性者数が1,000人を突破する可能性が高い。
5月12日がピークだった感染第4波の中心はN501Y変異株。
昨年12月に英国で確認された変異株だ。

これに対して感染第5波ではL452R、E484Qが感染の中核に置き換わりつつある。
本年3月にインドで確認された変異株だ。

デルタ株の特徴は感染力が強いこと、若年でも重症化するケースが増加していること、ワクチン有効率が下がることとされている。
とりわけ、東アジアの人種が備えている免疫能力をすり抜ける可能性が指摘されていることが重要。

これまで感染が抑制されていた地域で感染が急拡大した。
台湾、韓国、モンゴル、ネパール、ベトナムで感染が拡大し、現在はインドネシアの状況悪化が伝えられている。
これとは別に南米で別の変異株も確認された。

F490S変異株だ。
ペルーで猛威を奮っている。

東京五輪は世界中から変異株を日本国内に流入させるイベント。
東京コロナ見本市が開催される。
宮城県で五輪を有観客で開催することは宮城に感染を拡大させる原因になるだろう。

五輪開催とともに宮城県の感染が拡大した場合、村井嘉浩氏は責任を負う。
知事辞任は免れない。
郡和子仙台市長の主張、宮城県医師会、仙台市医師会、東北大学病院の主張が正しい。

村井知事は県民の命と健康を最優先に考え、県内の医療の専門家の知見を行政に反映させるべきだ。
専門家提言を無視して有観客開催を強行し、宮城県のコロナ感染を拡大させた場合の責任は極めて重大。
宮城県の主権者は県民の命と健康よりも五輪利権を優先する村井嘉浩氏を今後の選挙などで厳しく断罪する必要がある。

東京都の感染拡大が先行しているが、東京から全国各地への人流が拡大すれば、確実に感染拡大が全国に広がることになる。
昨年のGoToトラベルがコロナ感染を全国に拡散させたことを認識すべきだ。

昨年12月にかけてGoToトラベルを一部停止したが、大都市圏発の旅行を停止しなかった。
感染拡大地を出発地とする人流を止めなければ感染拡大を抑止できない。

菅義偉氏は3月21日に緊急事態宣言解除を強行し、3月下旬から4月上旬にかけての大都市圏から全国各地への旅行を放置した。
4月25日から緊急事態宣言が発出されたがGWの大都市圏から全国各地への旅行を制限しなかった。
このため、北海道や沖縄で感染が爆発した。

これから夏休み期間を迎える。
7月下旬には4連休もある。
大都市圏から全国各地への人流を抑止しなければ感染拡大が全国に拡散されることは間違いない。
五輪開催を強行するのだから、禁酒令も、自宅謹慎令も効果を発揮しないだろう。

菅義偉氏と村井嘉浩氏は結果に対して責任を負う。
失政が明らかになった場合には速やかに辞任して責任を明らかにすべきだ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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